《第3章:炎の意志》『第4節:灰色の怨念』
サラマンダルの談話室では幾名かの生徒が談笑していた。キセキとルミナスはその中で空いているソファを見つけ、二人で話しながら腰掛けた。
「えっ!? ルミナスに赤の招待状送ったのってフレイドさんなの!?」
「そう。従姉妹の、お姉ちゃんが、お願い、して、くれたと、思う」
「フレイドさんと従姉妹はどうゆう関係……?」
「イグナイトお姉ちゃん、フレイド様、恋人」
「フレイドさん彼女いるんだ!? はぁ〜、そういうことか」
「イグナイトお姉ちゃん、ノワールにも、優しく、してくれた」
「ノワール、連れ去られたって言ってたけど、一体誰に?」
「分からない。とても、強い、女の子、だった」
「女の子!?」
「蒼い、炎の、ランタン、持った、女の子。声、男の人、だった」
「声は男の女の子……? (オカマキャラついに来たか?)」
【物語あるある】オカマキャラがいる
「気のせいかも、しれないけど、ランタンから、声、したような」
「なるほど……(ランタンの化け物に乗っ取られてるパターンか? ランタンの魔物っているのかな。ジャック・オ・ランタンとか?)」
「最初、魔力、強いって、ワタシ、連れて、いかれそう、なった。でも、ノワール、代わりに、俺、連れてけって、言って、それで、連れ去られた。ワタシ、怖くて、何も、出来なかった……」
ルミナスは泣きそうになりながら話した。
「そうか。それは負い目に感じても仕方がない。でも悪いのはその女の子だ。絶対にノワールを連れ戻そう」
「……! うん!」
ルミナスが力強く頷いたとき、談話室の扉が勢い良く開いた。
「キセキ!? キセキ! キセキいた! キセキぃぃぃぃぃ!!!!!」
飛び出してきたのはアキュアだった。アキュアはキセキに抱きついた。
「うわぁ! アキュア! どうしてここに!?」
「箒から落ちて怪我したって聞いたから心配してたんだよぉ。生きてて良かったぁ」
「本当に心配しましたよ! キセキさん」
「キセキくん、無事で良かったわ!」
アキュアの後ろから現れたのはユージーンとヘルデだった。
「ユージーン! ヘルデ! あの、お昼の約束すっぽかしてごめんね」
「気にしないで! キセキくん食堂に来ないからおかしいねって話してたら、箒から落ちて保健室に運ばれたって聞いて、ビックリしたわ」
「さっきも保健室に居ると思って行ったら居なくなってたので、ハイレン先生に寮に戻ったって聞いて慌ててこっちに来たんです」
「保健室にまで来てくれてたのか! ありがとう皆。心配かけたね」
「いやぁ、元気そうで良かった! キセキくん!」
そう話すのはいつの間にか居たピサだった。
「ピサさん!」
「キセキくん、私の授業で怪我をさせてしまってごめんね? どうか私のことは嫌いでも、箒のことは嫌いにならないでね?」
「あはは、どっちも嫌いになんかなりませんよ。それより保健室に運んでくださってありがとうございました!」
「そんなそんな! 私は当たり前のことをしたまでだよ! ルミナスちゃんと共に、本当に無事で良かった!」
「そういえば、ピサさんの仰ってたご褒美って何だったんですか?」
「ああ〜、それね! 良ければ君が貰ってくれるかい?」
「俺が!?」
「これなんだけど……一番早く塔を登ってきたカンムルくんにはいらないって言われてしまってね!」
ピサは懐から両手ぐらいの大きさの不思議な模様をした卵を取り出した。
「これは……卵……ですか?」
「私はヴァイスハイトの飼育委員長もしてるんだけど、今朝飼育小屋にこの卵が置かれてあったんだ!」
「置かれてた……? 誰かが産んだんじゃなくてですか?」
「ウチで飼育している生物はどれもこのような卵は産まないんだ! 不思議な模様をしてるだろ?」
「確かに……そんな卵、俺が貰っちゃっていいんですか?」
「飼育小屋でのことは私に一任されてるからね! その卵をどうしようと私次第! それならルミナスちゃんを救った英雄に預けてみようかと思ってね!」
「キセキさん! いいじゃないですか! 謎の卵! 何が産まれるか楽しみです!」
ユージーンが眼鏡の奥の目を輝かせて言う。
「……そうだな! じゃあこの卵、頂きます!」
「そうしてもらえると私も嬉しいよ! 後で孵化器を君の部屋に送っておくから、孵化するまではそれを使うといい!」
「ありがとうございます!」
キセキがお礼を言った直後、談話室の扉が再度勢い良く開いた。
「ルミナス! 無事!?」
そう言って入ってきたのは赤髪をサイドテールにした勝気そうな女性だった。
「あっ、イグナイトお姉ちゃん!」
「ルミナス!」
イグナイトはルミナスに駆け寄り抱き締めた。
「(この人がルミナスの従姉妹でフレイドさんの彼女の……)」
「ルミナス、せっかくの可愛い顔を怪我しちゃって……大丈夫?」
「ワタシは、大丈夫。キセキの、方が、重症」
「キセキ?」
ルミナスはキセキの方を指さした。イグナイトはキセキの方を見る。
「あんたね! ルミナスにちょっかい出して一緒に箒から落ちたっていう不届き者は!」
