第7話

「それじゃ、よっしー、雪兎ゆきと君また明日!」

 義則よしのりの家の前で、美姫みきが二人に声をかけると、

「おう! また明日な。あやも!」

 義則が答えた。

「うん! また明日ね、よっしー、雪兎君」

 絢は雪兎の名前を言った時、頬を赤らめた。

「うん。美姫ちゃん、絢ちゃん。また明日ね」

 雪兎の笑顔と眼差しは絢に向けられていたのを見て、美姫は満足げに笑みを浮かべた。


 義則の家は塀に囲まれていて、立派な門がある。雪兎はその敷地全体に張られた結界に気付いた。義則は門を開けて、

「ほら、入れよ」

 と言って彼を招き入れた。その時、雪兎は一瞬のうちにその空気の変化を感じ取った。

「気付いたか? ここはセキュリティばっちりだぜ」

 義則はウインクしてみせた。

「ただいまー。父さんいる? 今日、友達になった雪兎を連れて来たんだけど」

 玄関で言うと、母が楚々そそとして現れ、

「あら、新しいお友達? いらっしゃい。どうぞ上がって」

 と雪兎に声をかけた。

「あの、初めまして。僕は瀧川雪兎です。すみません、突然お邪魔してしまって……」

 義則に半ば強引に連れて来られたとはいえ、ついて来た事を後悔して、どうにも居た堪れなかった。

「あら、遠慮なさらないで。瀧川さん所のご子息なのでしょう? さあ、上がって下さい」

 母には既に、雪兎が何者なのかが分かっているような口ぶりだった。

「何? 母さん、こいつの事知ってるの?」

 義則が聞くと、

「ふふっ。同類ですもの」

 と答えて、

「さあ、どうぞ」

 と雪兎を客間に通して、自分は台所へお茶の支度をしに行った。

「なんか、ごめんな? 面倒なことになった」

 義則が言うと、

「いいよ。これもきっとえんだから」

 雪兎は笑顔で言ったが、少し影が見える。

「いらっしゃい、義則の新しいお友達が来てくれたと聞いてね。ご挨拶をさせてもらおうかな? 父の義彦よしひこです」

 部屋へ入るなり父が言うと、そこへ母がお茶を持って入ってきて、

「義則の母の則子のりこです」

 と自己紹介をした。それを見て、義則は恥ずかしくなって頭を抱えた。

「ああ、もう。友達の前で恥ずかしいだろう? なに真面目に自己紹介してんだよ」

 そこへ、祖父もやって来て、同じような展開に。そしてもちろん、祖父と共に祖母の霊魂も同様に。


「ごめんっ、ほんっと。まあ、お茶でも飲んで。今から駅まで送るからさ」

 義則が言うと、

「謝らないでよ。いい家族だね。楽しかったよ」

 雪兎は笑顔で言った。確かに家族総出で新しい友達を歓迎するさまは面白いだろうが、義則には、ただただ恥ずかしいだけだった。

 父の車で雪兎を駅まで送ると、帰りは父と義則の二人。

「いい子だね」

 父がぽつりと言った。

「ああ。いい奴だ」

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