第25話

 一方、義則よしのりの方は、くろが黒鹿の首に食らいつき、首を振って放り投げた。黒鹿は地面に叩きつけられる前に体制を整えて着地し、首の傷も霊力で治癒されていた。黒鹿もまた、身体を大きく変化させてくろと対峙し、次の瞬間には、素早くくろに向かって走った。そして、その大きな角を振りかざし、くろめがけて突き刺した。くろはそれを躱すも間に合わず、わき腹にそれは深く突き刺さった。そして、黒鹿はそのままくろを持ち上げ振り落とす。

 銀色の犬たち十体は、黒豹を相手にしていた。一斉に黒豹に食らいついた犬たちだが、黒豹は急に大きくその姿を変貌させて、食らいついていた犬たちを振り落とした。そして、素早い動きで犬たちを次々と蹴散らして言った。それでも、犬たちも負けずに立ち上がり、何度も黒豹に食らいついていく。

「黒い奴ら、みんな強いな」

 義則はそう言って、指笛を吹いた。すると、義則の影から銀色の犬たちが次々と現れ、最初の十体と合わせて五十体となった。

「そろそろ、終わりにするか。なあ、雪兎」

 義則が言うと、

「そうだね」

 と雪兎が答えた。そして、白龍は再び咆哮し、大きな身体で黒い魔獣たちを薙ぎ払った。


 銀色の犬たちとくろは、連携して黒豹、黒鹿を制圧した。

「終わったな」

 黒豹と黒鹿は、五十体の銀色の犬たちにし掛かられ、身動ぎも出来ない状態になっていた。黒熊、黒牛、黒狐ははくの巨体の下敷きに。

「俺たちの負けだな。お前たちの好きにしろ。強い者がこの世を制するんだ」

 と負けを認め観念した。

「そうだな。俺と友達になってよ。雪兎も友達になりたい?」

 と義則が雪兎を振り返ると、

「僕はいいよ。友達は多くなくていいから」

 と答えた。

「そうか。それじゃ、お前たちみんな、今から俺の友達だ。そういえばお前ら、服従の契約はしていなんだよな?」

「していない」

「ならよかった。誰にも虐げられていないんだな?」

「ああ」

「なら安心だ。お前ら、ほんと、強いもんな」

 と義則は、黒魔獣使いたちに言ってから、

「雪兎、お前、俺んちにご飯食べに来るか?」

 と雪兎に聞くと、

「今日はこのまま帰るよ」

 と答えた。

「そうか。それじゃ、五人だな。くろ、先に帰って母さんに言っといてよ」

『分かった』

 くろは返事をして闇に消えた。

「それじゃあ、雪兎、また明日な」

 と義則は雪兎に声をかけた。

「うん、また明日」

 雪兎は答えて、白龍をペンダントへ戻した。

「それじゃあ、お前ら、一緒に帰ろうぜ。俺んちへ」

 と義則は五人の魔獣操士に声をかけた。

「なぜ?」

 黒熊使いが聞くと、

「お前らと友達になったから、俺んちでみんなで飯食おうぜ。もう、母さんに言ってあるからな。断るなよ」

 と強引に彼らを誘った。つい先ほど、大型魔獣大乱闘を繰り広げていた敵を、我が家の食事に招待する義則は、一体何を考えているのか、魔獣操士たちは全く理解が追い付かなかった。

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