4分50秒小説『ゴーレムビューティートーク』
「ゴーレムビューティートーク!皆さんこんにちは。アイアンゴーレムです。本日はストーンゴーレムのビューティー・メガ・ストーン先生にお越ししただきました。先生、宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「早速ですが先生、最近の若いゴーレムのメイクを見てどう思われますか?率直なご意見をお聞かせください」
「そうですね。最近街を歩いていると氷、ダイヤモンド、マグマ、色々な素材でお肌を守っている若いゴーレムの方を良くお見掛けします。確かにそういった素材を使ったメイクは、華やかで、人目を引きやすいのですが、ただ残念なことに、殆どの方のベースメイクが不十分で素材の美しさを無駄にしてしまっているんですね」
「なるほど、ベースメイク、つまりお化粧の下地ですね?」
「そうです。例えばせっかくマグマでお顔を覆ったとしても、そのマグマと相性のいいベースメイクを施していないと、段々とマグマが冷えてひび割れてしまったり、剥げ落ちてしまったりという残念なことになってしまうんです。ですので今日は、ストーンゴーレムのお肌にあったベースメイクの基本、特に”お肌の正しい研磨の仕方”について、皆さんにお伝えできればなと思っています」
「大変興味深いお話だと思います。先生、私なんかは肌が鉄なので、アサヒトリクロールALでさっと処理して、 鈴木油脂工業(SYK)のパワークリーンを塗って、ディスクサンダーで軽く磨くといった下処理をする場合が多いのですが――」
「金属系ゴーレムの方は、そういった下処理で概ね問題ないと思いますよ。ただし、お肌が岩の方は、トリクロロエチレンやグリコールエーテル系溶剤を使用すると間違いなくお肌を痛めてしまいますから注意が必要です。また、岩系でも泥・砂・礫などの堆積岩のお肌の方は、お肌の表面が非常に脆いので、サンダーで磨くと、お肌を痛めてしまう危険性があります。大事なのは、お肌にあったヤスリで磨いてあげることです。それも金属ヤスリではなく、粗目の紙ヤスリで磨くことが大事です」
「金属ヤスリは使用しない方が良いのですか?」
「そうですね。確かに金属ヤスリを使えば早く磨けるんですが、先ほども申しあげた通り、堆積岩の方や、モース硬度5以下の岩肌の方は、特に金属ヤスリの使用は避けて、必ず紙ヤスリを使用してください。でないとただの研磨になってしまい、お顔の輪郭が削れてしまいますので」
「なるほどですね。モース硬度5ということは、”リン灰石”よりもお肌が柔らかい方ということですね。そういった方は特に磨きには注意が必要なんですね?」
「そうですね。最近では、石膏、方解石、蛍石など石の種類ごとに専用のメイクアップ紙ヤスリが各社から発売されていますのでね。自分のお肌に合ったものを使って、優しく丁寧に磨きをいれること、まずはこれがベースメイクの一番の基本です」
「ちなみに先生、研磨液の使用についてはどうでしょうか?」
「私は研磨の際には、お水か40度程度のぬるま湯以外は使わないようにしています。薬剤は長く使用すると、どうしてもお肌を痛めてしまいますので、特に石灰岩を含んだお肌の方は、薬剤に含まれる二酸化塩素でCo2を発生させてしまう危険があります。『自分はチャート岩のゴーレムだから大丈夫!』と思っている方でも、毎日磨いているうちに、お肌の奥から石灰岩が露出していて・・・というケースもありますから注意が必要です」
「なるほどですね。今日のお話をまとめさせて頂くと、①金属ヤスリではなく紙ヤスリを使うこと、②紙ヤスリは自分の岩種にあった専用のものを使うこと、③研磨液の使用は避け水かぬるま湯でお肌を磨くこと、以上3点がお肌研磨の基本ということで先生、宜しいでしょうか?」
「そうです。あと皆さん、冬は特にお肌にひび割れができやすいので、外出前にしっかりと余分な粒子を研磨で落とすようにしてくださいね」
「先生、本日はとても為になるお話、有難うございました。ところで、最近ご本を出版されたとか――」
「はい。アイアンゴーレムさんがそちらに持っておられる本、来週9日に、『ビューティー・メガ・ストーンの1日1分!で変わる美岩ローラー大作戦』が発売になります。また来月には、サイン会も予定しておりますので、ぜひ皆さんお買い求めください」
「私も読ませてもらいましたが、ストーンゴーレムの方だけじゃなくて、すべてのゴーレム向けに美岩ローラーの正しい使い方やマル秘テクニックなどが満載のご本になっていますのでぜひ皆さんお買い求めください。先生、本日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ゴーレムビューティートーク!来週は、アイスゴーレムの氷岩石先生による『夏でも溶けないアイスメーク』です。お楽しみに!」
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