エンディングノートのすすめ

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エンディングノートのすすめ

 俺は最近、エンディングノートをスマホのメモに書いている。エンディングノートっていうのは遺書に似たようなものだが、遺書とは全く違って法的な効力は一切無い。ただ、死ぬ前に大切な人に伝えておきたい事を書いたり、思い出を書いたり、死ぬまでの自分の希望ややってみたい事を書きまくって、死ぬまでの時間を充実させたり、そういう側面がエンディングノートにはある。


 エンディングノートの1番の目的は気持ちの整理と、死ぬまでの期間を充実させる事にある。


 病気で死期が近い人とか自殺を考えてる人じゃなくても、明日、飲酒運転の車に轢かれて亡くなったり通り魔に刺されて亡くなるって可能性もゼロじゃない。


 だから生きてる間に伝えておきたいことや、自分が本当にやりたいことっていうのをエンディングノートにまとめておくのは良いことだと思う。自分の願いを文に書き起こしてみる事で初めて自分の真の欲望に気付いたりすることもある。


 ちなみに俺が死ぬまでにやりたいことは、あんまり思いつかないんだけど、色々考えてみた。


 とりあえず、俺はまた彼女を作って幸せになりたい。


 あとかわいい女の人とやりたい。温泉旅館に泊まりたい。大谷翔平の試合をアメリカに観に行きたい。syrup16gのライブにまた行きたい。他のバンドのライブにも行きたい。そのくらいですかね、俺の願いという願いは。


 他には、また就職したいとか、めっちゃ高級なワインが飲んでみたいとか、うまいラーメン屋に出会いたいとか、回らない寿司屋の寿司が沢山食いたいとか、面白いゲームがやりたいとか、あとは妹が幸せな結婚生活を送ってほしいとか、母の誕生日にドライフラワーのリースをプレゼントしたいとか、面白い小説を書きたいとか、もっとギター上手くなりたいとか、書き起こしてみるとキリが無い。


 最近出たマクドナルドの新作も食いたいし、なんだか今は爽やかなフルーツが食いたい気分なので桃とかイチゴとか久しぶりに食いたい。うまいスイーツが食いたい。実家の猫にも会いたい。鬱憤を晴らしにカラオケにも行きたい。パチンコも打ちたい。まだ見ぬ音楽を聴いてみたい。動物園でモルモットのふれあいコーナーに行きたい。めっちゃうまい酒を飲んでみたい。労働で疲れた後のシャワーの後のキンキンに冷えたビールがまた飲みたい。いっぱい酒が飲みたい。女の子とサシで酒を飲んでおしゃべりしたい。面白い小説が書きたい。面白いゲームやりたい。彼女欲しい。また仕事に就きたい。


 俺の願いはこの辺りにしておく。


 自分が死ぬまでに叶えておきたい事をエンディングノートにまとめると、今の自分が何をすれば良いのか明確になり、その先の行動に繋がる。


 精神が不安定な人は特にいつ死んでしまうか分からない側面があるから、エンディングノートを作ってみるのは良いかもしれません。


 欲望の無い人間はいない。自分が死ぬまでに叶えたい事を考えてみよう。


 ◆


 とりあえず俺は夜のドラッグストアに足を運んで、ストロングゼロを2本買ってきた。どっちもレモン味。個人的に俺が1番好きなのは期間限定の青りんご味だったりする。レモンも爽やかでうまいんだが、飲みすぎて飽きた。


 スーパーオリジナルブランドの酒はあまりにもまずい。ストロングゼロがめちゃくちゃ美味く感じるレベルでまずい。


 ストロングゼロ製造工場に見学に行ってみたい。小学生の頃に社会科見学で自動車工場に行った記憶がある。群馬はスバルというメーカーの車の工場が有名だから。まあ俺が乗ってる車はスズキのジムニーですけどね。19歳の頃から27の今までずっと乗ってる。ジムニーで首都高速を300キロで駆け巡りたい。あ、あとバイクの免許も欲しい。それもエンディングノートに加えておきます、か。


