第22話
「どうぞお好きなように」
「さくちゃん、よろしくな!」
と朔太郎の肩に手を置いて、
「俺、母さんの手伝いしてくるぜ」
と台所へ向かった。
「さあ、朔太郎君、座って。今から一緒にご飯を食べよう」
父はそう言って、朔太郎を自分の隣に座らせた。
「
父は早速、蜥蜴を褒め称えた。実際に蜥蜴の魔獣は珍しく、祖父の
「俺も初めて見た。蜥蜴の魔獣がいるとは聞いたこともなかったが、本当に綺麗だな」
祖父が言うと、隣に座る祖母の明子は微笑んで、
『本当に綺麗ですね』
と祖父に同調した。朔太郎はこんな風に自分の魔獣を褒めてもらったことなどなかった。義則の家族が蜥蜴を褒めてくれて、こうして自分を歓迎してくれたことが嬉しくて、自然と涙が零れた。
「おや、おや、朔太郎君、どうしたの? 緊張しておなか痛いの?」
優しい父が心配顔で聞く。
「いえ、違います。こんなに優しくしてもらって嬉しくて……」
父の優しい言葉に、朔太郎は更に泣く。そこへ義則が、
「おまたせー。今日はビーフシチューだぜ!」
と料理を持って入って来た。
「おい、さくちゃん! どうしたんだ? じいちゃん、何か言ったのか?」
と義則が厳しい目を祖父に向けた。
「なんで俺なんだよ」
祖父が不満そうに答えると、
「だって、父さんもばあちゃんも優しいから、さくちゃんが泣くようなことは言わないだろう。消去法だ」
義則が言った。
「違うよ、義則君。みんなが優しくて、それが嬉しくて、涙が出たんだ」
朔太郎が答えると、
「何で嬉しいと泣くんだ? 誰からも優しくされたことがないのか? まあ、辛い事があったんじゃなかったんならいいけど、ほんと、お前、大丈夫か? 誰かに意地悪されたら俺に言えよな」
義則は料理を置くと、朔太郎の肩に手を置いて、
「これからは俺が付いているから、何も心配は要らないぞ」
と励ますと、彼は更に泣いた。
「おい、おい。困ったなあ。まあ、落ち着いて」
そこへ母が料理を運んできて、
「義則、お友達を泣かせてはいけませんよ」
と注意した。
「なんで俺なんだよ」
義則が言うと、
「あなたしかいないでしょう。ごめんなさいね」
と朔太郎に謝る母に、
「いえ、大丈夫です。皆さんが優しくてつい、涙が」
と説明する羽目になった朔太郎。
その後、母の誤解は解けて、みんなで仲良く食事を楽しんだ。義則の家族は朔太郎に興味津々だった。特に七色の蜥蜴の魔獣についての質問が多かった。質問攻めになった朔太郎だが、こうして、自分に興味を持って聞いてもらえることは嬉しくて、楽しい時間が過ごせたのだった。
雫も朔太郎も、魔獣狩りをさせられていただけで、詳しいことは知らなかった。ただ、共通するのは黒猫使い。それが誰なのかは、祖父にも分からなかった。
「これまでも、黒猫使いは姿を見せてはいない。狡猾な性格なのだろう」
祖父はそう言って、義則に警戒を促した。
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