第65話
間宮の屋敷に着くと、既に戦闘は始まっていて、黒龍が漆黒の霧を纏いながら宙を舞い、何かと戦っていた。敵の操るモノも黒く、ただ闇しか見えなかった。
「行くぞ!」
「俺は間宮を探す。お前らは……。為すべき事をしてくれ!」
神職の彼らの為すべき事に詳しくない義則はそう言って、間宮を探しに行った。至る所に、黒い闇のような空気と、妖しげな者たちが戦っていた。京極家の者と、佐々木家の者の戦いだ。
「間宮! 加勢に来たぞ! どこにいるんだ⁉」
「そうだ! さくちゃん、
ここには強い仲間がいる。だから、彼ら身は安全とばかり思っていた。
「お前ら、探せ!」
義則は銀色の犬を放った。ワオーンと一声吠えて、犬たちは駆けだして行く。
『居たぞ』
『この中に、間宮、
と
「間宮! さくちゃん、雫。無事なんだな?」
義則が声をかけると、
「ああ、無事だ」
そう言って、間宮が出てきた。
「こいつらは弱すぎて、戦闘には不向きだ。外に出れば死ぬ。お前が来たのなら、こいつらの事は任せる」
間宮はそのまま、外へ向かった。
「お前も戦うのか?」
義則が聞くと、
「当り前だ。王の私が隠れてどうする?」
間宮が言った。
「俺も行く」
義則はそう言うと、
「あの二人はいいのか?」
と結界の張られた部屋を振り返った。
「さくちゃんも雫も、魔獣操士だ。戦いに不向きだとしても、覚悟はできている」
義則はそう言ってから、
「さくちゃん、雫、俺が来たからには、お前たちを死なせはしない。出て来て、一緒に戦おうぜ」
と二人に声をかけた。この戦いが始まってから、すぐに間宮は二人を匿い守り続けていたが、
「分かったわよ。あんたがそう言うのならやるわよ」
と雫が、
「仕方ないな。俺も魔獣操士だ。これも宿命だな。義則君の犬、しっかり俺をフォローしてくれよな」
と朔太郎。
「分かってるって。俺を誰だと思っているんだ? 魔犬を操る魔犬操士。犬は群れを成す。そして、主に従う」
そう言って、義則はにやりと笑う。
「行くぞ! お前ら!」
義則が言うと、ワオーンっと、犬たちは一声吠えて、駆けだして行った。
「俺たちも行くぜ!」
朔太郎も言って、雫と一緒に駆けだして行った。
「あいつら、あんなに怯えていたのにな。弱いくせに」
と間宮が呟く。
「弱くなんてないぜ。あいつらは一人じゃない。俺がいる。お前もいる。他にもたくさんの仲間がいるんだ。この場に来ていない奴らもみんな、戦っている。一人じゃない」
義則はそう言って笑みを見せた。
「俺たちも行くぞ」
間宮に言って、その肩にポンと触れて、義則は
「大した奴だな」
と呟いて、激戦中の表へ
間宮は黄龍を表に出し、
「やっと現れたか」
そう言ったのは、敵の大将なのだろう。中年の男で、禍々しい霊気を纏っていた。
「お前は誰だ? 無作法にもほどがある。私の屋敷を壊し、従者を傷つけたことは許し難い。そこへ直れ」
間宮の言葉に、
「はっ! いつまでその王様気取りで居られるか見物だな」
と男は言葉を返した。
「無礼な奴め。黄龍、やれ」
と間宮が命令すると、黄龍は輝く鱗を逆立てて咆哮し、その口を大きく開いて、男へ向かって突進した。男を咥えた黄龍は、そのまま天高く昇って行く。その姿は神の如く神々しい。
「おお、すげーなあ。やったのか?」
と義則が聞くと、
「まだだ」
と間宮が言う。天に昇った黄龍を見上げていた義則だが、その異変に気付いた。黄龍の身体が上から下まで斬り裂かれていった。
「あっ! 黄龍が!」
義則は叫んだが、その隣では冷静に見つめる間宮がいた。
「おいっ! 間宮! 黄龍が死ぬぞ!」
と慌てたように義則が言ったが、
「あれは霊獣、死ぬことはない」
と間宮は言う。
「でも、あれじゃあ、負けちまうじゃないか」
「なら、お前の犬でも
間宮は静かに言った。
「そうか! 分かった! お前ら、行け!」
義則が犬たちに命令すると、
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