第3章 やっと会えたのに
姿は変わってしまっていたけど、お互い無事な事がわかった徹(とおる)たち。
「あっ、そうだ! 彩(あや)たちは、どこだろう? 隣町から ずーっと川沿いを戻ってきたけど、どこにも見当たんなかったぜ」
ふと思い出して、紀矢(のりや)が言いました。
ほっとしたのもつかの間。 まだ ひろみと彩野(あやの)の女子二人がみつかっていないのです。
「そうか。 隣の町の方にもいなかったんだな。 僕、ひろみちゃんに電話してみるよ」 徹が、戦闘服のズボンのポッケから スマホを出すと、
「じゃあ おいらは、彩の携帯にかけてみるよ」 紀矢も、おそろいの戦闘服の上着のポッケから 自分のスマホを取り出しました。
「徹! 無事だったの!? よかったー!!」 徹からの電話に出るなり、嬉しそうな 元気いっぱいのひろみの声が 返ってきました。
「よかった。 ひろみちゃんも無事だったみたいだね。 今どこにいるの?」 徹が尋ねると、
「水瓶座寺(みずがめざでら)のお庭の 水瓶桜(みずがめざくら)の木の下。 彩野ちゃんも一緒だよ」 弾んだ声で、ひろみが答えました。
一方、紀矢からの電話に出た彩野は、「紀矢君・・・」と名前を呼んだきり、男子たちと同じく深緑色になっている 大きな瞳から わあっと涙があふれ出て、何も言えなくなってしまいました。
「おい 彩、でいじょうぶか? どこか痛いのか??」
突然泣き出した彩野の しゃくり上げる声に、紀矢はスマホを耳に当てたまま、 おろおろ。
「彩ちゃん、大丈夫だよ。 紀矢君と 徹も いったん はぐれちゃってたらしいけど、今 みんなで花火やった所より川上の方に一緒にいるんだって。 これから二人で お寺まで迎えに来てくれるって、徹が言ってくれたからね。 もう大丈夫だからね」
徹から話を聞いたひろみが、彩野に優しく声を掛けているのが、徹の携帯からも、紀矢の携帯からも聞こえてきました。
「それじゃ、今から向かうね」 「もしもし、動かないで 待っててくれよな」
徹と紀矢は、電話が終わるや土手を駆け上って、バス通りを 隣町方向へ走っていきました。
女子たちがいる「水瓶座寺」は、隣の獅子座町(ししざまち)との境の近くに有るお寺です。 蟹座橋(かにざばし)よりは ずっと手前だけど、それでも 花火をしていた場所から3キロ半あります。
二人は、黙って 夢中でお寺を目指しました。 デブチンの紀矢は、普段は すぐに息切れして ギブアップしてしまうのですが、彩野に会いたい気持ちからなのでしょうか?走っても、走っても全く疲れません。 それどころか ほとんど汗もかかずに、足の速い徹と ぴったり並んで走っています。
町外れの総合ふれあいセンターの角を右に曲がって、徹たちは ようやく水瓶座寺に着きました。
「おーい ひろみちゃーん、彩ちゃーん!」
正門から庭に入って 名前を呼ぶと、向かって左斜め奥の方で「こっち、こっち!」と明かりが二つ 左右に動いているのが見えました。 桜の下で ひろみと彩野が ペンライトを振って、男子たちに合図しているのです。
「お待たせ!」
徹たちが、ひろみたちに駆け寄ると、
「紀矢君!!」
と、彩野が 丸太ん棒みたいな紀矢の右腕に飛びつきました。
女子たちも男子たちと同じく 白いヘルメットをかぶり、背中に白い翼の付いた ごわごわの青い戦闘服をまとっていました。
「よかった、やっとみんな会えた! ・・・あれえ? 徹たちも、あたいたちと おんなしかっこうになってる」 徹とハイタッチしようとしたひろみが、思わず 緑色の目を丸くしました。
「ありゃあ、おいらたち 全員同じ服装に 変身しちまったみたいだなあ。 ・・・もしかして もしかすっと、あの薄気味悪い光を浴びたせいか?」 紀矢が言うと、
「あのおもちゃの話は、やめて!」 彩野が両耳をふさいで紀矢の言葉を遮りました。
「彩、ごめんな。 怖い事 思い出させちまったな。 紀矢様のばかやろう」 紀矢は、自分の頭をたたいてみせたけど、ヘルメットをかぶっていたのを忘れて グーで思いっ切りいってしまい、
「い、イッテーエ!!」
たたいた右手の方が ビ〰ンと痛くなって、慌てています。
「もう。 ヤダ、紀矢君ったら!!」
おバカな紀矢のやらかし様に、今にも泣き出しそうだった彩野が思わず爆笑。 徹と 紀矢と ひろみも、そんな彩野につられて大笑い。 いっぺんに くらあい雰囲気が吹き飛びました。
こうして 仲間四人全員の無事がわかって、徹たちは家に帰るために歩き出しました。 もうすぐ 11時 。 夜道は危ないので、徹がひろみを、紀矢が彩野を 家まで送る事にしました。
「遅くなっちゃったから、お母さんに『今から帰る』って電話しとこう」
四人は それぞれ自分のスマホを 青い戦闘服のポッケから出して、自宅の番号にかけました。
ところが・・・。
「え? 何だって!? 徹は、とっくに帰ってきてるよ。 ハハーン、あんた おれおれ詐欺だね!? はいはい、もう寝るから 切りますよ」
「は!? バカ言ってんじゃあないよ! 紀矢のデブは、もうお風呂から出て、寝ちまったよ。 おまえさんも いた電なんか やってないでさ、さっさと帰って寝な!」
徹のお母さんも、紀矢のお母さんも とんちんかんな事を言って、一方的に電話を切ってしまいました。
ひろみと 彩野のお母さんは、というと・・・?
「えっ? あんた誰よ? ひろみは ここで、兄ちゃんと 寝ないで テレビ見てるよ」
「もしもし、娘は 今寝ましたけど、おたくは どなたですか?」
男子たちのお母さん同様、冷た〰い態度をとって、さっさと電話を切ってしまいました。
もう一度かけ直すと、今度は どの家も 一斉に留守電になっていました。
〰つづく〰
「ファンキー・ピケット」次回のお話は?
今日も見てくれて,どうもありがとう。 ひろみです。
家に帰ろうと歩いていたら,夜中だっていうのに 知らないお兄さんに呼び止められました。 その手には,あたいたちが河原に捨ててきたはずの、変な光を出すブーメランが❗️
何 この人!? 優しそうに見えるけど,なんかヤバそう。
第4章 怪しい人
どうぞ読んでくださいね。
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