第22話

終節



 男は声をかけられ、立ち止まった。

「あーっ、白髪生えてるわよ」

「えっ? マジか……。あの染師、なーにが半年は持つ、だ」

「抜いてあげるわよ。ほら、屈んで」

「おぅ、わりーな。……持ち上げてやろうか?」

「大丈夫よ……ほらっ!」

「痛っ! もうちっと加減してくれよ」

「一気に抜かなきゃ、もっと痛いでしょ? それより、髪染めてるんだ。流石、珍しいね」

「だろ? 白めだと、傍から見たらジジイの商人っぽいし。まぁ、いろいろ珍しい商品揃えてたり、最新の情報持ってますよーって宣伝にもなるしな」

「へぇー、いろいろ考えてるのね。……次はどこに行くの?」

「次は……南だな。ところでよ、スペントガルドって今どうなんだ? 落ち着いたって話し、聞いたか?」

「スペントガルド? ちょっと前に新しい領主も決まって、やっと落ち着いたらしいわよ。でも、言うほど大した混乱も起きなかったようだし、やっぱり焼け死んじゃった領主様が優秀だったのね」

「ふーん……なら良かった」

「次の行き先、スペントガルドにするなら私も一緒に――」

「次は南だ。……ごめんな」

「……別にいいわよ。方角が同じなら一緒に行こうと思っただけだから」

「そっか。……もうちょっとプレトリット全土を周ってみてーからさ」

「……全部周ったら、どーするの?」

「そしたら……次はユナイダムにでも行ってみっかな」

「ずーっと旅を続けるの? 世界中?」

「そーいう訳じゃねーけど……まぁ、今さら普通の暮らしにゃ戻れねーかな」

「そんなことないわよ。普通に戻るのなんて、簡単じゃない」

「あー、そうだな。でもよ、まぁ……好きなんだよ、こういう生き方が。お前みたいな可愛いやつにも逢えるしな」

「茶化さないでよ。カッコつけちゃって、バカみたい……」

「へっ、男っていうーのはな、みんな馬鹿でカッコつけなんだよ」

 そう言って男は葉巻を咥え、歩きだす。

「じゃあ、そろそろ行くわ。またな」


                                     結

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「シュトラウス・ガイガー」の冒険 九十九一書 @Tsukumo_Alufumi

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