第68話
「義則君、もういいよ。ありがとう」
と正人が言った。義則は正人から手を放して彼を見ると、
「おおっ! 凄いな!」
と義則が感嘆の声を上げると、
「すごいのは君の霊力だよ。こんなにも強くて清らかな霊気を持つ者も、中々いないよ。ほら見てごらん。もう、そろそろ、決着がつくだろう」
と正人が言った。そちらへ目を向けると、隼人とその父が放つ霊気が白く輝き、更に強く大きくなって、
「あっ!」
と京極は声を上げて、のけぞるように倒れた。すぐさま、隼人の父、
「終わったな」
隼人がぽつりと呟いた。
「おお、やったな」
義則は嬉しそうに笑った。
間宮の屋敷は、建物は壊れ、庭は荒れ果てて、ひどい有様だった。
夜が明けて、間宮家の大広間には、
「一同、
間宮が言うと、京極家の者はそれに従い顔を上げた。間宮は罪状を読み上げ、
「これに相違はないか?」
と聞いた。
「ありません」
と京極高文が答えると、
「では、刑を処する。謹んで受けよ」
と間宮が処分を下すと、京極家の者は再び平に伏した。それを見て義則は堪らず、
「いよっ! 名奉行!」
と声を上げた。
「黙れ! 犬使い!」
と間宮は義則を一喝したが、口角は上がっていた。この二人の掛け合いは、これからも恒例となるのだった。
お白州が閉会し、義則、
「おい、美姫。靴ひもがほどけてるぞ」
と義則が言うと、美姫は、
「あっ、ほんとだ」
と言って、しゃがもうとするのを、
「しゃがむな。パンツ見えるだろう? 俺がやる」
そう言って義則が美姫の前に跪くようにして、靴ひもを結ぶのを見て、
『まるで
と
『黙れ、青犬』
「
と美姫が言うと、
「なんと⁉」
「
と深く
「気にするな、
と義則が言ったが、
「
と地面に額を付けて、謝った。
「おい、おい。やめろって。そういうのいいから、顔を上げろ」
義則がそう言って、
『ふんっ』
それを見て、
「ほら、みんな、早くおいでよ」
雪兎がカフェの入り口で待っていた。
「おう! 美姫、行こうぜ。
義則が言うと、青と黒は手のひらサイズの子犬になって、店に入っていった。
「今日の間宮もかっこ良かったなあ」
と義則が嬉しそうに言った。
「よっしー、間宮さんがお
と美姫が笑って言う。
「おう、だって、そうだろう? あれはもう、名奉行の名裁きだろう。ついあの掛け声が出ちまうぜ」
「ほんと、義則君、間宮さんの事好きだね」
雪兎が笑顔で言うと、
「おう! 俺、間宮の事、大好きだぜ!」
と義則が決め顔をして言う。それを見て、雪兎が笑って、
「今頃、間宮さん、くしゃみしているかもね?」
と言った。
一方その頃、間宮は屋敷で事務仕事をしていた。傍らには秘書的な役割を担う
「間宮さん? どうされましたか?」
世玲奈が聞くと、
「今、急に寒気がした」
と間宮が答えた。
「それはいけませんね。何か温かい飲み物を用意してきます」
と世玲奈が言うと、
「いや、大丈夫だ」
と間宮が答えた。
「いえ、いけません。お身体を冷やしてしまったのでしょう?」
世玲奈はブランケットを間宮の肩にかけ、
「こうすれば、少しでも温まるでしょう?」
と後ろからそっと身体を包んだ。二人の身体は密着して、頬が触れ合う。間宮は突然の、世玲奈のバックハグに驚き、心臓は高鳴り、寒気は一気に吹っ飛び、ポカポカと身体は熱を帯びてきた。
「どうでしょうか? 温まりましたか?」
と世玲奈が聞く。
「いや、まだ寒気が」
と間宮は答えて、その後三十分ほど、世玲奈のハグを堪能したのだった。
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