先送り。

 喜び勇んでアイアンと一緒に青いカプセルを300個程開けたが、周りの青い海を見て、まだ1/10にも満たないのだとさとる。


 タマにカプセルの海を回収してもらい、一旦終了。

 暇な時にまた少しづつ開けていこう。


 机の上にズラリと並ぶ、ぜんかいのクスリ。

 壮観であるな。

 ガハハッ。


 ここ数日で2回も殺されかけたので、回復アイテムは溢れるぐらい有ってもよいと思う今日この頃。

 しかし即死したらどうにもならないので、やはりみがわりの指輪はもう一度手に入れたい。

 

 ドレス女に黒だったり紫のビームをぶち込まれたことを思い出し、沸々と怒りが再燃してくる。

 しかし、既に終わり、過ぎ去った現象に怒りを向けることに無意味さを感じ、まぁ、いいかで流し捨てる。



 要らない感情を捨てることで、頭の中が澄み渡り、色々と繋がりだす。



 ああ~、キースってもしかして、初心者ダンジョンで切りかかって来たあいつか。

 完全に忘れてた。


 そういや手配書がどうとか話してたっけ。

 スマホを取り出し指名手配犯について検索。


 沢山出て来る悪辣な顔。顔。顔。


 顔の中に見覚えのある赤髪男を発見。

 

 あったあった。こいつだ。

 

 

 キース・ファルベナン 懸賞金上限額10億$


 国際指名手配されてるまじモンのヤバイ奴だった。

 何でも世界各国で探索者を殺害し、マジックアイテムを奪って回っていて、120件も容疑がかけられている。犯行映像も多く公開されており、中でも大剣でビルを3棟同時に切り倒す動画は優に100万再生を超えている。有力な情報だけでも50万円もらえるらしい。



 50万円は魅力的だが、「そいつ、タマが消し飛ばしました!」と言えるはずもないので見なかったことにしよう。

 


 アイアンと一緒に焼酎をストレートで飲んで忘れる。


 1 2の ······ ポカン!

 そうじは赤髪のことをキレイに忘れた!



 そして……!


 そうじは、あたらしくストレート焼酎の美味しさを覚えた!





 酔いも良い感じになって来たので、布団を敷き、明日の予定を確認する。


 確認したら明日はライセンス昇級の試験日だった。

 背中に冷たいものが走る。


 

 いや、いやいや、自分は疾うに学生では無くなっているんだ。

 試験を受けない選択肢を選べるんだ。


 全くもって試験に受かる未来を思い描けなかったので、一週間後に試験日をずらす。

 これで受験料5000円を無駄にしなくて済む。

 

 ついでに勉強に当てられる時間も一週間増えたため、今日は推し達の切り抜きを見て回ろう。


 推し達のおじさん発言を見て笑い、幸せな時間を過ごし、眠りにつく。





 まどろみの先へ。

 

 ああ、これは、夢だ。

 目の前にいる前職の上司を見るに、この時間を夢だと気づく。

 何かを話している様だが、言葉が聞き取れない。

 

 ただ、謝りたいという意思は伝わってくる。

 なぜその感情を生前に持てなかったのか、詰め寄り問いたい気持ちもあるが、

 

 ぐっと堪えて謝意を受け取り、全てを水に流す。

 上司は深く頭を三度さげ、何処かへと消えていった。


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