「ええ!?」
キセキは身に覚えのないことを言われ驚いた。
「イグナイトちゃん! それは違うよ!」
今にも殴りかかりそうな勢いのイグナイトを止めたのはピサだった。
「キセキくんは塔にぶつかって落ちたルミナスちゃんを助けたんだよ!」
「へっ? そうなの?」
キセキの顔を見るイグナイトに、キセキはブンブンと全力で首を縦に振った。
「じゃああのガキが言ってたことはなんだったの……?」
「あのガキって?」
ピサがイグナイトに聞く。イグナイトは思い出しながら話す。
「あの〜、シルフィドルの〜、髪が黄色の〜、特徴的な前髪の〜」
「ああ、カンムルくんか!」
「そう! 確かそんな名前で呼ばれてた! 双子に!」
「(ああもう確実にカンムルじゃん)」
「僕たちも食堂で彼が自慢げに話しているのを聞いて、キセキさんが怪我したことを知ったんです」
「そうよ! キセキくんが人にちょっかい出すわけないと思ってたけど!」
「そうだったのね……(カンムル……嘘はダメだぞ〜)」
ユージーンとヘルデの言葉にキセキは色々納得した。
「そう言えば二人はここで何してたの?」
それまでずっとキセキに抱きついていたアキュアが彼の隣に座り直し言った。
「ルミナスの弟の話を聞いていたんだ。ルミナス、話してもいい?」
ルミナスはコクッと頷く。キセキはノワールがルミナスの代わりに、蒼い炎のランタンを持った女の子に連れ去られたことを話した。
「もう一年以上も前の話……ワタシが傍に居たらこんなことには……!」
イグナイトが悔しそうに話す。
「イグナイトお姉ちゃん、ヴァイスハイト、居たから、仕方ない。何も、出来なかったの、ワタシ……」
悲しそうなルミナスを見て、ピサが話す。
「蒼い炎のランタンを持った少女かぁ……十二衛弟内では特に報告は上がってないけど、何か知ってる人が居ないか聞いてみるよ!」
「私も手伝います!」
アキュアがピサの案に乗った。
「俺はランタンの魔物が関係してると思うんだけど、違うかな?」
「有り得ますね。炎の魔物は数多くいます。「鬼火」「ウィル・オー・ザ・ウィスプ」「ジャック・オ・ランタン」などですね」
キセキの発言にユージーンが応えた。それを聞いてピサは思い出したように語る。
「ちょうど「ジャック・オ・ランタン」の討伐クエストならクエストボードに出されてたような……?」
「ホントですか! それ何か手がかりになるかも!(展開的に絶対何かある!)」
キセキは喜んだ。
「ワタシ、それ、受ける」
「ルミナスが行くならワタシも行くよ!」
ルミナスとイグナイトが話す。
「俺も行く!」
「僕も行きます!」
「私も行きたい!」
「ニャー!」
キセキとユージーン、ヘルデ達も行く気満々である。
そのとき、談話室の扉が三度開いた。
「随分賑やかだと思ったら、みんなどうしたんだ?」
皆が振り返ると、そこにはフレイドが立っていた。
「フレイドさん!」
「フレイド!!!」
イグナイトは飛び出してフレイドに抱きつく。
「もうやらないといけないこと終わったの?」
「ああっ! 今終わらせてきたっ!」
「この時間に解放されるの珍しいね!」
「確かにいつもより早く終われたなっ!」
「(わぁ〜、いかにもラブラブって感じ! ホントに付き合ってるんだな)」
仲睦まじく話すフレイドとイグナイトを見てキセキは思った。
「こんなに揃って何の話をしていたんだ?」
「これから皆で「ジャック・オ・ランタン」討伐のクエストに行くって話をしてたの! ノワールの行方に関係してるかもしれなくて!」
「ノワールのかっ! それなら俺も同行していいか?」
フレイドの思いもしない発言に皆驚いた。
「えっ! いいんですか!?」
「ノワールの行方は俺も個人的に追っていてなっ! それの手がかりになりそうなら俺も行きたいっ! 皆いいか?」
「もちろんです!」
「やったぁ! フレイドが居れば百人力ね!」
「十二衛弟と一緒にクエストに行けるなんて……!」
皆それぞれ喜びを表した。
「私も! 私も行きたい! 相手が炎なら私の「炎熱特攻」が刺さると思うし!」
アキュアが手を挙げて言った。キセキがそれに疑問符を浮かべる。
「「炎熱特攻」?」
「私のパッシブ! 炎属性に対して普通以上に威力を出せるの! ヴァイスハイトに入ってから知ったんだ〜」
「おお! それは心強い!(アキュアにもやっぱりパッシブあったんだ!)」
「しかしアキュア、今日の衛弟会議の議事録はもう書き終わったのか?」
「ギクッ」
フレイドの言葉にアキュアは分かりやすく反応した。
「アレって今日中じゃないと……」
「ダメだなっ!」
「そんなぁ〜」
アキュアはシュンと落ち込む。
「私も始末書書かなきゃだから、パスかな!」
「始末書? 何のですか?」
ピサの発言にキセキが尋ねる。
「私の授業中に怪我人を出してしまったからね!」
「えっ、じゃあ俺のせいじゃないですか! 申し訳ないです……」
「あはははっ! 君が責任を感じることは無いよ! 授業内で起きた事故はすべて私の責任だ! 怪我をさせてしまって申し訳ないのはこちらだよ!」
