第3話──5「はじめてのひとりあそび」
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「うん、いいよ。……でもあたし、脱ぐの久々かも。他の女の子とする時もあんま脱がないからさ。嫌ではないんだけど」
「……今、他の女の子の話、しないでください」
「え? あ、ごめん……?」
むくれたように彼女に言われてはっとなる。迂闊だったが、フィーリーが嫉妬のような感情を見せるのが少し意外だった。てっきり、体だけの関係と割り切っていると思っていたから。
(いや、この子まだまだ子供だもんね……。割り切るのは難しいか……)
今の自分たちの関係は、少し危険かもしれない。今更気づいたが、多分遅すぎる。それと、彼女のあからさまな嫉妬を少し喜ばしく感じている自分は、もう多分手遅れだ。これがサキュバスの誘淫の効果だったとしても。
「自分で脱ぐので。……向こう、むいてもらえますか」
「え、今更? いや、ごめんて。睨まないで。わかった見ないから。あたしも脱ぐよ」
また機嫌を損ねそうな顔をされたので、まあ従う。ベッドの上で背中を向け合いながら、お互いの服を脱ぐ。
フィーリーがローブやら何やらを脱ぐ、衣擦れの音。つい耳を澄ませてしまう。いやこれはむっつりすけべというわけでなく、サキュバスの気に当てられて……というのは、もういささか苦しい言い訳だろうか。もうどうでもいい。あたしはこの子にはっきり欲情している。それは事実だ。
「……脱いだ?」
「は、はい……」
「じゃあそっち向くよ?」
ベッドの上で座り込んだまま、向かい合う。一糸纏わぬ姿の彼女は、恥じらいを噛みしめるように俯いて、自分の体を腕で抱いている。
そういえばこんな明るい場所ではっきりと彼女の裸を見るのは初めてかもしれない。改めて、その肉付きもくびれも少ない未熟で小柄な体躯を拝んで。罪悪感、と少しの昂ぶりで唾を呑む。やれやれ、あたしもう本格的にダメな大人だ。
「シザクラさんって、すごいしっかりした体つきなんですね……。そういえばずっと、鍛えてますもんね」
「……まあね。一応前衛だから。あんままじまじ見ないの。恥ずかしいじゃん」
「私のこともまじまじ見てたじゃないですか!」
何だか、変に緊張したようなぎこちない空気がシザクラたちの間に流れている。裸になって向き合うなんて奇妙な状況のせいか、何だか落ち着かない。ましてやこっちは滅多に他人の前に裸体など晒さないのだ。
言い出したフィーリー本人も、さっきからもじもじして目を泳がせている。胸元を隠した細い腕。目に毒だ。いいよもう認めよう。あたしはむっつりすけべだ。
「とりあえず、くっつき合う? 寝転がりながらでいい?」
「は、はい……よろしくお願いします……」
妙にしおらしい彼女。先程からシザクラの胸あたりを横目で窺っているのがわかりやすい。こいつもむっつりか。
ベッドに横向きに寝転がり、彼女を抱きかかえるように腕の中へ招く。
わざと、胸のところに彼女の顔が来るように抱いた。「はわ……」と彼女の感心したような吐息が素肌に当たってこそばゆい。
(あったかいし、やっぱやわっこいなぁ。子供って。いやらしい気分っていうか、普通に心地よくて寝ちゃいそう……)
ぴったりと密着した彼女の柔肌から伝わる体温と、そのしなやかさ。隔てるものもなく結びつくというのか、こういうものだっただろうか。久しく忘れていた。何だかホッとする。彼女の子供体温に。
「シザクラさん、いい匂いが、します……っ。ん……」
対してフィーリーは。逆にサキュバスの血が疼いてしまうのか。落ち着かない様子でシザクラの胸に顔を擦り付けるようにしてくる。息も熱く、膨らみの谷間に注がれるとつい身じろぎしてしまう。何だか、こっちまでそわそわしてきてしまう。
「肌と肌でくっつき合うのって、こんな感じなんですね……。気持ち良くて、ふわふわして、温かくて……何だか……」
はぁあ……っ、と彼女の熱っぽい息がまた注ぎ込まれる。ほっこりしているというよりは、彼女も昂っているのが体温で伝わってくる。そんなわかりやすく欲を表わされると、こちらももう、抱き合っているだけでは物足りなくなってくるわけで。ムラムラと神経がさっきからいきり立っている。
そろそろ触っていいか聞こうとした時。ふとフィーリーが下肢の方でもぞもぞとやっているのに気づく。
「……もぉ、我慢できなくなっちゃった? 自分でしたくなっちゃったんだ?」
「え……? あ、私……? やだ、自分で、触って……っ」
「やめなくていいよ。悪いことじゃ、ないから。てか、やめちゃダメ」
足のあわいから外そうとした彼女の手を、優しく掴む。
「自分で触ったことないの? 初めて?」
「は、はい……。師匠の元にいた時は、特製の薬でサキュバスの欲は抑えられて、ましたから……」
「んー、こういうのって、サキュバスとかどうとか関係ないよ。言ったでしょ、悪いことじゃないから。したい時はしてもいいの。」
──やり方、わからないなら。教えてあげるよ。どろっと貼りつくほどに甘く甘く、彼女の耳に囁き掛ける。悪魔の誘い。
それに彼女は、まんまと頷いてしまう。素直でいい子だから、頭を撫でてやった。
「体勢変えよっか」
優しく微笑みかけながら、シザクラは。座って彼女を背中から抱き寄せるような格好になった。
「……じゃあ、始めるよ?」
こくんと素直に頷くフィーリーにドキドキしながら。シザクラは彼女の足のあわいに手を差し入れた。
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