第20話
3
フレットたちは立ち尽くしていた。
洞窟の入り口付近で簡易魔法弾が爆発した結果、入り口の天井と上部の崖の一部が崩落し、洞窟は見る影もなく潰れた。
今は大量の粉塵と落石によって、その跡すら確認できない。
フレットは魔法を唱えた後、即座にゼリエスに引っ張られる形で洞窟を脱出しており、巻き込まれずに済んでいた。
「離れよう……」
ゼリエスはフレットの肩に静かに触れた。
フレットは顔をくしゃくしゃに歪めながら立っていた。その頬は粉塵と涙で汚れている。
「なにも……できなかった……!」
よろよろと後ずさりながら、そう何度も呟く。
「なにも……! なにも……!! 目標にしようと……恩返ししようと……それなのに……」
陽光の皆は、かける言葉が見つからなかった。
リーダーだけではない。メンバーの皆がシュトラウスたちを目標に、銀等級として頑張っていこうと思っていた。それなのに、こんな結末を迎えてしまった。自分たちの力が足りないばかりに。
「そんなことはない」
沈黙の中、ゼリエスが静かに、誰にでもなく語りはじめた。
「あの漢が言ったように、俺たちは真っ当に……俺たちのまま、強くなっていけばいいんだ。それが、俺たちに未来をくれた……シュトラウス・ガイガーへの恩返しだ。そして、俺たちがあいつに近づけた時、後進に語り継ごう。シュトラウス・ガイガーという名の英雄がいたことを……!」
ゼリエスは力強くそう言った後、自らの大剣を引き抜き、切っ先が天を仰ぐように両手で掲げた。そして、柄を胸の前から顔の前までゆっくりと動かし、目を閉じた。
その姿を見た皆は、各々の形で黙祷を捧げていく。
(すみません、シュトラウスさん……助けてもらってばかりで、何の役にも立てず。だから、あなたに誓います。あなたみたいに当たり前のように笑顔で人助けができる、頼れる冒険者になると……!)
フレットが胸の前から剣を下げ、振り返る。そこには同じように黙祷を終え、待ってくれている仲間たちがいた。そして、もう一人の目標となる人物も。
「お待たせしました。……いきましょう」
こうして、冒険者たちの長き戦いは終わりを迎えた。
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