第8章 助けて❗
その頃 徹(とおる)は、ビケットの姿のまま バス通りを走っていました。 あのアンタレスという 変な外国人のせいで、家に帰るのが すっかり夜中になってしまいました。
(そうだ。 家には、さっきの人が送り込んだ 僕の偽者がいるんだっけ。 母さんは すっかりだまされて、そいつを僕だと思い込んでる。 なんとかして、偽者を追い出さないと)
そんな事を考えながら 走っていると、戦闘服のポッケの中で 「ブーッ、ブーッ」とスマホが振動して、メールの受信を知らせるメロディーが鳴りました。 (こんな夜中に、誰からだろう?)と、立ち止まって 確認してみると、ひろみから「たべられた へびへび」との ひらがなのメッセージが届いていました。
「何だ こりや? 『たべられた』って・・・そんなでっかい蛇、こんな町の中にいるわけないじゃないか。 もう。 何 考えてんだよ」 あきれ顔で ため息をついた徹。 返事は送らず、さっさとポッケにスマホをしまって、家路を急ぎました。
次の信号で バス通りを横断した時、またひろみからメールが来ました。 今度もひらがなで、「たすけて」と 書かれています。
「まただよ。 何時だと思ってんだよ」 うっとおしくなった徹は、スマホの電源を 切ってしまいました。 これなら、もう邪魔は入りません。
ところが 徹が走り始めてまもなく、耳が キンキンするような けたたましいサイレンが鳴り響いて、戦闘服のポッケから 独りでに ブーメランが飛び出しました。
「うわあ、びっくりした!」
足下に ぽとんと落ちたブーメランを、ポッケに戻そうとして 拾ってみると、蠍座の彫刻の 左上の「b」の文字の所で、赤いランプが点滅していました。 次の瞬間、持っているブーメランから 変身した時と同じ青白い光の粒が吹き出して、わあっと広がったかと思うと、目の前に 紀矢(のりや)と、ひろみと、彩野(あやの)の姿が浮かび上がりました。
三人は、体中が痛いのか、息ができないのか、うなりながら 地べたを転げ回っています。 徹は ショックで声も出ず、その場にたたずんでしまいました。
(これって、ひろみちゃんの いたずらなんかじゃないのかも。)
なぜだか無性に胸騒ぎがしてきました。
徹は、ブーメランを持ったまま 今来た道を引き返しました。
(ひろみちゃん、みんな、お願いだから 無事でいてくれ)
一方、大蛇に飲み込まれてしまった紀矢たちは、蛇の胃袋で もみくちゃにされていました。 4人の他にも ネズミやら、カエルやら そこら辺にいた生き物、なんと西瓜までを食べていたようで、胃袋内は 満員電車状態なのです。 わずかに隙間が有って、どうにか息はできるけど、全く身動きがとれません。
「おいらたち、このまま 他のえさたちと一緒に 胃液で溶かされて、死ぬのかな? あ〰あ。 母ちゃんのカレー、最後にもう一度 食いたかったぜ」 こんな時でも、紀矢の頭の中は、食べる事なのですね。
「お母さん、さようなら! わがままばっかり言って、ごめんなさい」 怖くて、震えて泣いている 彩野。
「すまない、私のせいで こんな目に。 酸素が薄くなってきたようだから、声を出しちゃダメだ。 私が脱出する方法を考えるから、ひとまず落ち着いてくれ」 そう言ってはみたけど、ブーメランを 外に置いてきてしまったため、アンタレスも どうする事もできないでいるのです。
「やべえ。 ひろみが さっきから ぐったりしてるみてえだ」 偶然 隣に倒れていて、目を閉じたまま ぴくりともしない ひろみの様子に気づいた紀矢が、声をあげました。
「静かに! 大声を出したら ダメだ。 それだけ早く 酸素が減るんだ」 紀矢に注意する アンタレス。
「そうだけど、だって ひろみが・・・」
思わず 紀矢が口答えをしようとした時。
「と お る、 た す け て・・・」 虫の息のひろみが、弱々しい 蚊の鳴くような声で、最後の力を振り絞るように、徹の名前を呼ぶのが聞こえました。
「ひろみちゃん、わかる? 私だよ、ねえ 聞こえる!?」 思わず泣き止んで、声をかける 彩野。
「おい、でいじょうぶか!? おいらたちの声が聞こえたら、うなずいてみな」
二人の声に、ひろみは 全く反応がありません。
「うーん・・・少し鼻の穴が動いてるみてえだけどなあ。 くっそー。 何でこんな時に、徹 いねえんだよー!」 悔しがる紀矢。
すると、突然 これまで出くわした事がないような 大きな揺れが、四人を襲ってきました。
「あ、ああー!!」
あまりの猛烈な揺れに、みんなは 気を失ってしまいました。
〰つづく〰
「ファンキー・ビケット」 次回のお話は?
またまたお邪魔します,ナレーターの城ヶ崎(じょうがさき)桃香(ももか)です。
ビケットたちがいなくなった後,真夜中のバス通りでは,アンタレスたちを食べた光る大蛇と,動物園から抜け出してきたのかな?一頭のヒョウとの戦いが行われていました。
ビケットとの勝負に勝って,ハイテンションのバタンキュラーは、夜更けだというのに 大声で 蛇に声援を送って 楽しそう。
どうせ 退屈したヤンキー王子が思いついた事なんでしょ?
それより 徹君 遅すぎだよ。
第9章 勝ったのは どっち? パート2
お楽しみにね❗️
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