気分上々。

 タマに導かれながらスケルトン周回。

 ワンパンになった石トカゲも、時々ふんずける。


 クルクルと一階層を走って巡り、モンスターを倒していく。

 靴が重くなったので違和感は少し有るが、なぜだか疲れが出てこない。


 思った以上に走れている。まだまだ大丈夫そうだ。


 すれ違う探索者は大体同じ人なので名前は知らないが、なんとなく顔は覚えた。

 殆どがソロの探索者で、皆ちゃんとした装備をしていて羨ましい。


 自分もいつかはまともな防具を身に着けよう。




 一時間程たったので、リュックからビーフジャーキーとお酒を取り出し、小休憩。


 腰を下ろして近寄ってきたタマを撫でる。

 アイアンにビーフジャーキーを渡して一緒に齧る。


 噛めば噛むほど味がでる。うまうま。


 飲むお酒はいつものストローグ11。


 一本飲めば体ふらふら、心軽やか。

 幸せいっぱい、無敵状態。


 敵なしの一階層だけれども、さすがにダンジョンなので飲む量は少し減らそう。

 紙コップを取り出し、アイアンと半分こする。


 前まで一人で休憩してたから感じなかったが、一緒にお酒を飲んでくれるアイアンがいるとなると、やはり机と椅子が欲しくなってくる。


 キャンプ用のお手頃価格で、運びやすい物を買うかなぁ。

 それともリュックの積載量も増やしたいし、椅子と合体している多機能リュックにするという手も。

 いやいや、この前ネットでやってたワイバーンのブレスを防げる、机に変形する大盾も魅力的だ。実用性は無いようなものだったが、ロマンが溢れていた。

 

 ロマンでご飯は食べられないと心の中の魔王様からお叱りを受けたが、ロマンを求めない生き方に自分らしらを感じなかったので、意見を不採用。


 しかし頭の上の天使から、「まずは借金を返してからです。」と追撃。

 デカすぎる正論砲が心に直撃し、あえなく撃墜。


 大盾を買う選択肢は、宇宙のかなたでバラバラになった。



 

 ひとまずお酒を飲んで心を落ち着かせよう。

 アイアンと紙コップで静かに乾杯。

 

 ごくごくと体に流し込む。うまいっ。

 バラバラになっていた心がだんだんと組みあがり、元に戻って光輝く。


 元気いっぱい上機嫌。

 心ここにあり。

 酒と共にあり。


 アイアンも笑顔でゆらゆらと左右に揺れている。


 ビーフジャーキーだけでは物足りなくなって来たので、追加でピリ辛あらびきウインナーをリュックから取り出す。


 これがまたお酒にあう。

 幸せだなぁ。



 ガチャで強い靴も出たし、お酒も飲めて、タマやアイアンも隣にいる。

 傍から見たらただのオカシイ呑兵衛だけど、自分にとって大切な全てが、


 全てが今ここにある。




 「ぎゅあ!ぎゅあ!。」



 あらびきウインナーが辛かったからか、もう少しお酒が欲しそうなアイアン。

 


 「ごめんよ。今回の休憩ではこれだけにしておこうと思うんだ。」



 言葉を聞き理解したアイアンは、頭の上に大きなガーンという飛び出す文字が見えそうなほど驚き、悲しそうな表情をしていた。

 

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