1分10秒小説『生意気なオウム』

「おはよう」

 うるせーなぁ。

「おはよう」

 うるせぇ。

「おはよう」

 こいつ、朝になると「おはよう」って言うなぁ。ってことは「おはよう」ってのは朝の挨拶か?よし、いっぺん同じ事言って返してやろう。

「おはよう」

「オハヨー」

「上手だよ。いい子だねぇ」

 なんて生意気な言い草だ。さてはコイツ、オレの事下に見てやがるな?ふざけやがって!こちとらブラジル生まれのブラジル育ち。小せぇ時分からジャングルの木から木を飛び回って体と肝を鍛えてんだ!オレが本気で噛み付いたらお前なんか簡単に食い千切れんだゼ!


「こんにちは」

 うるせぇ。

「こんにちは」

 昼になると「こんにちは」だ。じゃあこれは昼の挨拶か?参ったなぁ。こんな生き物の言葉なんて覚えたくもないんだけど、こう毎日話しかけられたんじゃあ嫌でも覚えちまうゼ。


「こんばんは」

 はいはい、これは夜の挨拶ね。で、家を出る時が「行ってらっしゃいで」帰ってきたら「お帰り」だろ。

 あー、やだやだ。粗方覚えちまったゼ。コイツ、オレが言葉を覚える度に、なんかえらそーに話し掛けてくるけどあれ、きっと誉めてんだろうなぁ。生意気だよ本当に。お前を喜ばせるためにオレぁ言葉を覚えてるわけじゃねぇゼ!


********************


 日本から姉が帰ってきた。

「ただいまー、ありがとねサントス、長い間うちのオウム預かって貰って、どう?この子少しはブラジルの言葉覚えた」

「覚えねぇよ。逆に俺が日本の言葉覚えちまったゼ」

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