「うう……痛み入ります……」
「天晴れな責任感だっ! じゃあアキュアとピサは行けないとして、他は全員参加か?」
「そうね! フレイドとクエスト行くの久しぶり!」
フレイドの質問にイグナイトが答えた。
「よしっ! では「ジャック・オ・ランタン」討伐に行くぞっ!」
「おー!」
キセキ、ユージーン、ヘルデ、ルミナス、イグナイト、フレイドの六人はクエストを受注し、目的地へと列車で向かった。
「度々夜になって現れては、山にある畑を燃やすんだ。あいつのせいでこちとら商売あがったりだよ!」
そう話すのは目的地の農村の男性。
「分かりましたっ! 山の畑ですねっ! 行ってみますっ!」
「ありがとう。まさか炎弟に来てもらえるなんて、心強いよ」
男性はフレイドに来てもらえて安心しているようだった。
「(こんな地方の農村にも十二衛弟の存在って知れ渡ってるんだな。改めて十二衛弟ってすげぇや)」
六人は山の中へと足を踏み入れる。
「畑は二箇所に分かれているそうだっ! ここは三人一組で手分けして調査しようっ!」
「そうね! じゃあワタシはフレイドと……」
「イグナイトは上級生なんだから、下級生に付いてやってくれっ!」
「ええ〜! せっかく一緒にクエストに来たのに〜!」
イグナイトは不満を明らかにする。結果的にフレイドはユージーンとヘルデと、イグナイトはキセキとルミナスとに分かれて調べることになった。
「ではっ、何かあれば杖で信号弾を出してもう一方に知らせることっ! 各自注意は怠るなっ!」
「分かりました!」
六人は二手に分かれて山道を進む。
「はぁ〜、久しぶりのフレイドとのクエストだったのに……何でこんな奴と……」
「(イグナイトさん? 聞こえてますよ?)」
「まぁ、ルミナスと一緒になれたのは良かったかな!」
「初めての、クエスト、イグナイトお姉ちゃん、一緒、嬉しい」
「ああ〜、もうルミナスったら! 可愛いんだから!」
イグナイトはルミナスを抱き締めた。
「そう言えば、イグナイトさんとフレイドさんの馴れ初めってどんな感じなんですか?」
キセキが質問すると、イグナイトはキセキをジトーッとした目で見た。
「あ……えっと……話したくなかったらいいです……」
「もう〜しょうがないな〜! そんなに聞きたいなら話してあげる!」
「(めちゃくちゃ話したそうじゃん〜)」
イグナイトは嬉々として話し始める。
「フレイドとは最初の「魔術基礎」の授業で隣の席になったの! 初めは全く興味無くてただ友達欲しさに話しかけたんだけど、段々彼の何に対しても情熱的なところに惹かれて……ワタシから告ったの!」
「イグナイトさんから!?」
「そうよ〜。だって彼全然そういうのに興味無さそうだったからさ。痺れを切らしてワタシから言ってやったのよ」
「何て、言ったの」
「ええ〜、それも聞いちゃう? ルミナスに聞かれたなら仕方ないな〜、教えてあげるか〜!」
「(絶対元々話すつもりだったな)」
「「ワタシのこと好きにさせてみせるから、これからも着いてきなさい」って言ったの! 我ながら大胆だったと思うわ〜」
「おお〜! カッコイイですね!」
「でもそれに対してフレイド、何て言ったと思う?」
「う〜ん、「着いていくぞっ!」とか?」
「……あんた……センス無いわね」
「……ごめんなさい」
「こう言ったのよ。「俺はもうイグナイトのこと、一人の女性として好きだぞっ!」って」
「おお……! (男だけどめっちゃキュンッてした)」
「フレイド様、かっこいい」
「でしょ〜!? 恋愛興味無さそうな顔してそんなこと言うからさぁ、改めて惚れ直しちゃったわよね……止まって」
イグナイトはキセキとルミナスを制止し、杖を天に向けて信号弾を出した。
「イグナイトさん……?(ジャック・オ・ランタン来たか!?)」
「そこの木の裏。いるんでしょ? 分かってるわよ、出てきなさい」
イグナイトは前方の木を杖で指した。するとぬらりと何者かが現れた。
「おおぉ、鋭いなぁ。お前ぇ、パラスかぁ?」
「(ジャック・オ・ランタン……? じゃない……?)」
それはボサボサの灰色の髪をした男だった。顔中に黒い糸でボディステッチを施しており、異質な雰囲気を醸し出していた。
「いやぁ? パラスは金色の装飾のローブを着てるんだっけかぁ? じゃあ違うなぁ。ハズレかぁ」
「イグナイトさん……フレイドさんを待ちますか?」
キセキはヒソヒソとイグナイトに話しかける。
「フレイドの助けは期待出来ないかもね……」
「どうして……ッ!」
キセキは山の反対側の方からも信号弾が上がっているのを見つけた。
「(同時に襲われてる……!? こいつの仲間か……!?)」
「まぁ、どっちにしろお前ら全員殺せって命令だぁ、大人しく死んでもらおうかぁ」
「ワタシたちが大人しくしてるとでも? ……“炎術陣 展開”」
イグナイトの足元に赤い魔法陣が浮かび上がる。
「“第1章
杖の先にも現れた魔法陣から勢い良く炎が飛び出し、男を激しく包み込む!
