圧倒的強者。

 糸目男からの会話申し込み。


 無理です。

 話したくない。


 というか自分は何でこんな目に合わなきゃ行けないんだ?

 気味の悪いドレス女に殺されかけ、大事な指輪も破壊されて。


 今は見るからに悪人づらの、ヤバそうな糸目男に話しかけられて。



 何だかだんだん腹が立ってきた。

 


 既読をつけず放置したいが、そうもいかないので言葉を選ぶ。



「その前にこっちを普通に動けるようにしてくれ。」


「申し訳ないですがキースさんを倒せる方を自由にするなんて怖くて、怖くて。」



 

 ちっとも申し訳ないと思ってないだろ。

 それにキース何てのも倒してない。人違いは止めてくれ。

 


 胡散臭い表情の糸目男。

 通りの良い丁寧な言葉が、曇り切った醜い心から吐かれる。



 「こちらとしても争いたくは無いんですよ、貴方のような強い方と。ですがキースさんが持たれていた鍵は、我々にどうしても必要な物でして。」



 一拍。



「お渡し願えませんか?。」

 






 知らんがな。


 そんなもの。


 無いのに渡せと言われたら、答えを出せぬが世のことわり。


 鍵とは何なのか、聞き返すのも嫌だな。

 沈黙を貫く。



 無言のまま睨み合い、時が流れる。


 

 

 「だんまりですか。沈黙は金と成りませんよ。」



 口角をあげた糸目男が手を掲げ、指示を出す。

 後ろにいた4人のスーツ姿の男達がそうじを取り囲み、下卑た笑みを浮かべる。

 何処からか長物の凶器を手に取り、突きつけた。


 

「話したくなるまで、刻んであげて下さい。」



 凶器が振り上げられたその瞬間、


 アイアンの目が怪しくまたたいた。



 「ぎゅあ!ぎゅあ!ぎゅあ!。」



 

 4人のスーツ男は振り上げた凶器をそのままに、糸目男へと狂戦士の如く切りかかった。

 糸目男は懐から赤いマチェットを取り出し自身の首へ突き刺す。

 

 首から血が溢れ、意識を取り戻した糸目男。

 現状を理解し、驚愕に目を見開く。


 緑光を放つ左手を首に当てながら、息つく暇もない剣戟を体捌きだけで躱していく。

 

 

 うおおおお、糸目男つええええええええええええええええ。

 脳内で動画勢のような感想。



 襲い掛かる4人の男も達人と思えるほどに鋭く迫るが、糸目男に全て受け流され、肘鉄により一人が気絶、直後に黒い奔流。


 気絶した男含め巻き込まれた3人のスーツ男は、跡形も無く消失。

 咄嗟に回避した糸目男も左足先が無くなっていた。


 参戦するドレス女。

 さらに周囲から駆けて来る数多の足音。


 舌打ちを一つ。

 顔から余裕が消え失せた糸目男が、そうじへと距離を詰めようとし、阻まれる。

 

 生き残ったスーツ男が抱きついていた。


 悪態をつきながら糸目男が振り解こうとするが、駆けて来た足音が到着。

 

 追加された十数人のスーツを着た男女も糸目男に抱きつき、覆いかぶさる。

 途端にスーツ人間の塊から黒い光が放出し、


 爆発。


 

 煙がはれ、散乱する人間の手、足、肉片。


 さすがにこれは終わっただろと高を括っていると、


 赤い光に包まれた糸目男が、ゆっくりと立ち上がった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る