第6章 いきなりかよ❗

東洋と 西洋の境目に有る小さな国「アンバラン(この物語の中 オリジナルの国。 世界地図を見ても 無いよ)」を乗っ取り、世界のあちこちに逃亡した族を探し出して、一緒にやっつけてほしい。

全く知らない人が 突然そんな無茶ぶりをしてきたら、あなたなら どうしますか?


緑色の髪の毛と瞳の 謎の外国人アンタレスからの とんでもないお願いに、のりのりでオッケイの紀矢(のりや)・ひろみ・彩野(あやの)の三人を、徹(とおる)が慌てて引き留めました。

「みんなさ、落ち着いて よく考えて。 アンタレスさんが 一緒に戦ってほしいって言ってる相手は、テレビに出てくる敵キャラなんかじゃなくて、王様を人質にしてまで 国を乗っ取ろうとするような 恐ろしい連中なんだよ。 大人でも手に負えない相手なのに、まだ15歳の僕たちには無理だよ」

「そんなに神経質にならなくても大丈夫だよ。 私、先週で16になったから」 臆病者の彩野だけど、この話に関しては へっちゃらなようです。

「ねえ 彩ちゃん、そういう問題じゃないんだって。 今は、そうやって ふざけてる時じゃないでしょ! もっとまじめに聞いてよ」

彩野は からかっているのじゃなく、たまーに天然なだけなのです。 徹も、よく承知しているはずなんだけど、なぜか今夜は 虫の居所がわるいようで、きつーく言い返してきました。

「ご、ごめんなさい。 違うの。 私、ふざけてない」

普段は四人の中で一番しっかりしていて、穏やかなはずの徹に 強く言い返されて、彩野が しくしく泣き出しました。

「彩ちゃん、泣いてないで 僕の話をちゃんと聞いてよ。 『バタンキュラー』と戦って 日本の平和を守るっていうのは、捨て犬を保護するとか、町のゴミ拾いをするとかみたいな 簡単な話じゃないんだ。 危険がいっぱいなんだよ。 15から16になったからできるとか、大人なら大丈夫っていう問題じゃないんだって。 彩ちゃん、それもちゃんと考えたの!?」 今夜は、めそめそする彩野にさえ なぜか腹が立って、徹は 頭ごなしに捲し立てました。 彩野は、もう何も言い返せず、涙をこらえる事もできず、うつむいたまま 黙り込んでしまいました。

「なあ 徹、いくら何でも、彩に当たるんじゃねえ」 見ていられなくなって、紀矢が 徹を戒めました。

「当たってなんかいないよ! ねえ みんな、なんで こんな大事な事、簡単に返事するのさ? おもしろがって やりたがってるとしか思えないよ。 もっとさ、まじめに考えなよ!」 今度は、仲間たち全員に向かって、子犬みたいに キャンキャン吠え立てる徹。

「徹。 わかったからさ、もう少し静かに話そうよ。 いちおう 夜中なんだからさ。 彩ちゃんは、いつも『強くなりたい。 泣き虫を直したい』って言ってるんだよ。 あたい、中学校からクラスが一緒だったんだけど、その時のクラスの女子の中に意地の悪いグループがいてさ。 彩ちゃん すぐ泣いちゃうから、ターゲットにされてたんだ。 だから戦隊ヒーロー・・・そうか、女子の場合は ヒロインだったね。 戦隊ヒロインになれば、きっと自分を変えられるって思ったんだよ。 ね、彩ちゃん」 ひろみが、なんとか徹にわかってもらおうと 静かに訳を話して、「そうだよね」というように ポンと 彩野の肩をたたきました。 静かにうなずく彩野。

「紀矢君も、ひろみちゃんも、みんな彩ちゃんの味方だね。 僕は 『チーム ファンキー何とか』には入りたくない。 だから、このまま家に帰るよ。 みんな頑張れよ。 じゃあ、さようなら」 徹は そう言い残すと、みんなに背を向けて すたすた歩き始めました。

「ねえ 君! まだビケットのままだぞ。 変身を解かなくていいのかい?」

慌てて アンタレスが追いかけたけど、徹は 気づいていたのか、気づかなかったのか、さっさと行ってしまいました。


「アンタレスさん、すみません。 あいつ、普段は 滅多に怒らなくて 優しいやつなんだけど、なんか 一度言い出すと聞かないんですよ」 ひろみは、徹の代わりに 頭をぺこぺこ。

「いいんだ。 いきなり会った知らない大人から あんな不躾な事を頼まれたら、警戒して 断るのは 当たり前だからね。 ところで、どうしてわざわざ 君が徹君の代わりに謝るのかい? 似てないから、双子の兄弟ではなさそうだが?」

「ああ・・・たしかに そうですね。 へへへ」 ひろみが、恥ずかしそうに 笑ってごまかしていると、紀矢が

「お兄さん、ひろみは 徹の彼女なんです!」

「ばっ、ばかっ! 余計なこと 言うな、デブ」 ひろみが デコピンをおみまいしようと 手を伸ばすと、「うわあ、やべえ!」と、紀矢が逃げ出して、追いかけっこが始まりました。 「やだ もう! 子犬が追いかけっこしてるみたい。 やめてよ、おかしいよ」 さっきまで泣いていたカラス・・・いいえ、彩野が、涙を流しながら笑っています。

「ハハハハ! 君たちは、本当に仲がいいんだなあ。 うらやましいぞ」 アンタレスも、目を細めて 笑いました。

その時です。

ゴー、ブーン。 ブルルーン!

