第67話
外の状況は全く分からないが、暫く待っていると、
「奴が動いた」
と
「おう、状況は?」
と
「外の状況は……」
と言って、説明を始めた。
隼人は一旦、そこで言葉を切って、
「親父、逃げる気だ」
と父に向かって言った。返事は義則には聞こえなかったが、隼人には返って来たようで、
「分かった」
と返事をした。
「親父たちが、京極を足止めした。叔父が、外からこの領域に亀裂を入れる。俺たちはそこから出るぞ」
と隼人が言った。
「おう!」
その後、白く光る縦の筋が空間に現れた。
「そこだ」
隼人が言って、その光る筋に手を翳して振ると、それは広がり、
「犬使い、先に出ろ」
義則に言ってから、
「
と隼人は
「おおっ、ヤバいぜ」
義則は身を躱して転がった。そのあとに出てきた隼人が、鬼を払いのけ、葵を安全に外に連れ出した。
「俺、
義則が言うのを無視して、隼人は葵を後ろへ庇う様に京極と対峙した。隼人の父、
「親父、捕らえたな」
隼人が言うと、
「ああ、これからこいつを呪縛する。お前も手を貸せ」
「分かった」
と隼人は答えて、二人で
「まだ、そんな余力があるのか」
その光景を見ていた正人が呟く。
「大丈夫か?」
義則が聞くと、
「さあね、分からないよ。二対一で互角かな? 京極の霊力が削がれていなければ、勝ち目はなかった。君たちのおかげで、今こうして、戦えているんだ。本当に、
と正人が言った。
「そうなのか?」
義則が聞くと、
「うん。僕は癒しと呪い返しが得意だ。兄と隼人は呪縛と結界術が得意なんだ」
と正人が答えた。
「なるほどな」
二人がそんな会話をしている間も、京極と隼人親子が、一進一退の攻防戦を繰り広げていた。
「俺に出来ることはないか?」
義則が聞くと、
「君に出来る事ね? あっ、そういえば、君の霊力、強いんだったね。僕の癒しの術を使って、君の霊力を二人に送ってみよう。霊力が上がれば、術の力が増すんだ」
と正人は、加勢できることに喜んだ。
「いいかい? 僕の手に君の手を重ねて、僕に霊力を送る。君がやるのはそれだけだ。簡単だろう?」
と正人が言ったが、
「え? 霊力を送るって、どうするんだ?」
義則には分からなかった。
「ああ。この間は、口づけだったね。あれは霊力を送らなくても、相手が霊力を吸って補ったんだ。霊力を送るというのは、そういう気持ちを持って相手に送るイメージをするんだ。出来なくてもいいよ。緊張しないで、とにかくやってみてよ」
と正人が笑顔で言う。口づけという、忘れたい出来事を思い出させた正人には、まったく悪気はないようだ。
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