第21章 嵐の前触れ⁉️
「あ〜あ、また スピカ君からもらった飴 捨てられちまったよー❗️」 今回も大事に取っておいたのど飴を舐め損なって、子供みたいに口を尖らせている 紀矢(のりや)。
「わりい、悪かった。 たのむから、そんなに恨めしそうな目で 見るな」
冗談混じりに詫びてから、加藤先生・アンタレスは すぐ 真顔になって続けました。
「みんな よく聞いてくれたまえ。 さっき時間を巻き戻した映像で スピカが煎じて 飴に混入していた果物は、『ジェッターアップル』といって、アンバランで生育している樹木の実なんだ。 見た目は りんごに似ているが、切ってみると 中身も皮と同じ朱色で、染め物や クレヨンの材料に使われているのだが、毒を含んでいるため、食用には向いていない」
「毒だって!?」
思わず叫んだ紀矢たち三人の声がハモりました。
「・・・ああ、そうか。 だからあいつは、毒が どうのこうのって言ってたんだ」 昨日からずっと胸にひっかかっていた事が、ひろみは ようやくはっきり理解できました。
「っていう事は、徹(とおる)は スピカ君からもらった飴を 毒入りだと知らずに舐めて、倒れたって事か?」 紀矢は、なんだか背中が ゾクゾクしてきました。
「でも、ちょっと待って。 スピカ君、色々な人にのど飴あげてるのよ。 隣のクラスの人とか、先輩とか。 そういえば、お掃除のおばちゃんも『あたしも もらっちゃったわよー❗️』って、今日 自慢してた。 でも、徹君以外 誰も具合が悪くならないのは なぜかしら?」
「ああ、そうだよねえ。」
彩野(あやの)が気づいた新たな謎に、顔を見合わせて 首を捻る 紀矢と ひろみ。
「ジェッターアップルの毒は、のど飴に入れたぐらいのわずかな量なら 命に危険はないんだ」
「なあんだ、よかった」
アンタレスの説明で、胸を撫で下ろす三人。 ところが、
「ただ、この毒には 人を自由自在に操る力があり、少しずつであっても食べ続ければ、たとえ まがった事でも なんでも他人の言いなりになってしまう。 だから、食べてはダメなのだ」
想像もつかないほど恐ろしい事実を アンタレスから聞かされて、みんなは ぞっとして 固まってしまいました。
「先生、私、怖い。 そういう恐ろしい物を入れた飴を 学校中の人に食べさせて、スピカ君 いったい何を企んでるのかしら? 私、スピカ君が だんだんわからなくなってきました」 彩野の目は、怯えています。
「まだ決めつける事はできぬが、たぶん秤高(びんこう)(天秤高校の事)のみんなを味方にして、バタンキュラーの活動に協力させようとしているのであろう」
「なんだって!? 色男で、勉強できて、愛嬌もあって、メチャいいやつだと思ってたのによー。 そんじゃあ、男子会を企画して 盛り上がったのも、おいらたちを信じ込ませて 族の仲間に引っ張り込もうって 作戦だったのかよ」 悔しそうに 両手をギューっと握る紀矢。
「ねえ先生、直ちにビスケット(?)に変身して、スピカ君に お灸を据えてやりましょう❗️ 1bの仲間の徹を あんな危険な目に遭わせるなんて、許せません」 思わず 一歩前に進み出て、ひろみが訴えました。
「ちょっと待った❗️ 落ち着いて聞いてくれたまえ。 はやまっちゃダメだ」 アンタレスが、両手を前に出して止めました。
「え! どうしてですか!? 先生、うちらの学校が バタンキュラーに乗っ取られても 平気なんですか?」 ひろみが アンタレスに詰め寄りました。
「そうではないんだ。 スピカが ジェッターアップルのエキス入りの飴を なぜ皆に配っているのか? それと、平田君が倒れる直前に 間違いなくそれを食べたのか? 仮に食べていたとしたら、なぜ彼だけが 毒に当たってしまったのかを、慎重に調べるほうが先だぞ」
「ああ、そうか。 徹が倒れた時、うちらビスケットのメンバーは、誰もそこにいなかったもんね。 ねえ 紀矢君、あの日 男子会に参加してたの 、あんたと 徹と スピカ君以外に誰がいたの?」
ひろみが つつっと歩み寄って 尋ねました。
「ええっと、a組の山川君と、c組の伊藤君だよ。 そうか、あの二人なら きっと、カラオケで 徹がどんなおやつを食ってたか 覚えてるかも知れねえ。 なんなら、おいらから 山川君たちに訊いてみるよ」と、紀矢。
「そうか。 そのほうがいいな。 先生である私があれこれ聞き出そうとするより、仲間内のほうが話しやすいかもしれぬ。 それでは石井君、聞き取りは任せたぞ」
アンタレスが、紀矢の前に来て、肩をポンと叩きました。 すると、紀矢は 得意そうに
「わかりました。 合点承知❗️」
と、胸を叩いてみせました。
「あとは、毒入りの飴を どうしてみんなに配ってるのかを、スピカ君にどうやって聞き出すかだよねえ。 きっとまともに なんで? って訊いても、ほんとの理由なんか言わないよね」
「うーん・・・」
ひろみが投げかけると、誰もが首を捻り、考え込んでしまいました。
〜つづく〜
「ファンキー・ビケット」次回のお話は?
どうもどうも。 またまた紀矢様のお出ましだい❗️
さてと、おいらは 早速カラオケで一緒だった山川君たちに、途中でおいらが けえってからの 徹の様子を聞こうとしたんだけんど、なんかあの二人、おかしな事を言い出したんだよな。
なあ、おまえさんたちも スピカから キャンディーもらった事 あるはずだせ。
第22章 心変わり
で、また会おうぜ❗️
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