東の空の辺りから、ジェット機とは別の けたたましい爆音が こちらへ近づいてきて、みんなの頭上から シュシュシュシュッ!と 数本の金色の筋のような物が、降ってきました。

「危ない、どくんだ!」

アンタレスのとっさの指示で、紀矢たちは 一斉に ぱっと飛び退きました。 降ってきたのは 金色に光る数本もの矢で、そのまま地面に落ちたとたん、ちかちか点滅して消えました。


「おい くそ兄貴! 日本にまで 追いかけてきやがって、また うちらの邪魔する気かよ」

大型バイクのような爆音と一緒に、空中から ハスキーな 若者の怒鳴り声が聞こえました。 紀矢たちが 見上げると、バイクのライトのような光が七つ、こちらに向かって下りてくるのが見えました。 すぐ側まで下りてきた時、街灯のあかりで それらの正体がよくわかりました。

それは、アンタレスがさっき乗ってきた物よりも一回り大きな バイクのライトでした。 後ろ側に付いている翼の飾りは 白ではなく、カラスのように真っ黒でした。

その空飛ぶバイクでやってきたのは、真っ黒いヘルメットをかぶり、背中に真っ黒い翼の飾りが付いた グレーの戦闘服をまとった、七人組の男でした。


「現れたな、バタンキュラー! おかげで、おまえたちを探す手間が省けたぞ。 いいかげん 自分たちの王国を作ろうなんて ばかな考えはやめて、アンバランの市民の幸せのために 働いたらどうなんだ」

先ほどまでの優しそうな顔だったアンタレスが、怖ーい目で グレーの男共をにらみつけて言いました。

「うっせえ! てめえのお説教なんか 聞き飽きたぜ。 顔を見りゃあ、同じ事ばっか言ってきやがって。 ああ、うざ! セジャ様なら セジャ様らしく 宮廷にけえって、きれいな花でも眺めて寝てろ、このやろう」 七人組の中で 一番背の高い若者が、一歩前に進み出て、空の上から怒鳴った時と同じ ハスキーボイスで アンタレスに向かって捲し立ててきました。 「もしかして もしかすっと、この人たちと 戦うって事か?」 男たち、バタンキュラー一味に聞こえないように、小声で紀矢が女子たちに言いました。

「そうみたい。 どうしよう、なんか すごく強そう」 彩野の体は、小刻みに震えています。

「ねえねえ、セジャ様とか 言ってたよね? って事は、アンタレスさんは アンバランの皇太子で、人質にされてる王様たちは、アンタレスさんの 親ってこと?」

ひろみが 最後まで言い終わるか 言い終わらないかのうちに、

「相変わらず 物わかりの悪い弟だな」

「わかんねえのは、どっちだよ。 おい おめえら、こいつは、もうおれの兄貴でも、セジャでもねえ。 今日こそ 決着をつけるぞ。 おれが許すから、アンタレスをたたんぢまいな!」

「へい!」

アンタレスの弟の王子と思われる若者の号令で、バタンキュラーたちが いつの間に用意していたのか 大きな刀を振り上げて、アンタレスに襲いかかってきました。


「ウッヘエ! いきなりかよー! まだおれたち、名乗りポーズも やってねえのに」

「あんたねえ、こんな時に よくそんな のんきな事 言ってられるねえ。 ホラ、あたいたちも応援しないと、アンタレスさん 負けちゃうよ!」

ひろみが、紀矢の青い戦闘服の袖を引っ張ると、何を勘違いしたのか

「フレーッ、フレーッ、アンタレスーッ!!」

いきなり 応援団のパフォーマンスを始める紀矢。

「ツカポンタン! 応援ってえのは そっちじゃなくて、ファンキー・ビスケット(?)として 一緒に戦うって事なの! 行くよ、みんな」 ひろみは そう言って、チャンチャンバラバラの人だかりの中に 飛び込んでいきました。

〰つづく〰


 「ファンキー・ビケット」 次回のお話は? 

 みんな、いつも応援ありがとな! 紀矢だよ。

 

 とうとうバタンキュラーとの 戦闘シーンの登場だってのに、徹のやつ、さっさと帰っちまうんだもんなあ。 

 ヒーローっていっても うちらは ど素人で、ファンキー・ブーメランの使い方もわかんねえし、必殺技も持ってねえ。 これじゃあ 戦士の方が敵にやられるー! 

 はたして チーム・ビケットは,逆賊のバタンキュラーを やっつける事ができるのか? 


 第7章 勝ったのは どっち? 

 超ヤバい名シーンを 見逃さないでくれよな❗️

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