1分30秒小説『カラフルな布』

 近所でも有名なペット大好き一家、家中ペットだらけ、夜家の前を通ると、得体の知れない動物の鳴き声がするとか、密輸された動物を飼育しているとか。


「先生、うちの子大丈夫でしょうか?」

 お母さんが心配そうに尋ねる。

「きっと大丈夫ですよ」

 兄が尋ねる。

「この子にもしものことがあったら僕は……先生、大事な錦蛇なんです。家族の一員なんです。助けてあげてください」

 妹がスマホを耳に押し当て。

「もうっ!なんでパパ電話に出ないのー!」

「皆さん、落ち着いてください。きっと何か異物を呑み込んでるだけだと思います。口を開けて、引っ張り出してみます」

「お願いします」


 看護婦が口を開いて固定する。獣医師が長いピンセットを蛇の口に差し込む。

「やはり何かありますね。摘まみ出します」

 獣医の腕がぐっと力む。看護婦も踏ん張っている。獣医の腕、動かない。ぷるぷると震えること暫し、栓が抜ける様に一息にずぼ。勢いよろける獣医、尻目に家族一同――

「うわっ!何だこれ?」

 粘膜塗れのカラフルな布。

「タオル?いや違う。何?この布」

「皆さん、太郎君の体調不良の原因はこれです。この布が腸を塞いでいたんです」

「じゃあこれでもう大丈夫ですか?」

「ええ、もう大丈夫です」

「良かったぁ」

 一同胸を撫で下ろす。お母さんがぼそっと――

「ねぇ、お父さんから連絡あった?」

 兄妹が首を振る。そして妹がはっと――

「ねぇ、これお父さんのパジャマじゃない?」

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