第4話
俺の住んでいる街の名前は、カルト王国の、王都カルトラだ。カルトラの北には森が広がっており、南には平原が広がっている。
平原にはダンジョンが2つあり、片方は既に攻略されており、多くの冒険者がそこでレベル上げをしている。
俺が受けた薬草採取のタスクは、アキナ草30本で、銅貨10枚もらうことができる。アキナ草は、そのダンジョンの近くに群生しており、モンスターも出てくるが、比較的採取しやすい薬草だ。
銅貨は日本円にして300円程で、アキナ草30本で3000円近く稼ぐ事ができる。
一般市民の月給は銅貨100枚程で、毎日薬草採取を受けるとすると,その3倍以上稼ぐ事ができる。
危険のある冒険者ならではの金額だ。
そんな事を考えながら薬草を毟っていると、気づくと30本以上の薬草を採っていた。
「グギャギャギャ」
そんな音が聞こえてきたので、振り返ってみると、ファンタジーの定番、ゴブリンが立っていた。
「おわあああ!」
突然の出来事に驚いてしまった。慌てて距離をとると、ゴブリンは俺の叫び声に驚いたらしく、怯んでいた。こんなこともあろうかと、持って来ていたナイフを構えた。
「待てよ、コイツで憑依を試してみてもいいんじゃないか?」
ギリギリで憑依を使って失敗したら洒落にならない。今のうちに試した方がいいんじゃないか?思い立ったが吉日という事で、早速発動してみる。
「『憑依』」
すると、体から何かが抜けていく感覚がして、気づくと視点が変わって目の前に倒れた俺の姿が見えた。
「グギャギャ」
成功だと言おうとしたが、ゴブリンの声が出た。まあ仕方ないだろう。人間とゴブリンでは体の作りが違うのだから。
「『グギャギャ』」
変装と言ったつもりだったが仕方ない。だが、体が変わる感覚はした。
近くの川に行って姿を確認すると、ちゃんと元の俺の姿になっていた。
「こっちも成功だ。」
なんと、声が出た。声まで真似できるなんて、変装スキル様様だ。
これで一安心。早速街に戻ろうとすると、門で止められた。
「ちょっと待て。お前、人間じゃないな。」
なぜバレた。変装のスキルで誤魔化してるはずなのに。
「しかし、人間に変装出来るだけの知能があるはずなのに、お前からはゴブリン程度の気配しかしない。一体何者だ。」
あ、これ説明しなきゃならないやつだ。一体どうしたらと考えていると、聴き慣れた声がした。
「リョータじゃないか。もう採取終わったのか?」
タツヤ兄さんだ。そういえば、門番の仕事をしていると話していた記憶がある。兄さんならうまく誤魔化してくれるはずだ。
「こいつは俺の弟でな、スキルのせいで、こんな風に魔物の体になってしまっているんだ。安全は俺が保証するから通してやってくれ。」
よかった、兄さんなら大丈夫だと思っていたが、それでもやっぱり不安だった。
「ありがとう兄さん。」
そんなこんなあったが、うまく街に入ることができた。
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