第4話 梅子、塩むすびをこしらえる
*~*~*
「――あらやだ、もうこんな時間?」
ぽーん、ぽーん、と、壁の時計が音を立てて、しらせてくれた時刻は、正午ちょうど。
「カースさんも、お腹すいたわよね。おひるにしましょ」
よっこいしょ、と、畳の上で、たちあがる。
「なにか食べたいものはある?」
と、ふり返ってみれば、あら? カースさんと、カニちゃん、重なりあうようにして、げっそりしてるわ。どうしたのかしら?
『
えー? そんなに? ちょっと、かるーくお話ししただけじゃない?
「……いえ、いろいろと、その、熱い思いが伝わりました……ありがとう、ございました……」
『おめぇ……いいヤツだな、カース』
「恐縮、です……」
がくっ、と、カースさんたら、畳の上にへたばっちゃった。
「ほらぁ、やっぱりお腹すいたのよぉ。ちゃちゃっと作れるものにしましょ」
『いやだから、お前のせいだよ梅子ぉ……』
さーて、食材は、どうしようかなー? すぐにできるんなら、やっぱりあれかしら? ええとー、すりばちどこだったかなー?
「あの、ところで、カニさん」
『ん?』
「さっき、ちょっと聞きそびれたんですが、ここは、一体どういう世界なんですか?」
『ああ、そうだったな。そこからだ。――ええとな、まず、お前さん、自分のいた前の世界では、国以上の単位って、
♪ジャンジャリーン、ジャッジャッ!
♪ババババーン!
♪
あ、『ダン・ガイ(ダンジョン・オブ・ザ・ガイムの略)』
「国以上……といいますと、大陸とか、星とか、そういうことでしょうか……?」
『そう、それだ。俺ァ、お前さんのアニメは、梅子につきあってみてただけだから、イマイチ内容が――オイコラ梅子ォ! それヒマラヤ岩塩じゃねぇ! バスソルトだ!」
「えー? うそー?」
『なんで隣にならべて置いてんだお前ぇ!
「あ、はい」
カニちゃんたら! そんな乱暴にひったくらなくったって。……もー、すたこらさー、しゃしゃーっ。ガサガサガサ、どかっ、しゃしゃしゃーっ。
『つーわけで、カース』
「あ、はい。おかえりなさい」
『ここは、地球っていう星だ。そんで、ここは極東にある島国。お前さんらんとこでいう――まあ、東洋の国のひとつだな。大陸のさきっぽにあって、南北に長い弓なりの形をしてる。全体としては北よりだ』
「ここは、島国、なんですね」
『ああ。アキツシマ連合王国だ。旧国名は日本。半世紀ほど前に革命がおきてな、震災も重なって、かなりの広範囲の土地が沈んだ。いまの
「ヒルミ村……」
『それから、おおよそ、地球全体で通じる
「え? いま63年じゃなかった?」
『勝手にタイムスリップすんなー、梅子ォぉ』
♪ピンクーピンクのぉ、ヒマラヤー、がんえんー。
♪すりばちにー、いれてー、ごーりごりーごーりごりー
『梅子ぉ、即興歌、こごえで
「やだはずかしっ」
『ったくよぉ』
もー、カニちゃんたら耳ざといんだからー。あーはずかし。えっと、ごはんごはん。うん。十分あるわね。
「――仲がいいんですね、カニさんと、梅子さん」
『――ああ、まぁな。俺ぁ、あいつの旦那のパーソナルデータで構築した疑似人格AIだから、どうにもあいつのどんくさいのの、フォローに回っちまう』
「あの、梅子さんの旦那さんは……」
ほかほかご飯ー。ほかほかご飯ー。あっつあつー。……あっつい! お水おみずぅ。
『――十年ほどまえにな、先に行っちまったんだよ。星に、な……」
よし。できたっ。
「かんせーい。お
くるっとふり向いたら、すぱーっと煙草をふかすマネしたカニちゃんと、顔を両手でおおって、肩をふるわせて、泣いてるカースさんがいたわ。
え? 何があったの?
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