第36話

 翌日の放課後、義則よしのり雪兎ゆきと美姫みきあやと四人でカフェにいた。

「それで、どんな状況なの?」

 雪兎が聞くと、義則は先日聞いた、青龍使いのあおいの立ち位置と考え方を伝えた。

「そうか。まあ、あの人らしいね」

 雪兎がぽつりと言った。

「あとは、赤龍と黒龍だけど、あいつらはどうなんだろう?」

 義則が言うと、

「さあね。僕は彼らとあまり関りはない。この間みたいに、五龍会が集まることもめったにない。間宮さんが魔獣操士に召集をかけたのも、彼が王としての権限を振りかざしたいわけじゃなくて、王としての責任を果たすためだよ。僕は間宮さんの事は嫌いじゃない。ただ、態度がちょっと横柄で誤解を生むようだね。黄龍は他の龍よりも強いから、赤龍と黒龍を従えている人たちは、劣等感を抱いているんだ。それが妬みや嫉みとなって、黄龍の間宮さんに対して、反感を持っている。僕はね、そんな負の感情を持つ人たちと関わりたくはないんだ。近付けば、僕の精気も損なわれる。君も邪に触れないのが賢明だ」

 と雪兎が答えた。

「けど、このままじゃ、争いが起こる。そしたら、誰かが傷つくだろう?」

 と言う義則の言葉に、

「その誰かに、君の大切な人も含まれるの? そうじゃないなら、関わらない方がいい。葵さんの言う事は正しい。自分の大切な人だけ守れればいいと、僕は思うよ」

 と雪兎が言うと、

「私はそれじゃ嫌だわ。争いが起こる事を止められるのなら、私は行動を起こしたい」

 それまで黙って聞いていた絢が言った。

「え? 絢ちゃん? なんで?」

 雪兎が驚いて絢を見る。

「雪兎君も、葵さんも正しいと思う。でも、私の正しさがそれは違うと言っているの」

 絢が真剣な顔で言うと、

「奇遇だな。俺の正しさも、絢と同意見だと言っている」

 義則が笑みを浮かべて言う。

「あたしも、絢とよっしーの正しさに同調するわ」

 美姫もにんまりとして言う。そんな三人を見て、諦めたように、

「僕は絢ちゃんを守るために、君たちと行動を共にするよ。でもね、僕の目的は絢ちゃんを守るためだからね」

 と雪兎は強調して言った。

「おう! それも正しい判断だ。それが、お前の正義なんだからな」

 義則は嬉しそうに言った。

「それで? 僕たちはその正義で、何をするの?」

 雪兎が聞くと、

「それはまだ考え中だ」

 と義則が答えた。何の案も無いのだと分かると、雪兎は深くため息をついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る