『19頁に挟まってる口づけ』

人生の一頁に口づけが挟まっている

栞のように

もう読み終えた筈なのに

抜くことのできない

あの人との口づけ

手探る

まだ前半部分

物語がうねりだす地点

だけど私にとって

そこが最終頁なのかも

あの人との口づけ

何度も同じ頁をめくり

そこから再開したいと

願う

もう一度読み返せば

物語が変わるのではないかと

でもその先に

あの人は登場しない

口づけ

輪郭のない花のよう

大丈夫

ちゃんと今を生きてます

栞があるから

いつまでもそこにあるから

私は物語りを見失わずに

進めることができる

あなたとの思い出があるから

この物語は温かい

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