第69話
そして、赤龍使いの
「間宮んとこも酷かったが、ここも相当やられたな」
と黒龍使いの日野が言った。
「ああ。しかし、これは俺の赤龍が壊したらしい……」
と美鈴が悲しそうに答えた。
「お前のせいじゃない」
日野は慰めたが、
「俺が不甲斐ないばかりに、みんなに迷惑をかけた」
と美鈴は項垂れた。
「まあ、そんなに気を落とすな。家は間宮建設が直す、庭は
と日野さらに慰めた。
「そういう事じゃないんだが……。まあ、ありがとう。俺んとこも金には困っていないから、資金の援助は要らない」
と美鈴が答えて、
「それより、俺の
と聞いた。
「誰だって?」
日野が聞くと、
「清楚で可憐で、賢い俺の秘書だ」
と美鈴が答えた。日野は少し考えて、
「ああ、黒髪、黒服、黒メガネか」
と思い出して言った。
その頃、
「ここはどこでしょう?」
と聞く清子に、
「あら、目が覚めましたか?」
と優しく微笑む
「
清子が聞くと、
「えっと、その~。神社の前で行き倒れていたので、こちらでお休み頂いた? のです……」
無理のある、とっさの嘘だったが、
「そうでしたか。大変ご迷惑をお掛け致しました」
清子はそう言って、居住まいを正して頭を下げた。
「いえ、いえ。お構いなく」
美園は嘘をついた気まずさで、どうにも居た堪れなかった。その時、
「おや? 気が付いたようだね? 良かった」
と現れたのは、隼人の叔父の
「そうなんです。今、お目覚めになられたのです。本当に良かったわ。行き倒れていたので、心配しましたよね?」
と正人に、目で訴える。
「あ? ああ。そうだね?」
困惑しながらも、美園の話に合わせる正人。そこへ隼人の父、
「おお、気が付いたんだな? 良かった」
と言う。
「そうなんだ。行き倒れていた時はびっくりしたよね? 兄さん?」
と正人が言うと、
「はあ? 行き倒れ? 時代劇じゃあるまいし」
義人は全く空気の読めない男だった。
「まあ、まあ。兄さん、座って」
と正人は言って、
「あの、私、お茶を入れて来ますね?」
と美園はそそくさと、部屋を出て行った。
「あの~? 本当にすみません。ご迷惑をお掛けしてしまって」
と清子が済まなそうに言うと、
「いや、いや。そんな事はない。もう、身体は大丈夫かね?」
と義人が聞く。
「はい。ありがとうございます。大変、お世話になりました。遅ればせながら、名乗らせて頂きます。
と丁寧に礼を言う清子は、とても礼儀正しく、清楚で可憐で賢い様子が見て取れる。
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