 車なんかより、酒とか精神薬がどうやって工場で作られているのかを知りたい。特に精神薬って謎が多い。植物を調合して作ったりするのかな。精神薬の作り方って検索しても、どんな植物が使われてるのかは出てこない。まあ一般人が勝手に薬なんて製造したら法律に引っかかるか。俺の場合は単なる知的好奇心のあれとして、薬の作り方が知りたいだけだ。


 あれだな。ケンタッキーフライドチキンやコカコーラのレシピが誰にもわからないように、精神薬のレシピも誰にもわからないようになってるんだろう。


 薬の作り方について


 ↓


 熱を加えたり冷やしたりながら化学反応をさせ、化合物を造ります。 化合物には色がついているので、活性炭などにより脱色し、ろ過します。 化合物を冷却し、結晶化させます。 結晶の形や大きさが常に同じになるように温度や時間、かき混ぜる速さなどの条件を厳しく管理しています。


 イメージとしては、でかい釜でぐるぐる機械が回って調合される感じなのかな。


 というか、製薬会社の化学者がすごい。めちゃくちゃ頭が良くないと新薬の開発なんて出来ないし、尊敬する。


 個人的には医者もかなり尊敬している。俺は精神科医に10年くらいお世話になっている。ちなみに今は田舎の病院の院長先生が俺の主治医だ。俺の姉もその先生に診てもらっている。すげえ良い先生だから、会ってもらいたいくらいだ。ぽっちゃりした白髪のハゲの優しい先生。性格はめっちゃ優しい。メンタルを診てもらう時、高圧的なタイプな先生だときついと思う。まあ人によるけど。そういう先生が合ってるって人もいるし。メンタル系の主治医の相性が合うかどうかは難しいところがあるわな。医者だって人間だから。


 ちなみに、どの科の医者になるかに関係なく、大学の医学部では解剖実験を行ったりするらしい。


 製薬会社や、医者がいないと俺の生活はあっさり破綻する。


 俺は薬を生産する工場の見学がしてみたい。


 あと、コカコーラの工場の見学もしたい。というかコーラが飲みたい。


 ◆


「精神病院には8年くらい通ってるけど一度たりとも希死念慮を打ち明けられてない。医者相手でも『死にたい』なんてのはそうそう言えるもんじゃなくて、だからみんな自殺するんやなって」


 って言ってる人がネットにいた。


 ちなみに俺は10年近く精神科に通ってるけど、初診の時に「とても死にたいです」と医者に打ち明けた。俺とその人は真逆の性格みたいだな。


 俺はカクヨムにも死にたいとよく書く。はっきり言って今も死にたい。高い所から飛び降りたくて、スポットをネットで探した。そしたら良い橋を見つけた。


 人によっては、自分の弱みをどうしても見せられない性格の人もいる。俺は自分の弱みを見せる事を全く恥ずかしく思わない。他人には本当の気持ちを伝えないと意味が無いと思うからだ。


「死にたい」って言葉はもっと気軽に伝えても良いと思うけどな。死にたいって呟くことで楽になったりするから。


 俺の友達も「死にたい」とツイッターのDMを送りまくってきた。その度に俺は言葉を返していたが、その友達を責めたことは一度もない。


 死にたい奴同士で徒党やコミュニティを組んで、力を合わせて孤独をつないで生きていく。俺はそう言うネットの使い方をずっとしてきた。


 せっかくネット環境があって色んな人と繋がれる現代なんだから、生きづらい奴は生きづらい奴と仲間になって、協力しながら、声を掛け合いながら、生の方向に向かっていくのが1番良いんじゃないかな。


