第7章 勝ったのは どっち?
「アンタレスさーん、あたいも助っ人します!」
「ありがとう。 すぐ ブーメランを両手で握って、ブーメランの裏に刻んである言葉を言って」 アンタレスが、悪党共と 剣を交えながら ひろみに指示しました。
「え? 言葉って、このアルファベットのこと?」
ブーメランの裏側には、まだ英語の授業にも出てきた事の無い 謎の単語が 並んでいます。
「さあ、早くして! ブーメランを 剣に変えて!」
今は、非常事態。 急がせるのはわかるけど、ひろみは 英語が苦手。 スペルを見ただけでは、読み方がわかりません。
「あ、そうだ!」 ひろみは、彩野(あやの)の所に駆け寄りました。
「ねえねえ、ブーメランを両手で握って、裏に書いてある言葉を言うと、そのブーメランが剣になるらしいんだけど、英語の読み方がわかんなくってさ。 彩ちゃん、何て読めばいいかわかる?」
「え、もしかして これ? ええっと・・・」 英語が大好きな彩野も、初めて見る言葉です。
「たぶんだけど、『スピーム ビケッター』」
自信無さそうに 彩野がその言葉を読むと、ひろみと 彩野、それから紀矢(のりや)が持っているブーメランが、いきなりピカッ!と光って、アンタレスたちのと同じ 立派な剣に変わりました。
「すっげえ! こいつ、こうやって 使うのかあ!!」 紀矢が、感心した顔で 剣を眺めていると、そこへ・・・。
「突っ立って 見物してられるのも、そこまでだ。 食らえ!!」 バタンキュラーのリーダーの 背の高い王子が、大きな剣をかざして、紀矢たちを襲ってきました。
「やべえ、逃げろ!」 剣を持ったまま逃げだそうとする紀矢を、
「ツカ(ツカポンタンの事)! うちらは、日本の平和を守る正義のヒーローなんだよ。 ヒーローが敵から逃げて どうすんのさ」 慌てて ひろみが後ろから紀矢の腰に腕をまわして、引き留めました。
その時、紀矢の顔めがけて、王子が剣を振り下ろそうとしてきました。
「やめて!」 気づいた彩野が とっさに両手を伸ばして、王子の大きな剣をつかみました。 でも 「痛い!」 すぐに手を離してしまいました。
「ばっ、ばか! 直に刃なんか持つんじゃねえ!!」
いつもは、紀矢がやらかして 彩野に注意されるけど、今回は 彩野が 紀矢に怒られてしまいました。
「てめえ!」
王子は、今度は 邪魔に入った彩野に斬りかかろうとしてきました。
「彩、どけ!」 紀矢は、肩を押して 彩野を脇によけると
「やい、ヤンキー王子! 女を狙うやつぁー 許せねえ。 この『ファンキー・ビケット1号様』が たっぷりお灸を据えてやるぜ」
さっき逃げだそうとしていた時とは 別人のように、王子をひょいと背中に乗せたかと思うと、思いっきり投げ飛ばしました。
「す、すげーえ! 紀矢君、いつの間に格闘技 覚えたの!?」 ひろみが、口をあんぐり開けています。
「そんなの 習った事 ねえよ。 ヒーローに変身したおかげで、勝手に体が動いたみてえだな」 ちょっと得意げな紀矢。
一方 アンタレスは、王子の六人の子分共と まだ戦っている最中でした。
相手は、六人。 こっちは、一人。
さすがは 世界中のニュースで悪行が伝えられている族だけあって、かなり剣の腕も達者です。 アンバランの王族として 子供の頃から 剣術を教え込まれていたアンタレスも、だんだん疲れてきて、危なくなってきました。
「あ!」 眼鏡の男の攻撃をよけようとした時です。 思わず足がもつれて、アンタレスが転んでしまいました。
「チャンス!! おまえら、セジャを縛って、連れてこい」
紀矢に投げ飛ばされて 尻餅をついた所をさすりながら 王子がこちらへ やってきて、子分共に命令しました。
「そうは させないよ!」
ひろみが、起き上がろうとしているアンタレスと バタンキュラーたちの間に さっと割り込んで、通せんぼをしました。 男共は おこって、左右に広げたひろみの両腕を捕まえました。 そして「1、2ーの 3!!」で、ひろみは 思いっきり投げ飛ばされてしまいました。