「ぐあああああああああああ」
男の悲鳴が山にこだました。
「やったか!?」
【物語あるある】やってない
「なぁんてねぇ?」
男が炎の中からゆっくりと現れた。
「効いてない……!?(思わず「やったか!?」って言っちゃったけど、それでやってないのは物語あるあるじゃん! 俺のバカ!)」
「はっ、ケンカ売ってくるだけのことはあるのね。これはどうかしら!」
イグナイトは杖を構え直す。
「“第2章
杖の先から出た小さな炎の玉が、男に向かって高速で飛んでいき、男の近くで大爆発を起こした!
「凄い!」
「これは相手との魔力差が大きいほど威力が増す魔術。アイツが強ければ強いほどダメージを受けるはず!」
「それなら……!」
「う〜ん、残念だなぁ」
男は爆炎の中から平気な顔をして現れた。
「嘘……何で……?」
「(全く効いてない!? そんなことあるのか!? いや、コレってもしかして……!)イグナイトさん! こいつ何かしらの“獣術陣”を使ってるんじゃ!? 使い魔と魔力を共有してるから頑丈になってるだけなのかも!?」
「有り得るわね、その使い魔がフレイドの方に行ってるって考えたら更に納得……」
「おいおいぃ、勘違いするなよぉ、俺は“獣術陣”なんて使えないぜぇ?」
「は?」
「ちゃんと見せてやるかぁ、そしたらリスクっての上がって更に強くなれんだろぉ?」
男はそう言うと唾を吐き、それを手で挟み、ビョーンと広げてみせた。そこには灰色の魔法陣が刻まれていた。
「“怨術陣 解放”」
「(“解放”!? 初めて聞くぞ!?)」
「ほぉらぁ、これが俺の“魔術陣”だぁ。さぁ、タネが分かるかなぁ?」
【物語あるある】敵が知らない力を使う
「(オン!? オンって「怨念」のオンか!? いや、そうだとして攻撃が効かない理由がさっぱり分からねぇ!)」
「……ッ! 汚い野郎ね。とにかく攻撃あるのみよ! “第3章”!」
イグナイトは大きく杖を振る。
「“
すると突如男の真下から炎が吹き出し、激しく燃え上がった!