 たまにSNSで死にたい奴らが集まって、集団自殺するニュースが流れるけど、俺は集団自殺なんてクソ喰らえだね。


 むしろ、死にたい奴らで手を取り合って、お互いに相互作用をもたらしながら、なんとかこの苦しい世の中を生き抜いていくんだ。


 SNSには安易に「死にたい」とは書かないほうがいいと思う。なぜなら、死にたい奴を付け狙ってリアルで会って強姦・殺害する事件があったからだ。


 ネットの世界にはどんな奴がいるか分からない。


 まあ少なくとも俺は、今まで死にたい奴らとツイッターとかで繋がって、みんなで楽しくおしゃべりしながら、孤独を繋いで生きてきた。


 これからもそういうふうにネットを使いたいと思う。孤独を繋いで、みんなで生きていきたい。


 弱い奴を叩くためにネットを使うんじゃなくて、弱い奴らと手を繋いで明日を生きていくためにネットを使いたい。


 俺は絶望の中からも希望のかけらを拾い集める才能がある。ジグソーパズルのピースみたいな、何の絵になるかも分からん希望が俺の足元に沢山落ちている。


 ◆


 なんとなく腕をまくると、根性焼きとリストカットの痕でめちゃくちゃになってる俺の両腕が否応なく目に入る。


 俺は今までの人生でどれほど間違ってきたんだろう。それでも後悔は無い。収まるべき場所に人間はなんだかんだ収まる。


 俺は凶悪犯罪者になる才能は無かった。でも神にはなれるかもしれない。酔っている時だけそんなことを思う。俺はキリストや釈迦やアッラーたちと肩を組み、タメ口でおしゃべりする。


 というか、キリストの何がそんなに偉いんだ。貧乏ながらも足掻いて生きてる奴だって同じくらい偉いぞ。


 孤独を繋いで、死にたい奴らが今日も何とか生きていく。今日だけは世界は俺らのもんだ。酒を飲みまくれ。歌いまくれ。めちゃくちゃなフォームで踊りまくれ。笑いまくれ。


 俺の好きなTHE BACK HORNというバンドは、初期は暗い絶望の中でもがく様子を歌にしていたが、ある時から、希望ばかりを歌うようになった。


 つまり、絶望の果てには希望があるってことだ。絶望を知った人は必ず他人に優しくなれる。


 まだまだこんなところで死ぬわけには行かないんだ俺は。


 酒を飲んでタバコ吸ってロックを聴いて、たまに誰かとおしゃべりして孤独を癒して、明日もクソみたいな1日を過ごすだろう。


 俺の髪が寝癖でオールバックになってるわ。大爆発している。龍が如くの春日一番みたいな髪型。こんな姿でドラッグストアに行ってしまった事に後悔は全く無い。


 死ぬためにネットを使うのではなく、生きるために俺はネットを使う。


 俺はカクヨムで知り合った女の人とリアルの世界で会ったことがある。それは一緒に死ぬためなんかじゃない。一緒に生きていくためだ。


 俺のマインドは常にそこにある。


 勘違いしてもらっちゃ困るな。俺は死にたいなりに、なんとか生き抜く方法を毎日のように模索している。


 今より少しでも幸せになるためにエンディングノートも書いたりした。


 俺たちは一つになれると信じている。国家規模で一つになることは出来ないと思うが、それでも、死にたい奴らが一つにまとまって光の射す方へ向かうことはできると思う。


 明日を求めて。朝日を求めて。


 あなたの涙が落ちる。その涙が乾いてしまう前に、俺はあなたに会いに行きたい。


 本当はめちゃくちゃ生きたいのに、脳が勝手に俺を死にたくさせる。嫌になることもある。ガチで死にそうになる時もある。


 でも俺は負けたくない。単純な話。負けたら悔しいからだ。


 あなたがいるなら俺は何度も生きよう。


 死にたいあなたの手を引っ張って、絶対的な鎖で繋がって、明日へと向かいたい。生き抜く術をなんとか探すんだ。







 終わり

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