第59話

  呪術を使う新たな敵の存在と、呪術に長けた佐々木という味方が増えて、この先にはどんな戦いが待っているのだろうか。


 数日後、間宮家に仲間が集合した。集まったのは、義則よしのり雪兎ゆきと美姫みきあや隼人はやとあおい峰人みねひとしずく朔太郎さくたろう。そして、世玲奈せれなに佐々木。

「皆に集まってもらったのは他でもない。京極きょうごく家についての調査報告だ。佐々木、皆に伝えよ」

 王座に座る間宮が言うと、

「はい」

 佐々木は返事をして、調べた内容を皆に伝えた。京極家の当主、京極きょうごく高文たかふみ。呪術を使うことが出来る。その一族、そして、その配下にも、呪術に長けた者を多く従えているという。これといって、目立った動きはないが、閉鎖的で内情は表に出ず、探ろうとすれば気付かれるため、深くは探りを入れていないという事だった。

「ただ、最近、少し気になることがあります」

 と佐々木が言うと、

「なんだ? 言ってみろ」

 間宮が促す。

「はい。赤龍の様子がどこかおかしい気がするのです」

 と佐々木が答えた。

「ほう? それはどんな風に?」

 間宮が尋ねると、

「服従の契約を課せられたわけではないのですが……。一度、調べてみた方が良いと思うのです」

 と佐々木が答えた。

「なるほどな。では、どうやって調べる?」

 間宮が聞くと、

「赤龍を何かの名目で呼んで頂いて、私が近くで彼の様子を探ります。何かの術が掛けられていれば分かると思います」

 と佐々木は答えた。

「分かった」

 と間宮が言うと、

「それ、俺も行っていいか? 赤龍使いとはまだ話したこともないしな」

 義則が言うと、

「お前を呼んで、何の名目とすればいいんだ?」

 間宮が呆れて言う。

「なんなら、黒龍使いも呼んでさ、茶会ってのはどうだ?」

「お前の口から茶会という言葉が出るのが不思議だ。そんなガラには見えない。だが、茶会ならいい口実だな。犬使いも呼んでやる。日時は追って連絡する」

 という事で、間宮、赤龍使い、黒龍使い、義則の四人で茶会を催す事となった。


 それから数日後に、間宮から連絡があり、例の茶会が開かれた。場所は間宮家の茶室。この茶室は母屋から離れていて、その周りに囲いがあり、小さな質素な庭といった、風情のある佇まい。そして、何と言っても入り口の狭さに義則は疑問しかない。

「なんだ、これが入り口なのか? これじゃあ、デカい奴は入れないじゃないか」

 などと騒いだ。

 お茶を点てるのは世玲奈せれな。彼女は和服姿だった。義則には服装は何でもいいと言っておきながら、間宮はもちろん和服で、当然のように黒龍使いも赤龍使いも和服だ。義則はラフな服装で出かけようとしたところ、母に止められ、無理やり和服を着せられて、馬子にも衣裳だなと祖父に笑われながら家を出た。

「なんだ、みんな着物着てんじゃねえか。俺だけ、ラフな服装で来るところだったぜ」

 と義則がぼやくと、

「お前は別に気にしないだろう? 本当に作法など気にするな。お前らしくない。今は世玲奈の点てたお茶を頂きながら寛ぐ時間だ。ゆっくりしていってくれ」

 間宮は世玲奈の一番近くに座って、

「お前は私の隣へ座れ」

 と義則に言った。それを見て、

鱗十郎りんじゅうろう、お前、相当お気に入りだな」

 と黒龍使いの日野がにやりと笑う。

「なんだ、そういう事か。俺たち以外に茶会に誘うとは珍しいが、その犬使いを気に入ったんだな」

 と赤龍使いの早川も笑った。

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