嘘であれ
ヨートロー
第1話 嘘を吐く
友を、殺してしまった。
おかしい、なぜこうなった。
嘘ばかりを吐いてきた。
親にも友にも誰にでも吐いてきた。
やつらがやってきた。
やつらはここの者の命を欲しがった。
俺はまた嘘を吐き、奴らに取り入った。
自分が死ぬことなど怖くない、だが友には死んでほしくない。
何度嘘を吐いても、そんな俺を笑い飛ばした友を見殺しにできない。
俺は奴らの仲間になった。
救うためなら、この身がどうなろうとかまわなかった。
やつらに都合のいい嘘を囁き、誘導し俺は親友の命を奪う権利を勝ち取った。
あとは奴らを騙し殺すふりをするだけでいい。
そう思っていたはずの俺の腕は友の胸を貫き、血反吐が顔にかかった。
恨み言は聴けなかった。
なぜなら友が自ら死地に飛び込んできたのだから。
「お前は自分が死ぬのが怖かったんだ。お前は誰かの為に立ち上がれるような勇気を持ってない。………自分にまで嘘を吐かなくていい」
いつもの様に笑い飛ばそうと口を開いたところで、目から輝きが失せた。
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
誰か嘘だと言ってくれ。
俺に優しい嘘をくれ。
自分の心の悍ましい嘘に身を費やした俺の苦労は何だったんだ。
嘘を吐かれたのは俺じゃないか。
腕の中で息絶え、血まみれの亡骸になったのは誰のせいだ。
目の前の事実と、俺の心の真実が、俺の嘘を押しつぶしていく。
嘘であれ ヨートロー @naoki0119
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