7日目の終わり。

 なぜ、我らは争い続けるのだろうか。

 終わりの見えぬこの戦い。


 途中、やめる道も選べたはずだ。

 しかし、誰かがそれを許さない。


 一体誰だ?

 そんな馬鹿野郎は?



 決まっている。



 当然、自分だ。

 自分自身だ。


 


 だって、



 ……だって、勿体ないんだもん。



 貧乏性ここに極まれり。

 


 崩せた城郭はいまだ半分。


 戦友アイアンは既に満腹となり、布団に転がり寝息を立てている。


 横で見守るタマも、手伝ってはくれない。

 残された自分ただ一人で、この黒い塊と向き合わねばならぬのだ。


 現在時刻は22時。 

 消費期限はとうに過ぎている。


 捨てるのが嫌なら、

 ラップで巻いて、冷蔵庫に入れれば、多分大丈夫な気はする。

 しかしその道を選ぼうとすると、「そんなのは敗北者の取る選択だ!、白いひげは生やしたくねぇ!」と、良く分からない心が無責任に抵抗してくる。



 どうすればいいんだ?



 馬鹿馬鹿しさ世界一の問答で悩んでいると、スマホに飛び込んでくる緊急速報。

 どっかで地震でもあったのかと開いてみると、全く違っていた。


 なんとこの国で世界屈指と言われるSランクの最上位探索者が、旧政府組織へと大量のモンスターを引き連れて堂々と正面から突撃したそうだ。

 万を超える虫や動物型のモンスターが暴れまわり、死傷者が多数出ているらしい。

 今は警察や近くにいた探索者が鎮圧に乗り出しているが、解説者の見方では鎮圧は、ほぼ不可能で、協会から同ランクの探索者が複数派遣されないとどうにもならないとのこと。


 はぁ?

 まじやべーぜ。

 

 ホントどうなってんだ、ここ最近。

 非日常的なイベントが現実で多すぎる。


 気づかない内にパラレルワールドにでも入ってしまったのだろうか?

 

 そんなわけないか。

 ……ないよね?

 

 じーッとタマを見つめるが、タマは何も話してくれない。


 そりゃそうか。

 取り合えずタマがかわいいのでヨシ!。


 悩んでいることが急にどうでも良くなったので、

 さっと餡子をラップで包み、冷蔵庫の奥へと封印する。


 たったこれだけで平穏が訪れた。

 変な感情に手間取らず、もっと早く行動すればよかった。


 軽くなった心で他のニュースを見ていると、大毒沼の防壁は順調に進んでいるようだ。少々遅れてはいるが、早ければ3日後に結界が張られ、安全が確保されるそうだ。いいニュースがあって嬉しい。


 昇級試験の勉強を30分して、丁寧に歯を磨き、ゆっくりと布団に入る。

 

 あした何をするか決めていなかったが、ダンジョンに行ってから考えればいいか。

 色々と考えるべきことも有っただろうけど、全て投げ捨てて眠りにつく。


 あしたの自分が何とかしてくれるだろう。



 今日もありがとう。タマ。アイアン。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る