第30話
『遅い!』
『俺に乗れ』
と言って、義則を咥えて背中に乗せた。そして、速度を上げて火の鳥を追う。
「おっ。早いぜ! どんどん行け!」
義則は風を切って走る
『手を放すな、落ちるぞ』
「おう!」
義則は素直に従って、
「あれだな?」
義則が言うと、
『そうだ』
「やばいぜ。早く止めねえと」
義則は危機感を覚えた。街には多くの人たちがいる。そして、とうとう繁華街の上まで来てしまった。火の鳥は人々のいる通りへ向かって降りていこうとした。その先には、
「雪兎! そいつを止めろ! 火の鳥だ!」
義則が叫ぶと、雪兎はすぐに頭上を見上げ、それを確認すると、白龍を出して火の鳥に攻撃した。しかし、火の鳥はそれを躱して宙を舞う。火の鳥の羽搏きは炎を生み、火の粉が辺りを燃やした。魔獣が見えない者たちは、何が起こったのか分からず、突然の炎に怯えて、
「火事だ!」
と言って、逃げ惑う。
「
雪兎が声をかけると、白龍は炎を消していく。その間にも火の鳥は炎をまき散らした。
「やめろ!」
義則が追い付くと、
「行け! あれを捕まえろ!」
火の鳥は
「お前らも出て来い」
義則は、銀色の犬たちも出して、連携して火の鳥を追いこむ。美姫の魔獣の
火の鳥は、銀色の犬たちに追い込まれ、
「絢ちゃん! 近付いちゃ駄目だ!」
いつも冷静な雪兎が叫んだ。けれど、絢は止まらなかった。
「
そう言って絢は、火の鳥に近付いた。
「絢、近付くなよ。そいつは街を一日で燃やし尽くしたんだ。お前も丸焦げにされるぞ」
義則もそう言って、絢を止めようとした。
「怯えているのよ。もう大丈夫よ。彼らにはこれ以上、手出しはさせない。
絢が言うと、
「ありがとう、
絢は
「ごめんなさい。こんなに傷つけてしまって」
と言って涙を流した。すると、絢から霊気が流れ、火の鳥の傷を癒した。そして、火の鳥は身体を起こし、絢に深く頭を下げ服従の姿勢を示した。
『火の鳥が絢に服従した』
「それはどういう意味だ?」
義則が首をかしげて聞く。
『魔獣契約が成立し、火の鳥は絢を
「え?
絢が驚いて聞くと、
『そうだ』
と
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