「ワンパターンだなぁ、面白くねぇ」
男はまたも平然と炎の中から出てくる。
「な、何で……!?」
「イグナイトお姉ちゃん、ワタシ、手伝う」
ルミナスは杖を構えた。
「“光術陣 展開”」
ルミナスの足元に金色の魔法陣が浮かび上がる。
「“第1章
ルミナスから放たれた光の衝撃波が男を襲った! しかし男はそれをヒラリと躱した。
「!?(躱した……!?)」
「そろそろこっちから仕掛けるぞぉ、“第1幕”」
「何……!?」
男はニヤリと笑ってこちらを見やる。
「(来るっ……!)」
「“
ギャギャギャギャギャ!!!男が唱えた直後、不協和音が三人の耳に鳴り響いた。
「うっ……!」
「がぁ……!(何だ!? コレ!? 頭が……割れそうだ……! 動けない……!)」
「つまんない奴らだったなぁ。さっさと殺してもう一つの方に行くかぁ」
そう言って男はゆっくりキセキ達に近づいてくる。
「(くそっ……! やばいやばいやばい! このままだと三人とも殺される! 考えろ! 何かあるはずだ! 俺は主人公なんだ! こんなところで死ぬはずない! 考えろ! 考えろ! ……そういや何でこいつは最初から攻撃を躱さなかった? 効かないとは言えどうしてわざわざ受けた? 何故今になって攻撃に転じた? 怨念の“魔術”だとして……もしかして……!)うう……ぐっ……」
【物語あるある】一瞬の間にめちゃくちゃ思考する
「……! へぇ、動くかぁ」
キセキは頭を抑えながら立ち上がった。
「(思い出せ……ビアードにぶつけたあの時の力を……船ごとぶっ飛ばしたあのパワーを……拳の先に込めて……!)うああああああ!!!!」
「はぁ、そんなの効か……」
ドッゴォォォォォン!!!!! キセキは男を思いっきり殴り飛ばした。拳が爆ぜて、キセキの右腕はボロボロになった。
「(いってえええええええ!!! ……けど、手応えはあった! 今度こそ……!)」
男は土煙の中からゆっくりと現れた。頬から血を流して明らかにダメージを負っている。男が攻撃を受けたからか、不協和音は鳴り止んでいた。
「ハハハハッ! おもしれぇ! まさか俺の“怨術陣”が解けたのかぁ!?」
「……お前は攻撃を受ければ受けるほど自身の能力が向上するんだろ?」
「……!」
「それはリスクとは別物で、お前は一定量の攻撃を完全に無効化して自身の力に出来る。しかしその反面、キャパを超えると今まで受けたダメージをまとめて受けちまう。イグナイトさんの“第3章”を受けた時点で限界を迎えそうだったから、お前はルミナスの攻撃を躱し自身が攻撃に転じたんだ。それが怨念の“魔術”……!」
「ハッハッハッ! 大正解ぃ! それが俺の“第2幕
男はキセキに飛びかかった。
「(俺はまだ“魔術”は使えねぇよ!)くっ! おらぁ!」
キセキは左の拳を振りかぶった。男はそれを頬で受け止めた。
「何!?(さっきのでダメージはリセットされたのか!)」
「もう一回限界まで付き合えよぉ!」
男はキセキに手を伸ばす。
「“第2章
輝く光線が男に当たり、男は一歩退いた。それはルミナスの“魔術”だった。
「ルミナス!」
「キセキ、下がって」
キセキは言われた通り男から離れる。
「“第3章
ルミナスが唱えると、稲妻のような光が群れを成して男に襲いかかった!
「キセキ、言う通り、なら、こいつ、耐えられる、量、大したこと、ない」
「当て続ければ倒せるってことね! “第4章
イグナイトの杖の先から出た小さな炎が男に近づくにつれ段々と大きくなり、男の前で爆発した!
「あああぁ! 鬱陶しいなぁ! 効かねぇんだよぉ! “第3幕”!」
「来るわよ! 気をつけて!」
「はい!」
「“
男の周りに突然無数の黒い棘が現れ3人を襲った!
「いった……!」
「ルミナス! イグナイトさん!」
「「キセキ」つったよなぁ?」
「!!」
棘に刺されたルミナスとイグナイトに気を取られていると、男がキセキの眼前にまで迫っていた。
「お前の“魔術”、見せてみろぉ!」
男がキセキに手を伸ばした。
「(さっきからコイツ、俺に触れようとしてくる! きっと触れられたらヤバい! 即死系の攻撃かもしれない! 避けろ! 避けろ!)」
ガキィィィン! キセキが男から離れようとした瞬間、何かが男の手を弾いた。
「……あぁ!?」
「(何だ……!? 目に見えない何かであいつの手が弾かれた……? いや、そんなことより……!)うらあああああああああ!!!!」
キセキは再度左の拳を振りかぶり、男をぶっ飛ばした。右腕と同じように爆発が起き、左手もボロボロになってしまった。
「(いてえええええええ!!! くそっ! 耐えろ俺 ! きっとこれで……! )」
しかし男は満身創痍になりながらもまだ起き上がってきた。
「効くねぇ……お前の拳は簡単に“怨讐”の最大値を超えてくるなぁ。おもしれぇなぁ!」
「(まだ立ち上がるのかよ! もう両手が……ルミナスとイグナイトさんは!? )」
ルミナスとイグナイトは棘が刺さったまま動けそうになかった。男の手がキセキに迫る!