「大変! 大丈夫!?」
尻餅をついて のたうち回っている ひろみの所に、駆け寄る彩野。
「いててて。 あ、だいじょぶ、だいじょぶ。 あたい、ヒロインだから。 へへへ」 尾骶骨(びていこつ)の辺りを右手で押さえながら、なんとか笑ってみせる ひろみ。
「でも、すごく痛いっていう顔してるよ。 おしりにヒビとか 入っちゃってなきゃいいんだけど」
「平気、平気。 それより、アンタレスさんが捕まっちゃう」
その間にアンタレスは 無事に起き上がって、紀矢と二人で バタンキュラーと戦っていました。 ひろみが おしりをかばいながら立ち上がって 行こうとすると、
「ダメ、無理しちゃ! ひろみちゃんは、休んでて」 そう言って、彩野は 急いでチャンチャンバラバラの中に加わりました。
「くっそお、三匹に増えやがったか。 めんどくせえ。 こうなったら、奥の手だ!」
それまで 子分共と アンタレスたちの勝負をじーっと見ていた王子が、グレーの戦闘服のポッケからあのブーメランを出して 「スピーム バタッチャー」と唱えると、両手で握りしめたブーメランが ピカッ!と光りました。 すると けたたましい羽音と一緒に、数え切れないほどの雀蜂が ブーメランから飛び出してきました。
「行け!」
王子が アンタレスたち ファンキー・ビケットの方を指さして 命令すると、蜂共は 一斉にビケットのメンバーめがけて飛んでいきました。
「キャー!」 蜂に驚いた彩野が、悲鳴を上げて逃げ出しました。
「やばい、刺される!!」 紀矢とひろみも、慌てて彩野に続きました。
「騒いだらダメだ! みんな落ち着くんだ!」
アンタレスの指示する声も、雀蜂の大群の羽音で 聞こえません。 あちこち逃げ回る紀矢たちに ますます気持ちが高ぶって、蜂共は しつこく三人を追いかけてきます。
「このままじゃ 危ない」
アンタレスが、持っていた剣をブーメランに戻し、蜂の大群めがけて投げつけました。 ブーメランは、青白い光の粒を噴射しながら、雀蜂共を百匹・千匹・五千匹・・・と 退治していきました。 ブーメランが命中した蜂共は 次々と道路のアスファルトに墜落して、金色の光を点滅させて 消えてしまいました。
「ヤッタ、ヤッタ! ビケット 勝ったぞ-!!」 紀矢が、小さな子供みたいに飛び上がって 喜んでいます。
と、そこへ どこからやってきたのか 青白く光る大蛇が現れて、紀矢に 一瞬のうちに巻き付いたかと思うと、あれよあれよという間に 飲み込んでしまいました。
「の、紀矢君!」
助ける間も無く、ひろみと彩野も あっという間に蛇の餌食になってしまいました。
「あめえよなあ、人間のガキらはよ! でけえ口 たたいてたけど、簡単に片付いたぜ」 手をたたいて、得意顔のバタンキュラーのリーダー。
「スピカ、大蛇もおまえが・・・」
そう言っている間に、アンタレスも 紀矢たち同様 蛇に締め上げられ、飲み込まれてしまいました。
〰つづく〰
「ファンキー・ビケット」 次回のお話は?
こんにちは、このお話の作者で,ナレーターの城ヶ崎です。
ほんとは、予告のコーナーは キャラたちが代わりばんこに担当するんだけど,戦士たちは 食べられちゃったし,徹君は 帰っちゃったので,今回は,私が しゃしゃり出ちゃいました。
さて、バタンキュラーのリーダーが ブーメランで出した大蛇に 食べられて,ひろみが念じたsosが、家路を急いでいる 徹に届きます。 徹ときたら、真夜中に来たメールを ひろみのいたずらと思い込んで,スマホの電源を切ってしまいました。
ビケットたちと共に蛇の餌食になった アンタレスは,ブーメランを外に置いてきてしまい,どうする事もできません。
もうこれで、チーム・ビケットは 命がおしまい⁉️
第8章 助けて❗️
どうぞご覧ください。
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