1分20秒小説『ポニーテール畑』

 地面が髪の毛で覆われている。見渡す限り。

「こうやって、伸びた髪を手作業で一つずつ結んでポニーテールにしていくんじゃ」

「これを全部おじいさん1人で?」

「そうじゃ。ワシ1人でこの髪畑を管理しとる」

「大変ですね。作業が終わるのにどれくらい掛かるんですか?」

「秋に始めて春までかかるかのぉ」

「所々、髪が生えてないのが有りますね?」

「ストレスで脱毛するんじゃ」

「なるほど、そういった頭には植毛するんですか?」

「いや、植毛はせんよ。ワシは天然物に拘っとるけぇの。生えてこんのは畑から引っこ抜いて捨てるんじゃ」

「そうなんですねぇ。ちなみに、ここには何人くらいの女性が植えられてるんですか?」

「ざっと1000人くらいじゃ」

「1000人?!」

「しかも髪のキレイなのばかり選って植えとるけぇの」

「いや、本当に凄いですね。ツインテールとかは作らないんですか?」

「いや、作らん。確かにツインテールの方がええ値で売れるんじゃけど、ワシはポニーテール一筋じゃ」

「なるほど、本当に拘って作られてるんですねぇ。本日は取材させて頂き、大変ありがとうございました」

「良かったら一つ持ってかえりんさい」

「え?いいんですか?」

「ええよ。どれ、ワシがええのを選んじゃろう。すまんが、そこの鎌取ってくれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る