アイアンの力。

 カプセルラッシュで今日一日の仕事をやり切った感はあるが、魔石集めも大切なので、ダンジョンを進む。

 それに今日はアイアンと一緒に来た初めての探索。

 

 アイアンの実力を知らないので、ダンジョンで戦っていけるか気になる所。

 もしスケルトンや石トカゲに勝てなかったら、タケノコダンジョンに戻ろう。


 

 タマに先導してもらい、石トカゲ2体に遭遇。 

 

 「ぎゅあ!、ぎゅあ!」

 

 タマの姿のアイアンが大きく声を上げ、勇気100%をアピール。

 もう石トカゲを任せるしかないな。



 見せてもらおうか。新しい仲間の能力とやらを。



 頷いて返事をすると、アイアンが前に出て石トカゲと対峙する。

 突っ込んで来た2体の石トカゲを、両手を鞭のように伸ばして絡めとる。

 そのまま勢いよく壁に叩きつけ、一撃のもと、魔石へと変わる。


 瞬殺。


 びっくりして声も出ない。

 思ってた以上に、アイアンは強かった。


 自分だと少なくとも3回は攻撃しないといけないのに。

 …………やりおる。

 

 「ぎゅあ!、ぎゅあ!」


 伸ばした両手で魔石を回収し、嬉しそうに魔石を突き出すアイアン。

 

 「強いね!アイアン。」


 魔石を受け取りそのままアイアンを撫でる。

 タマの姿で両手が伸びたのは、ちょっと気持ち悪かったけれど、考えないことにしよう。



 嬉しい誤算の結果、アイアンに石トカゲとの戦闘を任せることにして、一階層を回っていく。

 お酒のせいなのか、何だか壁を叩いて隠し部屋を探したくなったが、何の成果も得られなかったことを思い出し、今回は自重する。


 石トカゲを避けなくて良くなったため、効率がUPし、テンポよく魔石が集まっていく。

 それにアイアンが前に出てくれるおかげで、ズボンに穴が開かずにすむ。今日は服を買いに行かなくてよさそうだ。


 ありがたや。ありがたや。

 


 休み休みの探索で2時間、一階層を回り、70個の魔石を獲得。

 いつもより数は少ないけれど、もともとダンジョンに入った時間が遅かったし、しかたないよね。


 良い時間になったので探索を終了。

 進行方向を出口へと変える。


 ダンジョンを出ようと歩いていると、ウインドウが現れる。




 メンテナンスが終了しました。




 お、これはもしかして、、、

 考える間も無く追加のウインドウが現れる。


 6日目の入場ボーナスウインドウ。


 受け取るボタンを無意識で押す。

 顔に笑顔。


 ポン!と現れた青色のカプセルを、ガパッと開ける。

 ノイズが走らず、無事に中身を取り出すことに成功。


 豪華な見た目の深紅のポーション瓶。

 なんだかちょっと感動。


 短時間でバグを修正してくれた運営に感謝しつつ、中身を確認する。




 ぜんかいのクスリ×1




 状態異常や消耗した体力及び魔力を全て回復する。


 

 嬉しい。

 良いアイテムが手に入った。


 ゲームだと勿体なくて最後まで使えないけど、有るだけで得られる安心感が何とも素晴らしい。 



 鼻歌を歌いながら砂利道を進み、皆とダンジョンを出る。


 今回は服が傷ついてないので、警備の人に何も言われなかった。

 しかしなぜだか視線を感じる。

 

 見られている。


 警備の人ではない。

 誰だ?


 機嫌が急降下。

 警戒心最大化。


 周囲に目を配っても、それらしい人物は見当たらない。

 

 体全体に粘つく違和感。

 この感じ、まさしく悪だ。


 明らかに自分に敵意を持ったなにかが此方を見ている。


 タマは気ずいているのか神妙な顔つきだが、アイアンは分かっていないのかニコニコしている。


 見られていることが分かっても、どうすることも出来ないので、そのまま普段どうりに買取窓口に移動し、換金する。


 1万4000円を受け取り、足早にダンジョンセンターを後にした。

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