第5章 「チーム ファンキー・ビケット」
「えーっ、何だって!?」
緑の髪の毛の若者の 爆弾発言に、思わず叫んだ徹(とおる)たちの声が ハモりました。
「嘘だと思うなら、おうちに連絡してみてごらん。 お母さんは たぶん、『うちの子は、とっくに帰ってきてます』って言って、相手にしてくれないと思うよ」 まるで どこかで見ていたかのように、若者が さっき四人が 家に電話した時の模様を 言い当てました。
「うっそー! なんで、あたいたちが 親から『おれおれ詐欺扱い』されたの 知ってんのさ!?」 いつも ちょっとやそっとの事があっても へっちゃらなひろみが、思わず ぞーっとして 後ずさりしました。
「じつは ちょっと訳があって、みんなの家に 影武者を送ったんだよ。 帰りが遅くなっても、家族が心配しないようにね」
「そうか。 今夜おこった奇妙な出来事は、みんなお兄さんの仕業だったんだね!? 花火でうちらの気を引いといて、得体の知れない道具で脅したり、勝手に姿を変えたり、家に帰るのを邪魔したり、いったい うちらが 何したって言うのさ? ねえ、うちらを誘拐するつもりなら 警察よぶからね!!」
みんなに迷惑をかけているくせに 平気な面の若者に、イラッときた徹。 相手が年上なのも忘れて、ため口で詰め寄りました。
「ちょっとタンマ! 『呼ぶからね』じゃねえ。 お兄さんは、大人だぞ」 紀矢(のりや)が、徹の肩を引き寄せるようにして 耳打ちしたけど、
「わかってる。 ちょっと黙っててよ」 と、払いのけられてしまいました。 こうなると徹は、もう人の話を聞きません。
「待ってくれたまえ!」 ポッケからスマホを出して 110番しようとした徹の手を、若者が 慌てて押さえました。 「私が 無理矢理にやり過ぎたな、申し訳なかった(頭を下げる)。 だけど、どうしても みんなにこれを渡して、大事な話をしなければならないんだよ。 終わったら、ちゃんと全員家に帰らせる。 誘拐したりしないから。 だから、10分・・・いや、せめて5分だけ 残っててもらえないだろうか?」
緑色の瞳で 真っ直ぐ徹たちを見ながら、若者は 懸命に頼みました。
「それじゃ、僕は 110番しないから、そっちから 先に手を離してよ」
「あ、そうか、わかった」 若者は、徹から手を離してくれました。 それから 持っていた四つのブーメランを、一つずつ徹たちに渡して、静かに話し始めました。
「みんなに渡したブーメランは、『ファンキー・ブーメラン』という名前で、笑顔と友情の妖精『ビケット』が持っている道具なんだ。 私は、蠍座の主星と同じ名前で、アンタレスというものだ。 世界中を騒がせている悪のグループ『バタンキュラー一味』で有名になった 『アンバラン』出身なんだが、・・・」
ここまで話した時、
「ああ! アンバランのニュース、今日の夕方もテレビでやってた。 たしか 内乱がおこってて、王様と 王妃様が 人質にされちゃったって言ってた」
ひろみが、突然割り込んできました。
「もう、ひろみちゃんたら。 最後まで ちゃんと聞いてなきゃダメじゃない」 彩野(あやの)が、慌てて ひろみをつっつきました。
「ハハハッ! もうそんな事まで ニュースで報道されてたのかあ。 だったら、いちいち細かい話は しなくても大丈夫だね」 アンタレスは 高らかに笑って、再び真顔で 話を続けました。 「じつは、そのバタンキュラー一味が ヨーロッパや アジアのあちこちに ちりぢりに逃亡して、この日本にも 潜り込んだらしい。 そこでお願いなんだけど、私と一緒に『チーム ファンキー・ビケット』として その連中を探し出し、世界平和を守ってほしい。 そういうわけで 君たちには、ブーメランの力で ビケットに変身してもらったんだよ」
今 会ったばかりの見知らぬ人から、突然こんな大変なお願い。 徹たちは、「ねえ、どうする?」というように 顔を見合わせました。
誰もが じーっと考え込んでしまうと思いきや、
「ハイハイ ハイハイ! おいら、やります!!」 紀矢が、勢いよくジャンプして 手を上げました。
「あたいも やりたい! テレビの戦隊ヒーローみたいで、かっこいいじゃん」 「すいません、私も」 紀矢につられて、ひろみと彩野も 申し出ました。
「ねえ、みんな ちょっと待って!」 それまで 腕組みして考え込んでいた徹が、両手を前に出して 仲間たちを止めました。
「え?」 いったい何なのさ?というように、仲間たちは一斉に 徹を見ました。
〰つづく〰
「ファンキー・ピケット」 次回のお話は?
こんにちは。 謎の外国人,アンタレスです。
私もそうであったが、思春期とは ちょっとした行き違いでも 癪に触るもので,ピケットに変身した四人のうちの一人が,臍を曲げて 去っていってしまいます。
そこへ、黒い翼のついた 大型バイクに乗った連中が,彼と入れ替わるように やってきます。
ここから この物語の雰囲気が変わり始めます。
第6章 いきなりかよ❗️
楽しみにしてくれたまえ。
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