ふるさと

鈴鹿 一文(スズカカズフミ)

第1話




「ふるさと」





人 物

中島太輔なかじまたいすけ(30)会社員・東高校出身

唐船蓮也(からふねれんや)(31)中島の東高校の先輩

唐船那月(からふねなつき)(29)蓮也の妻、西高校出身

唐船アタル(10)蓮也の息子



○マンション・リビング(朝)

   時計10時を指す。

   スーツのまま床で寝てる

   中島太輔(30)目を覚ます。

中島「さむっ」

   起き上がり、周りを見渡す。

中島「そうか、もうルカはもういなんだ」

   中島二度寝する。

中島「もう一度ねるか」

   インターホンがなる。

中島「ルカか?」


○マンション・玄関・インターホン

   中島、玄関へ。インターホンに

   話しかける。

中島「ルカ、帰ってきたのか?」

唐船(声)「運送屋です」


○マンション・玄関

   中島ドアを開ける

中島「引っ越し屋さんか、ルカの

 荷物をとりにきたんだな」

   帽子を被った作業着の

   唐船蓮也(からふねれんや)(31)登場。

唐船「中島太輔さんですよね、思い出を

 お届けに上がりました」

中島「え、今なんて何?思い出?」

唐船「太輔、久しぶりだな」

中島「太輔?その言い方、

 もしかして貴方、唐船先輩ですか?」

   唐船笑う。

唐船「そうだ、10年以上ぶりだな、太輔」


○マンション・リビング

中島「先輩聞いてください、

 理由も言わず、妻も子供も、家をでて

 行ったんですよ」

唐船「太輔、結婚できたのか!?

 よかったなあ」

中島「僕は悪くありません」

唐船「成績は、学年218番中218番で、

 水泳部のキャプテンのクセに不登校

 で、アニメオタクの太輔が

 生身の人間と結婚できたのが、俺は

 心底嬉しいし、驚いた」

中島「でも、妻も子供も出て行きました

 僕もうボロボロですよ」

唐船「そうか?高校時代から太輔は

 ずっとボロボロだろ?今の方が

 ずっと元気そうだよ、俺安心した」

中島「唐船先輩、高校時代は、何も

 守るべきものがありませんでした。

 いつ消えてもいいと思ってた、

 でも今は守るべきものがあって、

 それを失う辛さわかりますか?」

唐船「俺は、太輔じゃないから、太輔の

 辛さは全然わからんけど、奥さんと

 お子さんは、お前と離れて幸せ

 なんだろ、太輔は少なくても世界で

 二人を幸せにしたんだ、よくやった」

中島「何その歪んだポジティブ思考、

 先輩変わりませんね」

唐船「無駄に妄想力半端ない

 ネガティブ思考、太輔こそ変わって

 なくて俺は嬉しいぜ」

中島「唐船先輩は今迄何してたんですか」

唐船「高校卒業してから、アメリカで

 お坊さんになって、その後

 南アフリカで映画撮ってて、

 帰国して今、運送屋で働いている」

中島「唐船先輩、相変わらず正体不明

 ですね、そんな人生よく世間が

 許しますね」

唐船「うるせえよ。まあ太輔が

 元気そうでよかったよ」

   唐船立ち上がる。

唐船「俺ションベン行ってくる、トイレ

 貸してくれ」

中島「ゆっくりどうぞ」


○マンション・リビング(朝)

   時計12時を指す。

   スーツのまま床で寝てる

   中島太輔(30)目を覚ます。

中島「やっぱ、さむっ」

   起き上がり、周りを見渡す。

   誰もいない。

中島「先輩?唐船先輩?夢か?」


○駅・ホーム

   混雑する駅

中島(M)「目が覚めると、唐船先輩は

 なかった。どこにも先輩のいた形跡

 はない。しかし僕はどうしても夢

 だと思えなかった。いや思いたく

 なかった、僕は10年以上帰って

 なかった故郷行きの列車に乗った」


○寂れた駅・ホーム(夕)