「(ダメか! くっ……どうする! 2人を助けて……いや、それだと先に俺があいつに触れられる! もう一度さっきみたいに弾けるか!? ……で、出来る自信ねぇ……いや、弱気になるな! 俺なら出来る! やれる!)うおおおおおおおおお!!!!!」
「“第1章
男の手がキセキに触れそうになった瞬間、飛んできた炎の刃によってそれは防がれた。
「フレイドさん!」
「フレイド!」
炎の刃を放ったのはフレイドだった。
【物語あるある】危機一髪のところで助けに来る仲間
「三人とも大丈夫かっ! 遅くなってすまないっ!」
「金の装飾のローブぅ……! お前ぇ、パラスだなぁ?」
男がフレイドのローブを見て言った。フレイドは剣を男に向けて対峙する。
「皆さん! 無事ですか!?」
「わぁ! ルミナスちゃんとイグナイトさんが!」
フレイドの後ろから現れたユージーンとヘルデが、ルミナスとイグナイトから棘を抜いて助けた。ユージーンはキセキの元に駆け寄る。
「キセキさん……! 両手が大変なことに……!」
「コレ自分でやったやつだから大丈夫。それよりもルミナスとイグナイトさんを早く村に連れていって手当を……!」
「わ、分かりました!」
ユージーンとヘルデは、それぞれイグナイトとルミナスを背負って山を降りていった。
「「ジャック・オ・ランタン」はもう討伐したぞっ! お前の仲間だろうっ!」
「仲間っていうかぁ、そこに居たから力を与えて使っただけだぁ。元より狙いはお前だぁ」
「(力を与えた……?)」
「俺が狙いだとっ!?」
「ヴァイスハイトの生徒ぉ、特にパラスは一番に殺せって命令だぁ」
「命令してるのは誰だっ!?」
「言うわけねぇだろぉ。それよりもお前の力ぁ、俺に見せてみろよぉ!」
男はフレイドに飛びかかった。
「フレイドさん! そいつに触れられちゃダメだ!」
フレイドはキセキの助言を聞いて男の手を躱す。
「“第2章
フレイドは炎を纏った剣を振り上げ、男の両手を切り落とした。だが男の手はすぐに再生した。
「何っ!?」
「そいつの“魔術”です! 一定量の攻撃は無効化されてそいつの力になります!(って言いつつ再生まで出来るなんて知らねぇ!)」
「それならっ……!」
「おっとぉ、させねぇぞぉ! “第1幕 怨叉”!」
ギャギャギャギャギャ!!!頭の痛くなる音が二人の耳に響き渡る!
「ぐっ……!」
「うう……! (またコレか! くそっ……! 頭が……!)」
「“第……3章”……!」
フレイドが“魔術”を唱える。
「“
真っ赤な炎がフレイドを羽衣のように包み込んだ。
「これで動けるっ! キセキッ! 少し耐えてくれっ!」
「え……?」
「おいおいぃ、何で動けるんだよぉ! “第3幕”!」
フレイドは男に近づく。男が負けじと“魔術”を唱える。
「“怨望”!」
さっきよりも格段に多くなった黒い棘がフレイドを襲った。しかし炎の羽衣を纏ったフレイドには効かなかった。棘が羽衣に触れたところから溶けて消えた。
「な、何なんだよぉ!」
「(凄い……! コレが十二衛弟……!)」
フレイドが男の首を剣で狙い澄ます。
「(炎弟……フレイド・ブレイム!)」
「“第4章
「ランタン!!!!!」
フレイドの剣が男の首を捉える直前、男から蒼い炎が燃え上がった。その炎によってフレイドの剣は弾かれた。
「!? 何だっ……!?」
「(蒼い炎……!?)」
「ふぅ、危ねぇ。ランタンから炎借りといて良かったぜぇ」
「“第1章 獅子奮刃”!」
フレイドが炎の刃を飛ばしたが、それも蒼い炎に弾かれた。
「あぁ、無駄無駄ぁ。ランタンの炎にそういう攻撃は効かねぇよぉ。それにしてもパラスぅ……やっぱ強ぇなぁ。今のオレじゃ適わねぇみたいだぁ。ただ「
「「雨夜七冠」……?」
「今日のところはここでおさらばだぁ。またなぁ。キセキぃ。フレイドぉ」
「逃がすと思うかっ!」
フレイドが男に斬りかかったが、剣を振り下ろした時にはもう男の姿は蒼い炎の中に消え、蒼い炎も次第に消えていった。
「くっ……大丈夫かっ!? キセキッ!」
フレイドがキセキに駆け寄る。
「俺は大丈夫です! それよりもルミナスとイグナイトさんが心配です。村に急いで戻りましょう!」
「ああ、そうしようっ!」
村に戻ると、ルミナスとイグナイトは村人によって手当を施されているところであった。ユージーンとヘルデもそれを手伝っている。
「フレイド!」
扉を開けて入ってきたフレイドを見て、イグナイトが村人を押し退けて飛び出してきた。
「おおっ、イグナイトッ! もう大丈夫なのか?」
「ワタシもルミナスもそんなに深い傷じゃなかったから大丈夫! ちょっと痛かったけどね〜」
「それなら良かったっ! 三人とも、よく俺が来るまで持ち堪えてくれたっ!」
「そういえばフレイドさんの方に「ジャック・オ・ランタン」が居たんですか?」
キセキがフレイドに尋ねた。
「ああっ! 「ジャック・オ・ランタン」は無事討伐したっ!」
