第2話──2「魔力の供給」


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「よぉ、シザクラさん、フィーリーちゃん! 今日も魔法の修行かい? ご苦労様!」

「シザクラさん、この前は薪割り手伝ってくれてありがとねぇ。これ、持って行って。今日とれたばかりの野菜だから」

「二人とも、ホミン草を取って来てくれて本当にどうも。乾燥させると美味しいお茶になるし、傷にも使えるのよね。あそこまで行くにはこの年だと辛くてねぇ。感謝してるよ」

 本日の川辺からの修行を終え、日が落ちてきた村へと帰る。村の人たちに色々と話しかけられながら、シザクラたちは借りている小屋まで帰って来た。

 この村を訪れてから、四日ほど過ぎただろうか。何となく村の人たちと交流したり、その仕事や頼みごとを手伝っていたりしたうちにすっかり馴染んでしまっていた。フィーリーも快く働いてくれる。この子は思った以上にいい子らしい。

 肝心の剣を持った魔物は、まだ現れていない。一応、シザクラ一人で夜、目撃された森を散策しているのだがそれらしい姿はなかった。身を潜めているのか、それとも既に場所を移したか。もう少し様子を見てみて、問題なさそうならこのまま村から出るつもりだ。

「お疲れ様。今日は惜しかったねぇ。野菜いっぱいもらっちゃったから、干し肉と合わせてシチューにしよっか」

「ありがとうございます。……惜しくなんかありません。私、全然ダメでした。どうしてもあの棒だけじゃなく、周りの枝も燃やしちゃって……」

 とんがり帽子をとってあげて壁に掛けてやると、フィーリーがやや浮かない顔をしていた。

 シザクラはふっと息をつくと、彼女の頭を優しく撫でてやる。

「でも昨日よりは確実に進歩してる。でしょ? ちょっと前まで枝どころかあの辺り全部焦がしてた前の君と比べると、大きな成長だよ。自分のこと、ちゃんと認めてあげて。次は絶対上手くいく。あたしが保証するよ」

 歯を見せて笑いかける。それでようやく、フィーリーの表情が和らぐ。

「……ありがとうございます。そう言っていただけると、嬉しいです」

「そうそう、その意気。修行なんて地道な上達なんだから、やってるうちは前進んでるよちゃんと。むしろ、君は進むの早すぎ。お子様の成長は著しいなぁ」

「お子様じゃありません」

 むっとしたフィーリーが頭にあるシザクラの手を優しく振り払う。そしてマントをジャンプしながら壁に掛けると、「さあ。シチューを作りますよ。にんじんは抜きで」とローブの袖を捲った。

 シチューを作り、さりげなく入れたにんじんに文句を言われながら二人で舌鼓を打つ。

 それから浄化の魔石で体を清めてから、床に就く。それがいつもの流れだったが。

「……あの。シザクラさん」

 簡易なパンツ型の寝間着に着替えたフィーリーが、別々のベッドに入ろうとしたシザクラの袖を引いてきた。

 ……わかっていた。ここのところ修行で魔力を使いすぎている。そろそろ、補給が必要なのだ。淫気として。彼女を囲う魔力が少なくなっているのに、シザクラは気づいていた。

「……ん。そうだね。今日は頑張ったから、ご褒美。いっぱい吸って、いいよ」

 フィーリーの小さな体を、そっとベッドに座らせ。膝をついたシザクラは、その花びらみたいな唇をそっと塞いでいる。

 実を言うと、シザクラも気が急いでいた。彼女が淫気を求める気配に、あてられているのかもしれない。触れたいと、その幼体を乱したいと。感じながら抑え込んでいた。でも今、その必要はなさそうだ。

 ふんわりとした薄い唇を、啄むようにもてあそぶ。時折舌先でその感触を確かめる。頭の後ろに手を回してそっと髪を撫でてやると、彼女があからさまにびくっとして甘い吐息を注ぎ込んでくるから。余計にもっといじめたくなる。

「……あなたのこと、少し見くびっていました」

 キスの合間の呼吸の休憩。ふと彼女が悩ましい息遣いと共にそんなことを言ってきた。興味深い

「ふぅん。どんな風に?」

「もう少し、いい加減な人だと。ですがあなたはこの村の人たちと朗らかに接していますし、魔物の件も二つ返事で請け負いました。それに、私の魔法の修行にも付き合ってくれてる。……いい人、なんですね」

「いい大人が、子供にこんなキスする? その見くびりの方が正しいかもよ」

「それだって……私の、淫気のためでしょう。それに私はあなたにこうされて……怖いと思ったことはありません。優しすぎるくらい、です」

 ややとろんとした顔でそんな身に余る言葉を掛けてもらえるとは。シザクラはにやける。なら、期待に応えてあげよう。どこまでも優しく、抱いてやろう。

「……あなたは一体、何者なんですか。私、あなたのこと何も教えてもらってません。魔法の修行の教え方も、妙に堂に入ってましたし」

「通りすがりのお節介焼きだよ。あと、可愛い女の子好き」

「……その可愛い女の子には、私は入ってるんですか」

「十年早い」

 ごまかすように、彼女をベッドの上に押し倒す。まだ恥じらいと戸惑いの消えていないあどけない顔を見下ろしつつ、その口を再び塞ぐ。今度は舌を入れた。

「ふっ……ん……っ」

(あれ……おやおや)

 翻弄されっぱなしだった彼女が、自ら舌を絡めてくる。交わり合い、結びつく。こちらの胸元の服を握った小さな手が、ぎゅっと強張る。精一杯の反撃らしい。

 でもそれには効果があった。やはり発情している彼女の唾液には、誘淫の効能があるのだろう。ぞくぞくとシザクラの抑えていた欲が、刺激されていく。

「どう、れすか……? わたひだって、されるがままじゃ、なひんれふ……っ」

「呂律、回ってないよ。あとそんなとろけそうな顔で言われてもねぇ」

 ――まぁ、超エロいけど。そんな愉しげな声を囁きかけつつ、シザクラは彼女の首に口づけている。跡を残さないように抑制するのが大変だ。

 そして指はもう、彼女の寝間着のボタンを紐解いていた。あっという間に前面が開かれ、彼女の半身の肌が暴かれる。下に何も着ていなかったらしい。

「……そろそろ上の下着着けたら? さすがに無防備過ぎ。それに服に擦れて痛くない?」

「そうなん、ですか……? でも確かに少し、むず痒い時が、あります……」

「……ちなみにさ。女性に年齢聞くのも野暮だけど、君っていくつなわけ」

「じゅ……十八歳、ですけど」

「嘘つくなお子ちゃま」

 かぷり、と肩の付け根に噛みついてやる。「んひゃ!」と彼女は体を震わせた。

 それから無防備な素肌を、くすぐるように指先でなぞってやる。鎖骨の辺りから胸、脇、それから腰のラインまで。……十八歳が、こんなに未熟で細すぎる体躯してるわけないだろうが。むしろ栄養を取れてるのか心配になる。

「ほら、正直に言わないとずっとくすぐって焦らすよ。お子様」

「子供じゃ、んぁ、ありません……っ。この前、十歳になった、ばかりなんです、から……っ」

「…………やべ。今の、あたし聞かなかったから。オッケー?」

「何ですか。二桁になったんですからもう充分大人じゃ……んぁっ」

 これ以上余計なことを言わせないように、またその体にかぶりついた。

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