第63話
「高木様、お待ちして居りました。中へどうぞ」
と招かれた。
「みんなは集まっているか?」
黒服に聞くと、
「はい、母屋に居ます」
と答えた。急いで母屋へ向かうと、突然の轟音と共に、母屋の建物が揺れて、屋根が突き破られ、そこから姿を現したのは赤龍だった。
「みんな無事か⁉」
義則が声をかけると、屋敷から仲間が飛び出してきた。
「ごめんね。止められなかったよ」
と
「私の火の鳥でも抑えられなかったわ」
と
「あたしの
と美姫が言った。
「赤龍は俺たちだけでは抑えられないぞ」
と
「待たせたね」
と言った
「始まったな。赤龍は魔獣たちに任せよう。早川はどこにいる?」
「こっちだ」
と峰人が言って案内した。
「お前ら、みんなで赤龍を抑えておけ。俺は隼人たちと一緒に
義則はそう言って、隼人たちを追いかけて母屋の中へ入っていった。赤龍は中でも暴れたらしく、酷く荒れていた。奥の広い座敷に美鈴はいた。上座に座りこちらを見据えている。
『来たか』
その声は美鈴の声と、他の誰かの声が合わさっていた。
「お前は誰だ?」
『名を明かす馬鹿がいると思うか?』
と不敵な笑みを浮かべた。
「名前を明かすと、不利になるのか?」
「呪いをかけるのに、相手の名前を知る必要がある」
と隼人が答えた。
「そうか! あいつ、京極家の奴だろう? 当主の名前は確か? 高彦? 高義? 何だったかな?」
義則が考えていると、
「
と隼人が答えた。
「おう! そうだ!」
その瞬間、美鈴が立ち上がり、両手を振ると鬼の姿をした式神が数体現れ、隼人たちに襲いかかった。彼らの魔獣の猫は
「
義則が言うと、
『分かった』
と
「全員集合はこれが初めてだな。お前たち、隼人たちを守れ」
ここ銀色の犬を集めたことで、黄龍のところで、何かあっても連絡手段は無くなったが、向こうには黒龍もいる。呪術に長けた佐々木家の者も集まっていた。何とかなるだろうと義則は思っていた。
隼人とその父、義人と、叔父の正人は美鈴と対峙して、術の掛け合いをしていた。三対一で互角に見える。相手は相当強い。
「隼人、そいつ、何とかなりそうか?」
義則が聞くと、
「赤龍使いを操っているのは、京極高文じゃない。他の奴だ」
と隼人が答えた。
「そうなのか。名前が分からないと、術は解けないのか?」
義則が聞くと、
「難しい。攻撃の相手が特定できない。親父、鏡を」
隼人が言うと、既に義人は離脱して、準備を始めていた。
「俺に何かできるか?」
義則が聞くと、
「親父の周りに結界を張る。その手伝いをしてくれ」
隼人が言うと、
「分かったぜ。隼人のお父さん、何でも言ってくれ」
と義則が
「ここに、四本の青竹を立てて聖域を作る」
そう言って、青竹とそれを立てるための物を義則に渡して、
「出来たぜ」
と言うと、
「よし、君は聖域から出なさい」
と
「おう! 後は頼んだぜ」
義則が聖域から出ると、
「おい! 美鈴! 大丈夫か⁉」
思わず駆け寄ろうとする義則の腕を、隼人が掴み、
「まだだ。終わっていない」
と言った。
「けど、美鈴が」
「赤龍使いはお前を傷つけたくはないはずだ。耐えろ」
隼人はそう言って、倒れた美鈴へ視線を戻す。
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