第16話
「俺、
「それじゃ、またな雫。雪兎は明日、学校で」
と二人に声をかけて別れた。
「なあ、父さん。なんで雫は加藤家が嫌いなんだ?」
義則が聞くと、
「さあね。私には分からないけど、きっと雫さんには辛い事があったんだろうね。彼女が話してくれるまでは、そっとしてあげなさい」
と父が言った。
「分かった」
次の日の朝、
「よっしー! おはよう!」
「おはよう、美姫ちゃん。義則は今支度をしています」
母が言うと、
「おばさん、上がっていい?」
美姫が言って、
「どうぞ」
と母は笑顔で答えた。美姫は玄関を上がって、靴を揃えて洗面所に向かった。
「よっしー! 早く行こうよ~」
美姫が義則を急かすと、
「今、髪を整えているんだ。もう少し待ってろ」
と丁寧に髪を整えて、鏡に映った自分を色々な角度から見て確認している。
「ほんっと、よっしーったら、髪型には気を遣ってるよね~」
そう言って美姫は笑った。美姫の髪は天然パーマで、常にクルクルと強いカールがかかっている。
「身だしなみは大事だろう」
義則はそう言ってから、
「よし、完璧だ。今日も俺、いい男だぜ」
と自分を褒めた。これも毎朝の習慣なのだ。
「うん、うん。よっしーはいい男だよ。さあ、行きましょう」
美姫はそう言って、義則の腕にしがみついた。
二人で家を出ると、
「
義則が聞いた。
「絢はね、
と美姫が答えると、
「何でだ? 学校を通り越して迎えに来る必要があるのか?」
義則には、雪兎が無駄に遠回りする意味が分からなかった。絢の家は学校から十五分離れている。雪兎は駅から学校までバスで通学している。そこから十五分歩いて迎えに行き、また学校まで十五分歩くことになる。
「雪兎君、絢と一緒に学校へ行きたいのよ。二人は恋人同士なんだから、時間をかけてでも迎えに行く意味はあるのよ」
美姫に言われて、
「そんなもんか?」
と言いながら義則は、雪兎と絢が仲良くしているのはいいことだなと思った。
その日の帰り道で、
「ねえ、よっしー。これから危険なことが起ころうとしているのよね? あたしに黒ちゃんを付けてくれるのは嬉しいけど、あたしも自分の身は自分で守りたい」
美姫はいつになく静かに話した。
「そうだな。これから大きな戦いが始まるのなら、お前にも魔獣を操ることが出来れば、俺も助かる」
義則が言うと、美姫は目を輝かせて彼を見上げた。
「ほんと⁈」
「ああ。ただ、魔獣と契約を結べるかは分からない。続きは帰ってからだ」
義則は先日、白蛇使いの
「今日、このまま、俺んちへ来いよ。じいちゃんに話してみる」
「うん」
美姫は嬉しそうに義則を見つめた。
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