   人のいな駅のホームに降りる中島。

中島(M)「両親は亡くなり、家は処分

 されていたので、俺には故郷に帰る

 べき場所はない。しかし、唐船先輩に

 無性に会いたかった」


○自動販売機(夕)

   ジュースの自動販売、ラーメン

   の自動販売機が2台並んでいる。

   ベンチがある。

   学ラン姿の高校生二人が雑談。

中島「東校の生徒だな。後輩かあ。僕も

 唐船先輩と、あんな風に過ごしたな」


○自動販売機(夕)

   高校生2人の隣で、ベンチに

   座り、缶コーヒーを飲む中島。

中島「缶コーヒーなんて久しぶりだ。

 あったかい」


○空(夕)

   山に夕陽が沈む。

中島「綺麗だな。いつまで経っても

 景色はそのままだな」

   中島、スマホを取り出して、

   少し考えてポケットにしまう。

中島(M)「景色を留めたい、と思う

 以上に、この綺麗な夕日を誰かに

 伝えたいと思った。だが、やめた。

 僕には喜びを伝える相手がもう

 いない事に気がついたから」


○自動販売機(夕)

   警察のバイクが自販機の前に

   とまる。

中島「お巡りさんだ、僕何かまずい

 事したかな」

   後ずさる中島。お巡りさんは

   唐船那月(からふねなつき)(29)

那月「あなた、何してんの?」

中島「はあ、東京から帰省しまして」

那月「帰省地の住所は?」

中島「いえ、実家はもうなくて・・」

那月「辻褄が合わないな、免許証

 見せて」

   中島、那月に免許証見せる。

中島「怪しいものではありません」

   那月、ヘルメットをとる。

那月「中島太輔君か!帰ってたんだ」

中島「はて、どなたでしたっけ」

那月「西高校の唐船那月(からふねなつき)です」

中島「知らない」

那月「貴方は知らなくても、私は貴方の

 事知ってるわ。元東高水泳部の

 キャプテン、ミスタネガティブ

 中島君でしょ」

中島「どうして知ってるの?僕の事」

那月「唐船蓮也(からふねれんや)から聞いていたから」

中島「唐船・・・先輩の妹さん?」

那月「いえ、伴侶よ」

中島「ええ!?奥さん?先輩に奥さん

 がいたの」

那月「うん。蓮也、2日前にふらっと

 帰ってきて、また出ていったわ、

 ねえ、もうすぐ私仕事終わるから、

 うちで話さない?夜9時には帰って

 るから」

中島「え、いいんですか」

那月「知ってるでしょ、蓮也の家」

中島「はい」

那月「蓮也の両親は、ずっと海外

 だから、うちに今夜泊まるといいよ」

   中島の鼻から鼻血が流れる。

那月「何?具合でも悪いの?」

中島「いいえ」


○唐船家・玄関・外(夜)

   表札“唐船”



○唐船家・玄関・外(夜)

   中島、呼び鈴を鳴らす。扉が

   開く、唐船アタル(10)登場。

   パチンコを持っている・

アタル「おめえ、誰だ」

   奥から、唐船出てくる。

唐船「おお!きたかミスタネガティブ

 中島太輔」

中島「え?先輩、いつここに?なんで

 いるの?」

唐船「9時には俺帰るって、那月に

 言っといたんだけどな?」

   エプロンつけた那月登場。

那月「さあ今日は餃子パーティーよ、

 中島君もいっぱい食べてね」

唐船「太輔の行動パターンなんて俺は

 全部お見通しだ、お前、単純だから、

 絶対うちに来ると思ってたよ。今日は

 餃子パーティーだ、問答無用で

 腹一杯食わせるからな!」

終わり











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ふるさと 鈴鹿 一文(スズカカズフミ) @patapatapanda

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