「おお! ありがとう! 炎弟!」
村人から歓声が挙がった。
「でも奇妙でしたよね。普通赤い炎を纏っている「ジャック・オ・ランタン」が今回は蒼い炎でした」
「蒼い炎……!?」
「そうよね。しかも本で見た記述よりも凶暴だったように感じたわ」
「ニャーオ」
ユージーンとヘルデが自身の見たことについて語った。
「俺が梃子摺ってしまった要因だなっ! 過去にも「ジャック・オ・ランタン」とは戦ったことがあるが、確かに今回の方が強かったっ!」
「あの灰髪の男、「力を与えた」って言ってました。それに「ランタン」と「蒼い炎」……コレって……」
「ノワールを連れ去った「蒼い炎のランタンを持つ少女」と無関係ではないだろうなっ!」
キセキとフレイドは互いに頷き合った。
「とにかく皆の手当が終わり次第、一度ヴァイスハイトに戻ろうっ! ディオーグ先生にも報告しなければっ!」
「そうですね」
時刻は二十一時を回ろうとしていた。ヴァイスハイトの理事長室にキセキ、ルミナス、フレイドの姿があった。
「では、報告を聞こうか」
そう話すのは理事長席に座るディオーグだった。フレイドはそれに応える。
「はい。今回キセキ、ユージーン、ヘルデ、ルミナス、イグナイト、フレイド計六名は「ジャック・オ・ランタン」討伐クエストに赴きました。現地で二組に分かれて調査を行っていたところ、蒼い炎の「ジャック・オ・ランタン」と灰髪の男と同時にそれぞれ接触。「ジャック・オ・ランタン」は討伐しましたが、それは後に男によって力を与えられていたと判明。男とは交戦した後、取り逃しました。男は“怨術陣”を使用。去り際に蒼い炎に包まれ、それには一切の攻撃が通じず、男によると「ランタンから借りた」とのことでした。更には「雨夜七冠」という謎の言葉も残していきました。今回の一件は「ノワール誘拐事件」にも関与しているものと思われます。以上です」
「ありがとう。現地に居た身としてキセキとルミナスは何か気づいたことはあるかい?」
ディオーグがフレイドの報告を聞いて、キセキとルミナスに尋ねた。
「あ、えっと……灰髪の男の言動から考えると、バックに「ジャック・オ・ランタン」とは別の「ランタン」と呼ばれる存在がいることは確かだと思います。そしてそれはノワールを連れ去った張本人、「蒼い炎のランタンを持った少女」である可能性が高いとも思います」
「蒼い、炎、ノワール、攫われたとき、女の子、持ってた、ランタンと、同じ感じ、した」
「二人ともありがとう。皆の話を纏めると、「蒼い炎のランタンを持った少女」と灰髪の男は協力関係にありそうだね。そして理由は分からないがノワールを誘拐、監禁しているものと思われる。あとは「雨夜七冠」だけど……」
「あっ、それは敵の幹部だと思います」
キセキの発言に一瞬皆固まった。ディオーグが目を細めてキセキに尋ねる。
「……何故そう思う?」
「え、え〜っと、それは……(展開と名前的にとか言えねぇ〜……どっ、どうやって転生者であることをバラさずに説明する!?)」
「灰髪の男は私に「今の俺じゃ敵わない。ただ「雨夜七冠」ならどうかな」という旨の発言をしていました。これは男よりも強い存在が彼の後ろに居ること、また組織立って動いていることの証明であると言っても過言ではないかと思います」
「なるほど……確かにそうだね」
「(うおおおおおフレイドナイスフォロオオオオオオ!!!!!)」
「それと、男は何者かに命令されていたようでした。「ヴァイスハイトの生徒、特にパラスは一番に殺せ」と。最初から狙いは私だったようです」
「ヴァイスハイトの生徒を狙った犯行……まるでフレイド達がそこに来るのを知ってたかのような口振りだね」
「はい。どのように知り得たのかは分かりませんが、この件は慎重に動くべきかと」
「う〜ん……この学校においてそんなことは信じたくないが……」
「えっと……どういうことですか?」
キセキが我慢できずフレイドとディオーグの会話に割って入った。フレイドがキセキの質問に答える。
「内通者がいるかもしれない……ということだ」
「内通者!?」
【物語あるある】内通者がいる
「キミ達が「ジャック・オ・ランタン」のクエストに行くことを知っていた者は?」
「少なくともアキュアとピサ。しかしサラマンダルの談話室で話していたので、見聞きしていたであろう生徒は何名もいます。実際顔と名前までは覚えていませんが、他寮の生徒も幾名かいました」
「特定は難しいか……ではこの話は一旦ヴァイスハイトでは我々と十二衛弟のみ共有するものとしよう。念の為職員にも内密に」
「はい。承知いたしました」
「わ、わかりました!」
「夜遅くにすまなかったね。寮に戻ってゆっくり休みなさい」
そしてキセキ、ルミナス、フレイドは理事長室を後にした。ルミナスをノームールの寮まで送り、キセキとフレイドはサラマンダルの寮へと向かった。
