処理能力。

 惑う蜘蛛を叩いて屠る。

 終わりの見えない単純作業。


 バールのようなもので大体3回。

 タマ姿のアイアンが猫パンチで一回。


 洞窟を埋め尽くしている蜘蛛を、徐々に粒子へと変えていく。

 

 猫パンチの絵ずらは可愛いのに、自分の3倍以上の火力。動きはいつもの2倍速。   

 自分とは比較にならない圧倒的処理能力だ。



 「ぎゅあぎゅあ‼、ぎゅあぎゅあ‼。」



 あと、なんだか怒っているアイアン。

 糸を飛ばされたのがそんなに嫌だったのかな?


 アイアンが怒気を放つ原因は分からないが、自分も怒りたい気分だ。



 なぜならこの大量にいる蜘蛛の団体様方、倒しても倒しても、どうしてか魔石を落とさないのだ。


 粒子に変わっているので、経験値的なものは蓄積されているだろうが、目に見える恩恵が皆無なのは、ボディーブローのように少しづつ心に響いてくる。


 カードの効果が解けるとは思っていないが、もし解けて他の探索者に迷惑をかけてもあれなので、ちゃんと全部倒しておきたい。




………




しかし多い。



かれこれ一時間近く黙々と叩いているが、終わる気配がない。

アイアンの怒りも収まり、普段の速さに戻っている。


体に疲れは来ておらず、むしろ調子は良くなっている。

経験値的なものを得て、強くなっているからだろう。



ただ、多すぎる。

ほんっとに。



未だに道の先が見えないほどの大量の蜘蛛。


もしかして、どこかから増えてるんじゃ?、

いやいや、そんなこと、ないないない。


悪い思考は即座に捨てる。


それでも鳴り響く心の悲鳴。



休憩したい!

お酒飲みたい!

帰ってゲームしたい!



どうにかしたい。


カードを使えば解決するだろうけど、残り三回なので、危ない時の為に温存したい。


別の方法で何とか成らないだろうか。


そうだ、有名な言葉にこんなのが有ったな、



求めよ。さらば与えられん。



なぜこの言葉が思い浮かんだか分からないが、取り合えず、何とか出来ないかタマに聞いてみよう。


後ろで見守っているタマに話しかける。



「この蜘蛛の群れ、タマだったら何とか出来ない?。」



言葉を聞いたタマが、蜘蛛の前に躍り出る。

こちらを向いて一鳴き。



「にゃぁ。」


 

危ないらしいのでアイアンを持ち上げて一緒に後ろへ下がる。



「ぎゅあ?、ぎゅあ!ぎゅあ!。」



持ち上げられて、なんだか楽しそうなアイアン。


顔を蜘蛛の方へと向き直したタマが、全身から光を放ち出す。


タマが口を開く。

数舜後、真白の激流が蜘蛛の群れを飲み込んだ。



あ、これゲームでよく見るやつ。

ドラゴンブレスだ。


多分聖属性の。



驚き喜ぶ自分とアイアン。


タマのドラゴンブレスもとい極太猫ビームは、10秒程流れ続けた後に収束し

、視界一面を埋め尽くしていた蜘蛛の群れを、一つ残らず消し去った。

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る