第5話──5「もう、我慢はしなくてもいいから」


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「よっしゃ! 着いたねー! 護衛ほんとありがと! あなた達と一緒だったから道中めっちゃ楽だったよー! これ、依頼料ね!」

 大量の湧き水携えて。シザクラたちは無事、メルクマールの町にシュトルを送り届けることが出来た。

 ウォッサー水源地からおよそ数日。まだ日が高いうちに到着した。シュトルは上機嫌で、布袋を手渡してくれる。

 フィーリーと中身を確認して、シザクラは息を呑む。最初に提示された金額の倍近く依頼料が入っていた。

「えっ、こんなにもらっちゃっていいの……?」

「もちろん。道中、迷惑も掛けちゃったしね! 今日はこの町でパーっと使っちゃって。さて、私は早速湧き水を売り込んでくるよ! 商人の腕が鳴るぜー!」

 馬車を伴って。シュトルは町の中心地へと向かっていった。それを見送って。シザクラはフィーリーと目を合わせる。

「……えと。宿屋。行こっか……?」

「……はい」

 シザクラはぎこちなくフィーリーの手を引いて、まっすぐ宿屋へと向かう。

 いつもなら新規の町に着いたら少し中を見て回ったり、買い出しなど、店などを巡ったりして探索するのだが。今日は、事情が違った。早く、二人きりに、ならないと。

 幸いにも宿屋に空室があり、客室に入る。ベッドが二つ並ぶ、少し手狭な室内。でも問題ない。おそらく片方のベッドは荷物置き場になるだろう。

 二人共照らし合わせたかのように荷物を置く。フィーリーがそわそわちらちらと、シザクラのことを窺っているのはわかっていた。その視線が、また貼り付くほど熱い。

「……あの。シザクラさ……んっ!?」

 彼女がおずおず声を掛けてきたタイミングで、シザクラは彼女をベッドに押し倒している。そのままその小さな体を全身で押さえつけるように覆って、唇を塞いだ。

「んむっ……んっ、ぇう……っ。んっ」

 二つの唇が重なって、そのあわいで舌と舌が。絡み合い、解けて、また結びつく。彼女の小さな口腔、一つ一つ全て巡ってしまいそうな勢いで、シザクラは彼女を弄った。

 唾液も呼吸も、体温さえも混じり合ってしまいそうな本能のキス。どれだけ続いただろう。息継ぎのつもりで一旦離れたら、名残惜しいとばかりに彼女の方から唇を押し付けてくるのだ。だから、入念に味わった。もう舌からじんと痺れて、彼女の甘さにしか味覚が働かなくなりそうだ。

「はっ、はっ……シザクラ、さん……っ」

 口元をべっとりと汚して、そこから乱れた息をこぼして。蕩けそうな眼差しでこちらを見上げる彼女が。全部欲しい。全部全部全部。欲しくてたまらない。彼女も誘っているような気がした。

「……一応聞くけど。いいんだよね、フィー。さすがにあたし、今日はもう途中でやめらんないよ……?」

「やめないで、ください……。いっぱい、して……?」

 そんな、ぞくりとするほどとろけた声で囁かれて、頬を撫でられたら。最後の理性がはち切れる。まだ外套も脱がず、浄化の魔石すら使っていない。でも、そんな余裕はない。

「……わかった。でも本当に嫌だったら、あたしの体ぽんぽん叩いて教えてね。」

 平静をかろうじて装いながら言う。もちろん彼女がそうしたら、全力で自分を制するつもりだった。

 外套であるマントも、ローブも一気に脱がしてしまう。そのまま放るようにしてベッドの外へ。今は畳んでいる時間さえ惜しい。後で浄化の魔石を使っておこう。皺まで良く取れる。

「んっ……は……っ」

 キャミソールとドロワーズだけの無防備な格好を晒すフィーリー。シザクラは、さっそく彼女の首筋に唇をあてがう。少し甘噛むようにして、その薄肌の瑞々しさを味わった。舌を這わせれば、仄かに汗の気配がする。それが彼女のミルクのような未熟な体臭と入り混じって、ひたすらに甘美だ。

 そうやって首や顎の下などを舌でなぞりつつ。耳にも触れていく。唇で耳の先を啄み、凹凸を舌でなぞり、耳の入り口まで丁寧にほぐすように舐めた。きっと彼女の聴覚は、水音で満たされている。びくびくと、シザクラの腕の中に彼女の愉悦の震えが伝わってくる。

「あっ……なんで、耳、ばっかり……っ」

「弱いから。あっ、こっちも、好きなんだっけ」

 帽子はもう脱がしてある。角。渦を巻いた綺麗なそれに、そっと指を這わす。固くて柔らかな不思議な感触は癖になる。そこに感覚があるのは把握済み。彼女はわかりやすく、目をきゅっとする。

「指よりは、こっちの方が好き、なんだもんね……?」

「んひゃっ……や、ん……っ」

 かぷりと、その不思議な感触の角に口づける。れろりと舌で舐ってやれば、その曲線の感触、ほんのりと熱を帯びたしなやかさがしっかり伝わってくる。サキュバス特有の性感帯。ぞくぞくしてきた。

「あっ、ん……っ、そこは、ダメ、です……っ。くすぐった……っ、んっ……!」

「角を口でされて感じちゃうとか、よわよわサキュバスだねぇ。弱点がこんなに特徴的でいいの?」

「つよつよサキュバス、ですから……っ。それにそこ触られてこうなっちゃうのは、シザクラさんに、されてる、からで……っ」

 余裕がなくなって、つい本音をこぼしてしまったような声音に聞こえた。……昂る。それならもっと、こうなってもらっちゃおうじゃないか。

「じゃあつよつよサキュバスさんのこと。もっと懐柔、しちゃおうかな……っ」

 シザクラは舌なめずりして。そっとフィーリーの幼い身体を、まさぐり始めるのだった。

 まだ日は高い。今日は、一日中宿屋にいることになりそうだ。

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