第3話 ホラー

作中エグイ場面があります。

苦手な方は飛ばしてください。(*- -)(*_ _)ペコリ





「幸子、赤ん坊と遊んでないで早くシャワーを浴びて来い」


 大きなベッドにバスローブを着た男が葉巻を燻らし言った。


「タケ、そのうるさいのをどこかにやれ」

「はい」


 タケと呼ばれた青年は、火が付いたように泣く赤ん坊を抱き上げた。


「始末して来い」

「始末?」

「あれにでもやってしまえ」


 タケは家の裏に回ると、大きな檻に近付いた。

 腐敗臭が鼻をつき、吐きそうになるのを堪えた。

 

 可哀そうに。せっかく生まれてきたのになあ。

 仕方ないよな。

 親父さんも自分の娘に、よくもあれだけ執着出来るもんだ。

 お嬢も赤ん坊を守ろうと逃げ出したはずなのに戻って来て、何を考えているのかわからん。


 獲物の匂いを覚えているのだろう。

檻の中から催促の咆哮がする。


 ガルゥー





「うわあ」


 良雄は飛び起きた。

 顔の汗をパジャマで拭った。


 嫌な夢をみた。

 幸子は大丈夫なのか。


 母親のミオは今夜は夜勤でいない。

 そっと降りる必要もないが、習慣で足音を忍ばせて階段を降り、台所の冷蔵庫の麦茶を取り出した。

 コップを掴みながら考えた。

 

 幸子の赤ん坊の父親はどうしてすぐに向かえに来なかったのだろう?

 そっち関係の人間に見えたって言うから、刑務所にでも入っていたのだろうか。


 良雄は麦茶を飲んだコップを洗い、風呂場に向かった。

 汗で湿ったパジャマと溜まっていた洗濯物を洗濯機に放り込み、洗剤と柔軟仕上げ剤を適当に入れ洗濯機を回した。


 シャワーを浴びながら考えるのは幸子のことだった。





「また幸子さんのこと考えていたの?」

「いや」

「だったらルナちゃん? そのキーホルダー彼女からの贈り物?」


 スイミングのアルバイトをする控室に置かれたテーブルの片隅で、良雄はハムスターのキーホルダーを弄んでいた。


「僕が先にクレーンゲームで取って彼女にあげたんです。ずっと大事にしてくれていて。でも、もう捨てちゃったんだろうな。これは彼女から渡されて『ノコちゃんの彼氏はヨッシーが持っていてね。名前はモコちゃんよ』って言ったんです。あの頃は先のことなど考えなくて良かったなあ。いったい僕の何がいけなかったのだろう」


 ハハハッ


「いけないも何も、ヨッシー何もしてないじゃない。彼女に好きって言った?」


 前から相談にのってもらっている先輩トレーナーは言った。

 バツイチで3歳の子持ち。


「ねえ、ユウが明日お泊り保育なの。うちに遊びに来ない?」


 息子の祐樹がいるときは、何度か遊びに行って晩ご飯を一緒に作ったりしたが、二人だけなのは初めてだった。




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