第39話

 これまで調べた結果で、魔獣狩りをしていたのが、黒猫使いと黒魔獣使いたちで、彼らが奪った魔獣は全て解放され、あるじのもとへ戻ったという事を、義則よしのりの祖父、則隆のりたかが間宮に報告したことで、黒猫使いの池谷いけたに隼人はやと、黒魔獣使いの五人は間宮の屋敷へ呼び出され、事情聴取が行われた。

「お前たちに処分を下す」

 王座に座る間宮が言うと、

「ちょっと待ってくれ!」

 と義則が立ち上がって口を挟んだ。

「なんだ? 犬使い。差し出がましいぞ。私の言葉を止めるな。下がれ」

 間宮が言うと、彼に従う魔獣操士二人が義則の腕を両側から掴み座らせた。

「こいつら、もう魔獣狩りはやらねえって約束したんだ! 魔獣も返した! だから!」

 義則が言うのを間宮は、

「黙れ」

 と一喝した。

「私に意見も口答えも許さぬ。処分は決定事項だ」

 それから、彼らの処分として、服従の契約が課せられ、間宮に逆らうことが禁じられた。


「ひでえな、間宮。やっぱり、好きにはなれねえな」

 帰り道で義則が呟くと、

「仕方ない。組織には規律が必要だ。じゃなきゃ、統率が乱れる」

 祖父が言った。あの場には白龍使いの雪兎ゆきと、青龍使いのあおいもいたが、誰も発言しなかった。

「なんで、葵は何も言わないんだよ。隼人が服従の契約を課せられたのに」

「その続きは、家で話そうか」

 祖父はそう言ったあと、黙ったまま家まで歩いた。


 高木家の家は結界が張られていて、内側は外界と隔てた安全な領域となっている。

「義則、間宮は服従の契約を限定的に使っている。課した内容は俺にも見せてくれたし、葵も知っている。だが、他の連中にはあれを従来の服従の契約だと思わせている。間宮も知っている。本当の敵が内部にいる事をな」

 と祖父が言った。

「どういう事だよ、じいちゃん? 赤龍と黒龍が敵じゃないのか?」

 義則が聞くと、

「その二人は、あからさまに反抗しているが、真の敵じゃねえ。もっと物事をよく見極めろ。間宮も馬鹿じゃない。だが、信頼できる者が少ない。あいつの性分だから仕方がないが、水面下で我ら魔獣操士の統率を乱し、その先に何かを目論んでいる者がいる。最初は王座を狙っているのかと思ったが、どうやらそうでもない。龍使い以外で王座を欲しがる者もいないだろう。そいつが何を欲しがっているのか、それも分からねえ」

 祖父が答えた。

「なんだよ。結局何も分からないんじゃないか。でも、間宮の課した服従の契約は彼らを虐げるものじゃないってことだよな? それならいい。あとは隠れている敵を見つけ出せばいいんだろう? 俺が探りを入れてやる」

「どうやって、敵をあぶり出す気だ? また、魔獣を連れて散歩に行くのか?」

「そのつもりだけど? 駄目なのか?」

「敵はもっと狡猾だ。お前にあぶり出されるほど馬鹿じゃない」

 二人がそんな会話をしていると、

「さあ、夕ご飯の時間ですよ」

 と母が料理を運んできた。

「おう、俺も手伝うぜ」

 義則はそう言って、いつものように料理を運んで、みんなで食卓に着いて食事を始めた。

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