夜に食べる。

 帰宅。


 部屋の電気をつけ、ビニール袋を畳に下ろす。

 肩や腰を回してほぐし、最後にのび。


 ふー、やっと帰ってこれた。


 大きく息を吐き、ひと息つく。



 「ぎゅあ?、ぎゅあ?。」



 買ってきた物


 へへへ、今回はお酒がいっぱいある。


 小悪党スマイルを浮かべながら、すぐに飲まない大瓶や野菜達を冷蔵庫へと移していく。

 

 いやいや、仕方が無かったのだ。

 目の前で餃子と唐揚げを手に取られ、敗北者となり、心傷ついた自分を癒すには、お酒さんの優しさが必要なのだ。


 苦しい言い訳。



 ビニール袋から今日の夕飯、餡子とパプリカを机に並べていると、タマのトイレが目に入る。


 猫のフンが新しく増えている。

 ダンジョンに行ってる間に野良猫のハマチが家に来ていたらしい。

 


「ハマチ?、ハマチー ハマチー。」



 もしかしたらまだどこかに居るかもしれないので、名前を呼んで押し入れや手洗い場を探すが、見当たらない。


 まぁ、いいか。トイレだけしてどこかへ行ったんだろう。


 さっとトイレを片付けて机に戻る。

 パプリカを細切りにし、餡子と一緒にアイアンと半分づつに分ける。

 今日購入した日本酒、純米吟醸「とどろき3番」の封を開け、ガラスコップに注ぐ。

 夕飯準備完了。


 手を合わせて、


 

 「いただきまーす。」


 「ぎゅあ!、ぎゅあ!。」



 実食。


 いやぁ、パプリカがうまくて甘い。餡子も甘い。

 甘い甘いのダブルパンチ。


 いいですね。


 口に運んだ日本酒もフルーティーで甘口。うまい。

 餡子やパプリカと合うかと聞かれたら、なんとも答え辛いけれども。


 それぞれ異なった甘味の三重奏で、自分は大満足だ。


 アイアンも蔓で箸を上手に動かしながら、美味しそうに食べている。

 ここ数日で分かったがアイアンは完全に甘党だ。


 これからは甘い物もそれなりに買うとしよう。



 食べ続けているとだんだんと他の味も欲しくなって来たので、リュックから魚肉ソーセージを取り出し、輪切りにする。


 味変用に餃子のたれと思われるものを小皿に出し、食事を再開。


 魚肉ソーセージの美味しさに感動しながら、スマホで配信サイトを見ていると、今朝見かけて いいね! を押した配信が、まだ続いていた。



「やべぇ、何時間配信してるんだ?この人。すごいな。」



 すでに丸一日を超えている。

 ただ、ステージはあまり進んでおらず、4面のボスが大きな壁となり、ここ数時間停滞しているようだ。

 それでも着実に上達しているので、いつかはクリアするだろう。


 「継続は力」という言葉を何となく理解できたような気がした。



 継続、大切。


 そう、自分とアイアン二人して残してしまったこの餡子も、食べ続けることが出来れば、いずれ無くなるだろう。


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