1分20秒小説『6秒に足らぬ人生を繰り返す一生』
深夜のコンビニ駐車場、スマホの背をハンドルに立てかけ、動画を再生する。
カノジョが振り向く、そしてこう言う。
「なぁに?」
ボクに微笑む。
そこで動画は終わる。メビウスリングを模した上下二つの矢印。指を当て、再生。
カノジョが振り向く、そしてこう言う。
「なぁに?」
ボクに微笑む。
6秒に満たない動画。繰り返し再生することを繰り返している。それが日常。ボクはここに居ない。映ってはいないが動画の中にいる。そこでカノジョの微笑みを一身に受けて、生きる意味と喜びに包まれている。それがボクだ。シートに座って、スマホの明かりに照らされている虚ろな男、カレはただの鑑賞者に過ぎない。
動画が始まると、全てが始まる。そして動画が終わると、すべてが終わる。人生の始まりと終わりもそこに集約されている。動画の中でボクは、6秒に満たない人生を謳歌している。この先もきっと、鑑賞者が息絶えるまで、延々と繰り返し、持続するだろう。
お願いだ。誰かそれを、"幸せ"と呼んでくれないか?
鑑賞者が居なくなると、彼らの世界は消えてしまう。納豆巻きにかじりつき、サイドシートの闇に手を伸ばすさ。
一生をかけて、彼らの世界を守り続ける。例え、誰かを殺すことになろうとも。それが、自分自身であろうとも。
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