「フレイドさん、質問してもいいですか?」
寮までの道すがら、キセキはフレイドに尋ねた。
「おうっ! 何でも聞いてくれっ!」
「灰髪の男の“怨術陣”って一体何だったんですか?」
「そうだな……彼は発動する際“解放”と唱えていたか?」
「……! はい! 唱えていました」
「だったらそれは“概術陣”だなっ! 感情や空想といった概念の力を具現化する、杖や魔術書を必要としない“魔術陣”だっ! 非常に珍しく、俺も使っているのを見るのは二人目だっ!」
「“概術陣” ……そんな“魔術陣”が……(エクスプロード先生がもう一種類あるって言ってたのはこのことだったのか)」
「過去に例が少ない上危険なため、ヴァイスハイトでも取り扱っていないっ! 知らなくて当然だなっ!」
「危険……?」
「概念とは非常に曖昧なものだっ! 個人の考え方や価値観でいくらでも解釈を拡げられるっ! その分能力が不安定になりがちで、オーバーロード……つまり暴走する可能性があるっ!」
「暴走するとどうなるんですか……?」
「……良くて死ぬっ!」
「良くて死ぬ!?」
「アッハッハッハッハッ! まぁ、オーバーロードなんて滅多に起きることはないっ! それに要は“概術陣”を使わなければいいんだっ! 最初の授業で魔術適性を調べたんだろう?」
「あっ、それについても聞きたいことがありまして……」
キセキはアカシックレコードで起きたことをフレイドに話した。
「“炎術陣”の魔術書を開いたら、挟まっていた切れ端に反応した、か……う〜ん、俺からはその切れ端が何かの魔術書だったのだろうとしか言えないなっ!」
「やっぱりそうですよね……」
「ただ“炎術陣”の魔術書に反応した可能性も少なからずあるのだろう? “炎術陣”についてなら色々教えてあげられるぞっ!」
「そういえば気になってたんですけど、同じ“炎術陣”なのに、フレイドさんとイグナイトさんの技名が違ったのは何でなんですか?」
「俺は“炎術陣”の名を冠して使ってはいるが、同じ割合で“剣術陣”も掛け合わせてるんだっ! いわゆる“複合魔術”ってやつだなっ!」
「“複合魔術”!? めっちゃ難しいやつじゃ!?」
「アッハッハッハッハッ! 確かに習得には苦労したなっ! だがそこまで難しいものではなないぞ?」
「(それはフレイドだから言えるセリフなんじゃ......)」
「キセキはどうする? “炎術陣”を極めるか?」
「俺はまず自分の謎の力を解明したくて......」
「謎の力?」
キセキはビアードを倒したとき、灰髪の男を殴ったとき、そして触れられそうになったときに発動した謎の力のことをフレイドに伝えた。
【物語あるある】主人公が自身の力で思い悩む
「そうか......杖も魔術書も使っておらず、“概術陣”でもないならば、それは恐らくパッシブだろうっ!」
「パッシブ......!」
「ただ色々と不可解だなっ! そのビアードとやらを倒したとき、何mくらい離れていた?」
「(この世界でもメートル法なんだ......その辺はやっぱりご都合主義だな)多分、500m近くは離れてたかと」
【物語あるある】世界基準はご都合主義
「500mッ! それは凄いなっ! ということはキセキは超広域型の魔力域だということになるが、それにしては目の前で爆発するほどの威力が出せるのが不思議だなっ!」
「超広域型......魔力域......?」
「ああ、すまないっ! 魔力域については明日の一限の「魔力域学基礎」で学べるはずだ! 受講してみるといいっ!」
「わかりました!」
「キミのパッシブについては明日までに答えを出しておこうっ! 明日の二限の時間、空いてるか?」
「特に何もないですけど......」
「それならその時間、「プロミネンス」で待っているっ! キミの謎の力を解明しようっ!」
「ありがとうございます!(「プロミネンス」はフレイドがディオーグに貸し与えられた部屋の一つだったな)」
「では今日はしっかり休めっ! 今朝から本当に御苦労だったっ!」
「お疲れ様です!」
キセキとフレイドはそれぞれ自室へと戻った。
「(長い一日だった......半分寝てたけど......普通に疲れた......そういや何も食ってないし......まだ腕痛いし......ん?)」
キセキの部屋の前に大きめの箱が置いてあり、その上にメモが添えてあった。
「(卵ちゃんに使ってあげてね! ピサ......ああ! もしかして!)」
部屋の中で箱を開けると、中には孵化器が入っていた。
「(そういや後で送るって言ってくれてたっけ。すっかり忘れてた)」
キセキは部屋に置いてあった不思議な卵を孵化器に入れた。そしてそのままベッドに倒れ込んだ。
「(ああ〜、風呂入る気力ねぇ〜、明日の朝で、いっか......)」
キセキは深い眠りについた。
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