灰色の空間。
上か下か分からない。
意識は有る。冴えている。
微妙に、微妙に動いている。
異世界の様な灰色の空間をゆっくりと漂っている。
一体何が起きているんだ?
無重力空間なのか手足をバタつかせても体は動かない。
左肩に何かが当たり、巻き付く。
伸びたアイアンの手だ。
シュルシュルと手が縮みアイアンが肩にくっつく。
「ぎゅあ!。」
傷一つ無く、笑顔のアイアン。
無事で何より。
そういえばタマは?
灰色の空間を見渡すがタマは見当たらない。
どうにかして後ろを振り向いて確認しようとしていると、周りに青い文字が現れ、積層の魔法陣を形作る。
猛烈な危機感。
体全ての細胞が震え出し、すぐに逃げろと全会一致で訴えている。
しかし逃げられない。
どこからか不気味なドレス女の声。
「あなたでもこれは防げないんじゃないかしら?」
視界前方に紫の光が集中し、現れる地獄の太陽。
紫熱する球体に白線が十字に入り、
轟音。
紫の極光が激流となりそうじを飲み込んだ。
血色の悪い唇を吊り上げ、死を確信するドレス女。
数秒後、激流が収まり灰色の空間に静寂が訪れる。
平然と佇むそうじと不機嫌になったアイアン。
驚愕し、顔がゆがむドレス女。
「いったい何者なの?あなた……。」
言葉を投げかけられたが、どう答えていいか分からない。
それよりも虎の子のみがわりの指輪が粉々に砕け散ったことが、悲しくて仕方がない。
悔しい。
許せない。
未だ体は動かせないが、一矢報いようと思考を巡らせていると、何もない空間に蛇をあしらった木彫り扉が現れる。
扉が開き、中から5人のスーツ姿の男たちがぞろぞろと歩きながら灰色の空間に入って来た。
中でも一番危なく感じる銀髪糸目の男が口を開く。
「いやぁ、間に合った見たいですね。ダメじゃないですかシエラさん、殺しちゃったらキースさんの遺体と鍵が何処にあるか分らなくなるって、話しましたよね?。」
雰囲気だけは気さくに、言葉を並べる糸目男。
「……殺せなかったのよ。」
イラついたドレス女の言葉に驚愕を示す5人の男達。
「へぇ。シエラさんでも、、、ですか。……わかりました。」
何が分かったのか知らないが、胡散臭い笑みを張り付けながら糸目男がスタスタと此方へ近づいてきた。
「どうも。私、彩羽(さいば)と申します。美塚囲そうじさんですよね?。」
耳障りの良い、腹から出て頭の先まで震わせた太い声。
はい、と返事をしそうになるが、一瞬、糸目男の顔が黒く濁って見えたので言葉を喉に引っ込める。
「出来れば少々お話をしたいのですが。よろしいでしょうか?。」
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