小休憩
「マシロ、手紙を届けてきてくれないか?」
「手紙ですか? パシられるくらい構いませんが、誰に出すんです?」
一旦町長の家に帰り、ゴブリンは無事討伐できた、と報告。その後借りている部屋に戻った俺は、ミーアトリアとレイアに傷の手当てをしてもらう中マシロにそんな頼みごとをしていた。
「クォンに渡して来てくれ。中身は今から書く。今の俺たちだけじゃ勝てないからな、支援要請だ」
「分かりました! マシロ最速便でお送りしますね!」
ったく、何嬉しそうに敬礼してるんだか。でもまあ、マシロが楽しみにしそうにしていると不思議と笑えて来るからいいか。どんな時でも笑わせてくれるやつがいるというの、精神的に助かる。
「えっと、メイゲルさん、痛くないですか?」
「ん? ああ、大丈夫だ。ありがとな」
「いえ、僕はこれくらいしか出来ませんから」
レイアは俺の火傷した肌に包帯を巻きながら寂しそうに言う。
「レイア、あんまりそんな辛そうな顔をするな。今回のことは全面的に俺が悪い。ドラゴンを見た時、いきなりのことで俺も動揺していた。冷静になれていたら、もっとうまいこと出来ていたはずだ。信頼してやれずに、悪かったな」
「い、いえそんなこと! あの場にいたのが僕じゃなくて師匠だったら、きっと善戦していました。僕が未熟なのは本当のことです。で、でも! 僕頑張ります! また、戦うんですよね。その時には絶対、皆を守って見せます!」
「ああ、そうしてくれ。俺も、ちゃんと頼らせてもらうから」
「は、はい!」
「いい返事だ」
そんなに俺に頼られるのが嬉しいのか。よく分からないな、レイアは。でも本気で笑ってくれているのならこんな言葉、幾らでもかけてやろうと思う。
そろそろミーアトリアにも構ってやるか、と思っていると、俺の足に包帯を巻いていたミーアトリアと目が合った。少し前まで見せていた怒りは鳴りを潜め、普段の無表情でしばらくこちらを見つめたあと、溜息を吐く。
「メイゲル様、どうやら相当メンタルがやらているご様子ですよ。優しくなっています」
「良いことだろうが。あと、普段は優しくないみたいに言うな、いつも優しいだろうが」
「目つきの問題です。普段はもっと死んだ魚のような目をしています。今は孫を見る祖父のような目をしてます。ちなみに優しくないと思います」
「どっちもあんまり褒められてる気がしないかもしれない。あと余計な一言を付けるな」
「ええ、褒めてませんから」
「辛らつだなおい……」
まあ普段のことか。でも、こんな時くらい優しくしてくれてもいいんじゃないかねぇ。って、甘えてばっかりもいられないか。俺はもうミーアトリアの面倒を見るって決めてるんだから。
そんなことを考えていると、両太ももの上に圧を感じた。
「ミーアトリア?」
「仕方ありませんから、座られさせてあげますよ。ほら、ブラッシングでもしてください。クシなら私の鞄の中に入っていますので」
「ええぇ……」
俺、一応怪我人なんだけどな。
「あ、ミーアトリアちゃんだけずるいですよ!」
「ずるいってお前、俺に髪をとかして欲しいのか?」
「ああいえそうではなく、ミーアトリアちゃんだけ先輩にお礼を請求するなんてずるいって意味です。そうですね、マシロ、奢って欲しい食べ物があるんです」
「ぼ、僕はその、うぅ……やっぱりいいです」
約一名が図々しく、約一名が自己主張弱め。ミーアトリアは唯我独尊、ってか。
普段なら文句の一つも言ってやらなければ気が済まないが、たまにはいいかもしれないな。
「ばーか、どっちにしてもやることやんなきゃ帰れないんだ。その話はまた、その時するから。一先ずマシロ、紙とペンと、あとクシを取ってくれ」
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