第4章 怪しい人
「ヤベエ! 母ちゃん すっかり怒っちまって、シカトされちまったよ」 途方に暮れて、紀矢(のりや)がつぶやきました。
「でも、おかしくなーい? あたいたちは まだ全員帰る途中なのに、『うちの子は、とっくに帰ってきてますよ』なんて。 本人が電話してるのに わかんないのかなあ?」 ひろみが 首をひねりました。
「うちのお母さん、ぼけちゃったのかしら?」
彩野(あやの)が 心配そうに顔を曇らせた、その時です。
「君たちの母上は、ぼけてなんかいないよ!」
帰り道を急いでいる四人の後ろの方から、若い男性の声がしました。 何だろう?と みんなが立ち止まって振り返ると、大きなバイクに乗った見知らぬ若者が近づいてきて、徹(とおる)たちに追いつくと バイクから降りてきました。
そこは ちょうど街灯の下だったので、その人のかっこうが よくわかりました。 年は、みんなより10歳くらい上、25~6歳くらいでしょうか? 徹たちと同じように、白いヘルメットに 青い戦闘服で、背中と 乗ってきたバイクの後ろには、白い翼の飾りが付いていました。
「いやあ、やっと会えた! (かるくお辞儀をして)どうも どうも、初めまして。 みんな ブーメラン持たないで行っちゃったから、僕のブーメランが 電波 拾わなくてさ。 探すの大変だったよ」
深い緑色の優しそうな瞳で にこにこ笑いかけながら、若者が みんなに挨拶してきました。 それから リュックサックを下ろして、徹たちが 河原に投げ捨てたはずの、あの光るブーメランを取り出しました。
「キャッ!」 ブーメランを見たとたん、彩野は悲鳴を上げて、隣の紀矢の肩にしがみつきました。
「ちょっと ちょっと、何するんですか! 女を怖がらせるやつぁー許せねえ」 一歩前に進み出て 啖呵を切った紀矢だけど、膝ががくがく震えています。
「すみませんけど、僕たち 家に帰るところなんです。 さようなら。 みんな、行こう」 徹が、紀矢たちを促して 歩き始めると、
「ねえ、ちょっと待って! ごめん、怖がらせるつもりじゃなかったんだよ」 若者が、慌てて ブーメランを持って 追いかけてきました。
「お兄さん、そのブーメラン形のおもちゃ、気味の悪い光が出てきて 危ないですよ。 さっさとどこかに 捨てちゃった方がいいですよ」 余計なお世話かな?と思いながらも、ひろみが若者に忠告しました。
「ああ! あの青白い光だね。 あれは かなりまぶしくて、渦を巻いたり、わーっと広がって うねうね動いたりするけど、体に浴びても 害は無いんだよ。 驚かせてすまなかったね」
若者は、丁寧にヘルメットを脱いで、徹たちに頭を下げました。 この人の髪の毛も、変身後の徹たちと同じく 緑色をしていました。
「『驚かせてすまなかった』って・・・。 じゃあ、突然上がった『これあげる』の花火の文字も、その後 空から 不気味な物が降ってきたのも、もしかして もしかすっと 全部お兄さんのヤラセだったんか?」 紀矢が体をのりだして尋ねると、
「うん、そうだよ 」 若者は、うなずいて答えました。
「あの すいません、そのブーメラン 怖いので、しまってほしいんですけど」 おそるおそる横目で見ながら そーっとブーメランを指さして、彩野が若者に頼みました。
「それは かまわないけど、うーん、でも困ったなあ。 ブーメランは、君たちに渡そうと思って 持ってきたんだけど」 若者は、四つの光るブーメランを 両手に抱えたまま、困っています。
「あ、あの、ごめんなさい。 私、まにあってます!」 こんな とんでもない物を押しつけられては大変!と、彩野は 慌てて断りました。
「ミー トゥー(あたいもです)!」 ひろみが、両手で 罰点を作りました。
「おいらも まにあってますので、わりいけど 他 当たってもらえませんか?」 紀矢も 手を顔の前で横に振って、「ダメ!」のジェスチャーをやってみせました。
「そういうわけなので、せっかくだけど 受け取れません。 もう夜中だから、早く帰らないと。 それじゃ、お休みなさい」
徹は、ヘルメットをとって 若者に挨拶してから、「行くよ」と仲間たちに手招きしました。
「ねえ、みんな待って!」 四人が歩き出そうとすると、若者が またも呼び止めました。 「今 おうちに帰っても、お母さんたちは 入れてくれないよ「
〰つづく〰
「ファンキー・ピケット」 次回のお話は?
皆さん,ご機嫌いかがですか? 彩野です。
私たちの前に現れたのは,クーデターが起きている小さな国から 来日してきた,アンバラン人でした。
今 出会ったばかりの私たちに,その男性は、普通では考えられないような 頼み事をしてきます。
いったいそのお願いって?
そして もしあなただったら、引き受けますか? 断りますか?
第5章 「チーム ファンキー・ピケット」
で、お会いしましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます