救援要請

「それでは、マシロ最速便行ってきます!」

「おー、怪我するなよ~」

「気を付けて行って来てね」

「出来うる限り早急に行って帰ってきやがりくださいませ」

「はい! 達者にしてますね!」

「自分で言うことじゃないだろ」


 それは誰かが誰かにかけるエールだ、と突っ込みを入れる隙も無くマシロ最速便は出発してしまった。ただただせわしないやつだ。


「そういえば、結局誰を呼んだんですか?」

「ん? 増援のことか? あー、それじゃあ当てっこゲームしようぜ」

「誰を呼んだか当てるということですか? 幼稚ですね」

「やらないのか?」

「やりますよ? 勝負事は好きなので」

「そ、そうか……」


 まあ、ミーアトリアも外見通りの子どもだからな。

 なんか楽しそうだし、いいか。


「それじゃあ、呼んだのは三人だ。回答権は一回ずつ。最初に答える人は、じゃんけんで決めようか。それじゃあじゃんけん――」

「「ぽん!」」


 レイアグー、ミーアトリアチョキ。


「えっと、レイアの勝――」

「ちょ、ミーアトリアちゃん!? や、止めて! そのチョキの手を僕の目に向けないで!」

「あ、主様! この勝負、私の勝ちです! 勝ちですよね!」

「止めろよ! 暴力で解決しようとするんじゃない! こ、こら放せ! レイアに罪はないだろ!」


 こ、こいつ本気だ! レイアと俺が本気で抵抗してるのにギリギリってことは全力だぞ! レイアの目を潰そうとするな!


 数分後。


「え、えっと、とりあえずハトリールさん、ですか?」

「正解だな」

「ぐぬぬぬぬぬぬ」


 何とか回答権を取り戻したレイアが順当に一問目を正解した。

 どうやら絶対に当てられる人だったからなんとしても最初の回答権が欲しかったらしい。ミーアトリアは心底悔しそうにしている。こんなミーアトリアは珍しい。


「じゃあ、次ミーアトリア」

「……イゼ様ですね」

「正解」

「あ、やっぱり師匠は呼ぶんですね」

「ニバールの最高戦力だからな」


 強いやつがいるんだから呼ばない手はない。それにどうせ暇しているだろうし。


「それじゃあ最後。レイア、分かるか?」

「さっきからずっと考えてるんですけど、分からないですね。他に、誰かいました? ニバールに強い人」

「でしたら、私が答えてもよろしいでしょうか」

「なんだ、ミーアトリア分かるのか?」

「もちろんです」


 こほん、とわざとらしく咳ばらいをし、視線を集めたミーアトリアは自信満々に言い放つ。


「聖竜教会のシスター、アズリア様ですね?」

「お、正解だな。この勝負、ミーアトリアの勝ちってことで」

「おー!」


 表情はほとんど変わっていない。しかし、嬉しそうに目を輝かせ、ほんのり、わずかに、微かに口元を緩めたミーアトリアが右手を掲げた。

 レイアはといえば、悔しがるのではなく、小首を傾げていた。


「えっと、アズリアさん、って、どちら様ですか?」

「ニバールの聖竜教会で助祭をしているやつだ。あいつには貸しがあるからな、手伝わせる」

「ちょ、ちょっと待ってください。その人、僕が知っている人ですか?」

「ん? たぶん知らない人じゃないか?」


 俺がそう言えば、レイアはみるみる頬を赤くして、涙目になって詰め寄ってくる。


「僕に勝ち目ないじゃないですか!」


 いや……平等な勝負とは言ってないし?

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