ダンジョン8日目。

 駅へ向けて歩く。

 時間が遅いからか、忙しない顔の人達が多く目に入る。


 みなスーツを身に纏い、足早にきえ去って行く。


 出勤時間に出勤場所。

 会わざるおえない人に残業。

 賃金を得るためとはいえ、管理される一日。


 体か心が壊れるまで

 止めることを選択できず、

 日々奴隷であり続けるブラック会社人。 


 楽しみや喜びが解らず

 ただ死ぬことを夢見ていた過去の自分に

 辛く重なる。


 高い代償を払い、自分は抜け出すことが出来たが、

 未だ多くの人が苦の道を歩むを見るは

 

 ただただ、かなしい。


 


 やめよう。


 この思考を続けても、なんの救いにもならない。


 隣を歩くタマとアイアンを見て笑顔になり、

 沼から外に出る。




 タマとアイアンを両肩に乗せ、息苦しい電車に乗り、

 なんとかダンジョンセンターに到着。


 今日もそこそこに人がいる

 Eランクのダンジョンセンター。

 

 自動ドアをくぐり

 入るとすぐに感じる視線。


 嫌な感じはしないが、何だか見られている。

 周りの探索者達がチラチラとこちらを見ている。


 ん? 

 どうしたんだろう?

 服に何かついてるのかな?


 衣服を確認するが特に目立った汚れもない。

 

 タマとアイアンを見ても、可笑しなことをしているわけでもない。

 ただ可愛いだけだ。


 思い当たる節もないし、いい気分がしないので

 早々に手続きを済ませてダンジョンに向かう。

 

 横を通っても、視線を向けて来る探索者達は話しかけて来なかった。

 タマも気にした様子じゃなかったので、問題ないんだろう。




 警備の人達にもろもろを見せ、ダンジョンに入る。


 砂利道を一分ほど進む。

 いつもならこの辺でウィンドウが現れていたが、今日は何も現れない。

 

 入場ボーナスは7日目までと分かっていたが、少し悲しくなった。

 

 これは良くない。


 気分を取り戻すため、リュックからお酒を取り出す。


 選ぶお酒はもちろん、ウルトラストローグ11。

 飲んでいないのに、手に持つだけで気分が高揚してきた。


 もしかしたらアルコール依存の初期症状かもしれないが

 飲んでいないと手が震えるわけでもないし、自分はたぶん大丈夫。


 プシュッと開けて

 一口グイッ


 と行きたいところだが

 紙コップに分けてアイアンと半分こ。


 二人で飲む方がやはり美味い。


 ごくごくとひと息に飲み干し、充電完了。

 


 気分上々

 意識が冴えわたり

 だんだんとやる気が溢れてきた。

 


 「ぎゅあ!、ぎゅあ!。」



 アイアンもいい感じになって、笑顔で跳ね周っている。


 ヨシ!。

 それじゃあ今日は情報集めもしっかり終わっているので、

 最下層の8階まで、試しに降りてみましょうか。 

 


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