第12話
迎えの馬車に乗って家を出てから5時間程が経過した。
あたりは豪華な屋敷が立ち並び、馬車が行き交っている。
「ここはもう貴族街なのですか?」
運転手にきくと、はい。と答えた。
「ここはまだ住宅街ではなく、商人の店ばかりです。伯爵家の屋敷はあれらよりも豪華ですよ。」
なんと、これはまだ貴族の屋敷ではないらしい。
とりあえず、今向かっているクラスト伯爵家について確認しよう。現当主のオーグ・フォン・クラストはこの国の宰相をしていて、国王の右腕と呼ばれており、長男のフェイトは仮領主としてクラスト領を管理していて、シスコン。長女のアリナは次期領主と決まっており、俺の婚約者だ。この国の貴族は三つの派閥に分かれており、国王派、貴族派、騎士派だ。クラスト家は国王派に所属しており、国王による専制君主制の政策を支持している。貴族派は貴族院議員による民主制、騎士派は軍国主義の集まりで、出来ている。
それぞれの派閥は争っておらず、それぞれの代表が話し合って政治を行っているので、実質的には立憲君主制だ。
「そろそろですよ。」
そんなことを考えているうちに、1時間などあっという間に過ぎて、もう屋敷に着く頃だ。馬車が止まったのでガラガラと扉を開くと、そこは屋敷というより城だった。これで伯爵家なら侯爵、王族はどれだけすごいのだろう。
見惚れていると、屋敷の方からメイドのような人達が2人ほど歩いてきた。
「「いらっしゃいませ。リョータ様。ご案内いたしますレーゼとリリアンです。どうぞよろしくお願いします。」」
洗練された動きで、挨拶してきた。
そのまま彼女らに案内された場所は、壁一面に本が敷き詰められている図書館のような場所だった。
「ようこそ、当主補佐のカルム・フォードと申します。旦那様が予定を空けられなかったので、代理としてきました。娘の選んだ相手に一言言いたかったとおっしゃっておりました。」
そこで俺を迎えたのは、執事と言ったら日本人の多くが思い浮かべるような姿の老人だった。
「お邪魔しております。リョータ・サトウです。今後とも宜しくお願いします。」
日本式の挨拶をすると、カルムさんは驚いた様子でこう言った。
「これほど礼儀が身についておられるとは想像しておりませんでした。あとは、貴族の言い回しを覚えれば完璧です。」
あれで良かったみたいだ。貴族の言い回しは慣れるまで苦労するのだろうな。
「では早速2日後から始めましょうか。本日は用意されてる部屋で御寛ぎください。」
部屋まであるらしい。豪華だなぁ。
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